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21.俺の友達との普通の会話のはずなんだけど

翌朝、俺はいつも通り敦と登校し、教室に入った。

ん? なんか今井さんがこっちを見て何か言いたそうな顔をしたような……ってなんか溜め息ついている。どうしたんだ?


『ポッ』

=================

今井 明奈

現在の心境:うーん、やっぱりいずれL●NEで相談することにしようかなぁ、あいつには。

それにしても、あの二人は今日もホモ登校ですか。杏香もかわいそうに。

=================


なんか俺に言いたいことがあるのだろうか?

ていうか、ホモ登校ってなんだよ!? 俺と敦はクラスの女子からそんな風に見られているの!?

うっわ、敦と一緒に来るのやめようかな……。でも、今更いつもの習慣を変えるのもなぁ……。


俺も溜め息をつきながら自分の席を見ると、俺の席には先客がいた。

俺と敦の共通の友人・竹野正志だ。

俺の机に突っ伏して、なぜかすすり泣いている。


「うっうっうっ……(チラッ)」


こっち見んなよ……。


『ポッ』

=================

竹野 正志

現在の心境:話を聞いてくれないかなー? 聞いてくれるよね、マイ・ソウル・ブラザーズ?

=================


うわっ、面倒臭い。


「おい、ユーキ。マサシの奴、なんか泣いているぞ? なぜかお前の机で」

「手伝ってくれ、敦。邪魔なこいつを窓から捨てる」

「おいい!? 泣いている友人を窓から捨てるとかお前は鬼か!?」


正志が勢いよく飛び起きツッコミを入れてきた。

ふむ、原田とか今井さんのせいで発想がちょっと暴力的になっているのかもしれない。

それは流石に良くないな。


「はぁ……。で、お前はなんで朝から俺の机で泣いているんだ?」

「俺の悲しみをいち早く聞いて欲しかったんだよ、お前らに……!」

「悲しみ?」

「ああ、聞いてくれ。悲報も悲報。俺の……俺の……俺の愛する声優さんである下沢美央が……文●砲をくらいました」

「おう……。彼氏でもいたか?」

「『人気急上昇中アイドル声優・熱愛発覚!!』だってよ……。なんで声優さんも狙うようになってきてんだよ、文●砲……」


あちゃー。

確か正志の奴、下沢美央をさらに売れっ子にして『ワシが育てた』って自慢したいとかよく分からんこと言ってたな……。

その人が熱愛報道……かわいそうだな……。


「なぁ、ユーキ。文●砲とはなんだ?」


あれ、知らないのか、敦。


「週刊誌の一つである週刊●春がたまに芸能人の熱愛とかスキャンダルとかをスッパ抜いて、世間に影響を与えることがあって、そのことを言うんだよ。今回は正志が応援していた声優さんの熱愛がスッパ抜かれたわけ」

「ふむ……。うん? どうやって熱愛しているとかを調べるんだ?」

「え? いや、よく分からないけど、記者が尾行とかするんじゃない?」

「それは普通にプライバシーの侵害ではないのか?」

「あー、確かに……そうだな……。普通に考えたら尾行とかよくな……」


既にストーキングのプロと化している梨乃ちゃんの笑顔が、俺の脳裏をよぎる。

俺の妹のプライバシーは最早あって無いようなもの……。

うん、普通に考えたら尾行とか良くないよね、梨乃ちゃん!


「やれやれ……。ていうか、正志。いい加減俺の席を立てよ」

「はぁ? まだ俺、お前らに慰められてないんですけどぉ!」


慰めて欲しいのかよ……。


「あー、まったく……。でもまぁ、同情するよ」

「本当にそう思っているかぁ?」

「思ってる思ってる。でも、アイドル声優だって女の子なんだし、彼氏ぐらい作りたくなるもんじゃないのか?」

「まぁ、普通に考えたら彼氏とかいてもおかしくないとは思っていたぜ? 美央ちゃんは可愛いし」

「え? そうなの?」

「そのくらいは覚悟しているさ! でもな、アイドルってのは俺達みたいな寂しい男に夢を与える仕事なんだよ! 影では男と付き合っているかもしれない……だが、それは別に構わないッ! 大切なことは、そういう現実をファンに絶対に知られないようにすることだ! 俺はそれを暗黙の了解だと考えているッ! それができて『アイドル』って言えるんだよッ!」


なんか急にスイッチ入ったな。

どうでも良いけど、俺の席の椅子の上に立ち上がって熱弁を奮うのやめてくれない?


