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14.作戦を決行しているのだけど①

「ユーキ、遅刻だぞ」


集合場所の駅前に行くと、もう他の3人は揃っていた。


「すまん、ちょっとお腹痛くてさ」


妹に蹴られて気絶してたと言うよりは、適当な言い訳した方が良いだろう。

母さんの愛情とボリュームたっぷりのオムライスで食べ過ぎたのも事実だし。


「ははぁ、なるほど。さてはユーキのお母さんが朝からご飯を作り過ぎたな?」


え、なんでこいつ予想ついているの!? キモいぞ、敦!?

まさかお前も梨乃ちゃんみたいに家の周りに潜んでいたんじゃないだろな!?


『ポッ』

=================

与田 敦

現在の心境:ユーキのお母さんは昔からそういうとこあるからな。

=================


ううむ、とりあえず家を見張られてたわけではなさそうだ、良かった。


「ま、そんなところだよ」

「じゃあ、高瀬くんの腹痛は置いておいて、今日の予定を話しておくね」


クラスメイトの体調不良を少しぐらいは気遣ってよ、今井さん。


「今日は、水族館に行くけど、その前に併設されている公園も見てみたいなぁって思っているの」

「ふむ、確かになかなか綺麗な公園が作られていると聞いている。運動とかも色々できるそうだ」


そうなんだ。


「うん、だから午前中ちょっと公園を散策したりとかして、お昼を公園内のレストランで食べて、それから水族館に行こうと思うけど良いかな?」

「うむ、俺は良いと思うぞ」

「わ、私も、あああ、敦くんと同じく良いと思う!」


テンパる原田。こう言う時は可愛いのになぁ、こいつも。

おっと、俺も意見表明しておこう。


「あ、俺も良いと……」

「じゃあ、みんな賛成ということで決定!」


今井さんは僕の話も聞いて。


「あ、あのね、みんな!」


皆が出発しようとしたところで原田が声をかけてきた。


「じ、実はね、今日お弁当を作ってきたの! 折角の敦くんとの……いや、みんなでのお出かけだからっ!」


そう言って、原田は大きめのランチボックスを皆に見せた。

ほう、原田も可愛いことするじゃん。

皆で原田のお弁当を食べるのも悪くな……


「………………(ガタガタガタガタ!)」


今井さんが無言で尋常じゃ無いほど震えている。

え、ちょ、顔面蒼白ですよ!?


「ほう、それは楽しみだな!」

「あ、敦くん! え、えへへ、楽しみにしててね!」


感じの良いやり取りをする敦と原田を尻目に、今井さんはスマホで何やら高速タイピング。そして、俺のL●NEに通知が。


Akina『あんた、杏香の弁当を破壊しなさい』午前10:13


破壊!? なんでそんな物騒なことを!?

ていうかそんなことをしたら俺が原田に殺されるよ!


高瀬結樹『なんで!? 無茶言うなよ!?』午前10:14


すると昨夜のL●NEの返信速度とは比べものにならない速度で返信が来た。


Akina『いいから破壊して……! さもないと……皆ここで死ぬ!』午前10:14


大丈夫か、今井さん!? なんかバトル漫画とかでしか見ないような文言なんですけど!?

そういえば、前にステータス画面を見た時に、原田の特技・属性レベルに変なのがあったような……


『ポッ』

=================

原田 杏香

- 料理 Lv. -24

芸術的なまでに壊滅的な料理スキル。

食べた者は最低限胃腸をおかしくする。

=================


料理レベルがマイナスだったー!

え、じゃあ、今井さんが怯えているのって……まさか原田の料理を以前食べたことがあって、それで危険性を身をもって理解しているということか!?


『ポッ』

=================

今井 明奈

現在の心境:……あれは、3年前のある初夏の日だった……。

私は当時から仲の良かった友人・原田杏香と家族ぐるみでバーベキューをすることになったの。

それが、まさかあんな悲劇を生むなんて……。

まだ幼い私は理解していなかった……。杏香の手料理の……恐ろしい力について……!

=================


なんか今井さんの心の中でモノローグ始まっちゃってる!?

