2.友人のステータスを見たけど
他人のステータス画面を見る能力。
つまりは他人の情報をこっそり見ることができるわけだ。
ちなみに、母さんが仕事に出た後、能力が使えるかどうか鏡やテレビを見て、自分や有名人のステータスを見ようとしたがそれはできなかった。
直接、目で見た人じゃないと発動できないのかね?
あと、こうして能力を手に入れたのは良いけど、能力で得た他人の情報を使って、一体何をすれば良いのだろうか?
できることは色々ある気はするのだが、正直具体的にはあんまり思いつかない。
何せ結菜から読み取れた情報は、俺のことが好きではない、という悲しいことだけだったからな。
他人のどの程度の情報まで探れるかも分からないし。
それにステータスが見える以外に、魔法とか使えたら面白いんだが、そういったことができそうな気配もない。
どうしろと。
「まぁ、まずはどういう情報が得られるか……能力の限界を知ることからだよな」
うん、これだよね。やっぱり特殊能力といったら、その能力についてよく理解せねば。
漫画やラノベ、ゲームの基本だ。
「なんだ、ユーキ? ゲームの話か?」
どうやら俺の独り言が聞こえてたらしい。
小学校時代からの友人で、それなりに親しい与田敦が声をかけてきた。
『ポッ』
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与田 敦
年齢:16
職業:高校生
- 男子高校生 Lv. 18
- バレーボール Lv. 16
- 熟女好き Lv. 32
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「うぬ!?」
朝から俺は友人の性癖を目の当たりにすることになった。
レベル差から考えて、こいつは男子高校生であるよりも熟女好きの方がメインなのか!?
「どうしたんだ? 変な声出して?」
「あ、いや、すまん。急に声をかけられてびっくりした。」
そりゃびっくりするよ、いやー気づかなかったよ、そうかーこいつ熟女好きだったかー、普段はかなり真面目なやつなんだけどなぁー。
「ん? なんでちょっと寂しい感じの目で俺を見るんだ?」
「フッ……なんでもないさ……」
性癖は人それぞれ……みんな違ってみんな良い……。
「それにしても今日はちゃんとした時間に登校しているな。普段は割と遅刻気味なのにな」
「あー父さんも母さんも妹も朝早くから用事があったみたいで、俺も早めに起こされたんだよ」
「なるほど、そういうことか。しかし、ユーキ曰くブラック企業勤めのお父さんはまだしも、パートのお母さんも朝から用事とは珍しいな?」
「……」
敦とは普段から割と家族の話もするし、家に遊びにきたことだって何度もある。
だから、俺の家のことをよく知っているのは分かるのだが……こいつが母親のことをわざわざ話題にしてきたことに言いようのない不信感を覚えた。
「え、おい、ユーキ? どうした?」
「いや、母さんはなんか店舗の方で今日からキャンペーンがあるらしくて、その準備だってさ」
「ほう、キャンペーンか。たまには放課後にミスドに行ってみるのも悪くないかもな」
「……」
ステータス画面の情報があるせいか、なんか色々疑わしくなる。
こいつ、まさか俺の母親を変に狙ったりしてないよな?
「ま、母さんは朝から出る代わりに昼過ぎにはシフトが終わって帰ると思うけど」
「そうか、キャンペーンついでに久しぶりにユーキのお母さんに挨拶するのも悪くないと思ったが、まぁ仕方ないな」
「……」
こういう会話は今までにもなかったわけではないが、意識するとかなり疑わしい。こいつの前で母さんの話をするのはこれから避けよう。
そういえば、結菜の時は職業やら特技のレベル以外にも能力値とかも見れたが、敦のも見えるのだろうか?
『シュッ』
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与田 敦
- 体力 47
- 知力 39
- 魅力 32
- 品性 38
- 精神 36
- 幸運 18
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出た。俺が見たいと思った情報を出してくれるみたいだな。
結菜と比べると、スペックが高いな。
確かに敦は勉強もスポーツも得意だし、敦の両親が厳しいようでマナーとかもしっかりしている。
なんで俺みたいな帰宅部の普通の人間とつるんでいるのか分からなくなるぐらい良いヤツなんだよな。熟女好きだけど。
いや、待て、確かにステータス画面は熟女好きと書いていたが、本当にそうなのか?
やっぱ確かめてみないと、イマイチ信じ難いんだよなぁ。
「あれ、なんだ?」
「ん? どうした、ユーキ?」
「お、これはエロ本か」
俺は道端の木の陰に近づき、エロ本を見つけたフリをする。
「おい、ユーキ。そんなもの見たってしょうがないだろ、恥ずかしい。拾うんじゃないぞ?」
やはり基本的に真面目な敦はそんなものに食いつかない。
「ふーん、熟女特集か」
「!」
「あー、俺は興味ないんだよなぁ。捨てておくかー」
「くっ、そ、そうだな。それが良い」
「どうした? 急に口ごもって?」
「いや、なんでもないとよ?」
「よく分からん口調になっているぞ……」
「あーそうだ、本は道端にあったんならちゃんとゴミ捨て場に持っていかないとな。俺がきちんと捨てておこう。そうしよう。」
あぁ、やっぱこいつ熟女好きであってたわ。すごいぞ、ステータス画面。
「エロ本見つけたのは嘘だけど」
「えぁ!?なんで嘘ついたのよん!?」
錯乱すると口調がおかしくなるのはなんでだろう。
「ん? 気分?」
「お、お前ってやつは…」
「あれ、熟女特集見たかった?」
「だ、断じてそんなことなかばい!」
俺の中で真面目な友人・敦の存在はもう消えつつある。キャラ崩壊だよ。
「あーもう、くだらんことしている間にすっかり遅くなっているぞ。早く行くぞ。」
「あいよー」
憮然として先に歩み出した友人の背中を見ながら、ふと思う。なぜこいつは熟女好きになったのだろうか?敦には悪いと今更思いながらステータス画面で何か情報がないか調べてみる。
『シュッ』
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与田 敦
- 熟女好き Lv. 32
・小学生の頃からの熟女愛好家
・自宅の引き出しの三重底の中には、秘密の写真集がある
・熟女好きのきっかけは [*信頼度が足りません*]
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ステータス画面から、詳細を見ることができるようであった。
彼の引き出しのブツはある意味気になるが、それより気になるのは、” [*信頼度が足りません*]”の表示。
これは一体なんだろうか?
ステータス画面でも全ての情報が開示されず、相手と仲良くならないと見えない項目でもあるのだろうか?
この辺は他の色んな人の情報を見てみないことには分からないな。
一応、敦の信頼度も見ておこう。
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与田 敦
結樹への評価:良き友人、お母さんが素敵。
- 友情 32
- 信頼度 37
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「……」
結菜の時と違って、『好感度』の代わりに『友情』があることや、信頼度も身内である妹と比べても低くないなど、嬉しい面もある。
ただ、『お母さんが素敵』はもう色々とダメだろ…。もうそれ俺への評価ですらないじゃん……。
とりあえず敦に母親の話をしないように心に誓った。