「なぁ、マサシ。ちなみになんだがその下沢さん……だったか? アイドル声優をやめるのか?」

「うん? まぁ、売り方はさておき、声優としては続けていくんじゃないか?」

「応援……続けるのか?」

「…………」

「マサシがそこまで入れ込んでいたんだ。その人は少なくともこれまではしっかり仕事をして、マサシに夢を見せてきたんだろう?」

「そう……だな……」

「純粋に好きだったんだろう? 例え、届かない存在だと分かっていても好きでしょうがない。その純粋に好きで応援したい気持ちは、そう簡単に無くなるものなのか?」

「……そうだな。無くなんねぇよ……! あの人にはもう一度輝いて欲しいよ……!」


あれ、なんか正志と敦の間で急に熱い会話がなされているんですけど?

なにこれ?

俺、割と置いてきぼりですよ?

敦ってそんなにアイドルとかに関心あったっけ?


『ポッ』

=================

与田 敦

現在の心境:例え届かなくとも、菜美さんへの想いは変わらない……!

=================


ファッ!?

アイドル声優の話を俺の母親への想いと重ねてたのかよ!?

やめろよ! マジで気持ち悪いわ!!


「ありがとよ、敦! おかげで美央たんの素晴らしさを思い出せたぜ……! 敦!結樹! お前らも下沢美央を……応援してくれよな……!」

「マサシ……。ふむ、やぶさかではないな」

「え、あ、うん。とりあえず俺の席立てよ」


いつまで俺の席を占拠するんだ、こいつは。


「へいへい、お前も敦ぐらい真剣に俺のことを心配してくれよ。……ん? おお!? そういやそろそろ発表時期だったな! 確認確認ッ!」


おや? 正志のスマホに何かメールか何かが来たようだが……?


「おっしゃー! キターー!!!」

「うるさいぞ、正志」

「いやな、俺のもう一人の推し声優である有村かおり姫が出演するイベントのチケット取れたんだよ! よっしゃあ! てっきり今回も『チケットをご用意することができませんでした。』って出てくると思ったのに!」

「さっきまでの下沢美央さんのことはどうしたんだよ!?」

「それはそれ、これはこれだ! 推しが複数居たって良いじゃないの!!」


いいのかよ。


「マサシ、有村かおり姫とはどのような人なんだ?」

「昔からいる声優さんでな。今年で43歳?とかその辺りだ。ほれ、これが写真だ」


正志がスマホに表示した有村かおりさんとやらの写真を敦に見せた。


「ふむ……。思ったより服装が若いというかキラキラしているな。ピンク基調のふわふわした服にツインテール……。声優さんとはみんなこうなのか?」

「いや、ここまでの人はそんなに居ないぜ。どうだ? 世界一かわいいだろ?」

「ふむ……」


敦が唸る。

え、もしかしてなんかの琴線に触れちゃった?


『シュッ』

=================

与田 敦

現在の心境:ふむ……大人の落ち着きが魅力のこの世代の女性にあえて、キャピキャピした服装……。

これはこれで……アリだ!!

=================


あぁ!? 熟女好きの幅を広げてしまったか!?


「マサシ! この人のもっと詳しい情報を教えてくれないか!? 中々にそそられ……声優さんにも興味が出てきた!」

「おお! かおり姫の魅力が分かるのか敦!! いやー、最近の若い人はこの魅力が分かんないみたいでよ!」


お前も若い男子高校生だろ。

ていうか、そうか! こいつら二人とも女性のストライクゾーンの上限が高いんだった! こんなところで意気投合するとは! 

俺、めちゃめちゃ疎外感を覚えるよ! いや、一緒に語り合いたいとは思わないけど!


『リンッ』

=================

与田 敦

年齢:16

職業:高校生

- 男子高校生 Lv. 18

- バレーボール Lv. 16

- 熟女好き Lv. 32→33 (パラメータが更新されました)

=================


だぁああ!? 成長させてんじゃねぇよ!?


これ、どうやったら原田とくっつけたりできるの!?

無理でしょ、もう!?


古き良き女性声優さんトークに花を咲かせる二人を見ながら、俺は敦と原田をくっつける作戦を軽くあきらめそうになっていた。

あと、二人とも。下沢さんのことを忘れないであげて……。頑張れ、美央たん……。


書いていたら思いの外オタクな話題になってしまった……。

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