どんな恐ろしい体験をしたんだ!?

知りたいけど知りたくない!


「よし、じゃあ早速行こう。ユーキも今井さんもさっさと行こうじゃないか」


何も知らない敦が俺達に声をかける。

あぁ、無知って怖いよね。


「……え、えぇ! 行きましょう!」


追い込まれた精神状態から一応復帰した今井さんが答えた。

そして、若干血走った目で俺にアイコンタクトを送る……『マジでなんとかしなさい!』と。

心を読まなくてもひしひしとその思いが伝わった。

なんとかってどうすりゃいいんだよ……。


———————————————


公園に着いた後、4人でしばらくまだ出来たばかりの公園を散策した。

確かにちゃんと整備されていて、咲いている花とかも綺麗だ。

ただ、その綺麗な景色とは裏腹に今井さんの心は恐慌状態なようで、原田が話しかけても『うん』とか『そだねー』ぐらいしか言わない。こんな今井さん初めて見たよ。


しかしながら、今井さんの恐慌状態は敦と原田をくっつけるという目的の上では良い方向に働いている。

原田は今井さんと話が通じないことから、今井さんと会話すると言う逃げ道がなくなってしまったため、敦と頑張って話す覚悟を決めたようである。

先ほどから敦と原田が並んで2人で歩き、原田がテンパりながらも会話をし続けている。

一応、計画は順調……なのだろうか。


その代わり、敦と原田の後ろを歩く今井さんと俺の雰囲気は最悪だ。

何せ、今井さんが時折、


「……パパ、それ、食べちゃ……ダメ……、ひっ、誰が……毒を……、なんで……杏香……」


みたいなうわ言を言っているんだもん。

どんだけ原田の料理がトラウマになっているんだ。


「お、見てみろ。そこでボール類の貸し出しをやっているぞ」


公園内の広場では、ボール類を含めた遊び道具の貸し出しをしているようで、軽くスポーツなどもできる感じになっていた。

そこで敦は満面の笑顔でバレーボールを手にしていた。


「あ、敦くんがやりたいなら、私もやろうかなっ」


原田も便乗。2人はバレーボール部でもあるし、やりたいのだろう。


「ユーキと今井さんはどうする?」


いや、俺はどっちでも良いが、今井さんは……。


「や、やるわ! 高瀬くんも参加で良いわね?」

「え、あ、うん」


おっと、意外にも誘いに乗ってきた。大丈夫なのか?

俺の心配を他所に、今井さんは俺に耳打ちをしてきた。

あ、ちょっと距離が近くてドキドキしちゃう。


「…いい、高瀬くん? 下手くそなフリしてボールを杏香の荷物……具体的にはあの諸悪の根源たるランチボックスに当てなさい。それなら事故ってことで、さりげなくランチボックスを屠ることができるわ」


ワードチョイスが所々ひどいよ……。こっちはちょっとドキドキしていたのに台無しだよ……。

ていうか、実行犯俺かよ!?今井さんがやれよ!


「いや、なんでそんなこと俺がしなきゃならないわけ?今井さんがやれば良いでしょ!」

「いいから首を縦に振りなさい。もちろん、私もチャンスがあれば破壊を試みるわ。でも、アタッカーは多い方が良いに決まっているでしょ。協力しないと杏香に、あんたが杏香のことを『うわっ…原田の胸、無さすぎ…? あ、なんだ、ただの壁か』って言ってた、という嘘情報を流すから」

「それはやめろォ! 手伝う! 手伝うからさ!」


脅迫やめてよ!

そんな嘘情報流されたら料理云々の前に原田に殺されるって!

ていうか、原田! なんで今井さんの失礼発言にはお咎め無しなんだよ……って、ああ……原田の奴、敦に夢中になりすぎてて気がついてませんねぇ、こんちくしょう!

くそう、手伝えば良いんでしょ!


こうして、原田と敦のデート作戦は、いつの間にか原田の弁当破壊作戦へと変わっていったのである。


デート作戦による原田さん回と思わせておいての今井さん回

もう少しだけデート作戦編に回を使いそうです。

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