13.作戦決行の朝を迎えたけど
俺と敦を遊びに誘った今井さんは、『連絡用に!』と言って、4人全員でL●NEの交換を提案した。
そして、今回用にと、4人のL●NEの専用グループも作った。
原田と敦の連絡先を交換させることも目的の一つだったんだろうな。
今井さんが僕とL●NE交換する時に一瞬躊躇したようにも見えたけど、気のせいということにしておこう。
その時の心境なんて見たくないからもちろんはステータスは閉じたままさ、泣けるぜ。
ちゃんと人扱いされていると信じたい。
その後、デート作戦前日の夜、今井さんからLINEが来た。
Akina『分かっているとは思うけど、今回は杏香と与田くんをくっつけるためだからね!』午後9:31
うん、分かっているさ、それくらい。
高瀬結樹『大丈夫、分かっているよー』午後9:32
……返信遅いな。
Akina『ごめん、ちょっと家族と話してた』午後10:54
Akina『当日は色々と協力してもらうからね!』午後10:54
お、来た来た。うん、家族と話していたならしょうがないよね。
もちろん、原田のため・俺の家族のために協力するさ。
高瀬結樹『了解、ちゃんと手伝うよー』午後10:55
お、今度はすぐに既読ついた。
……あれ、返信来ないな。
Akina『ごめん、寝落ちした』午前7:44
Akina『今日はよろしくー』午前7:44
……避けられてないよね?
色々不安なまま、俺はデート作戦当日の朝を迎えることになるのであった。
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デート作戦の集合は、現地の駅前に朝10時。
今井さんからの返信がなくてやや寝不足気味の俺だったが、ちゃんと起きて今は朝食を……食べようとしている。
「母さん、これは?」
「愛情たっぷりオムライスよ♡」
卵を2–3個使ったであろうオムライスに、ケチャップで大きくハートマークが描かれている。
そして、オムライスの周りを囲うように10本以上のウィンナーが並べられている。
正直言って、朝から食べる量じゃない。
「……これ、一人前?」
「あれ、もしかして足りない!? そうか、育ち盛りだもんね、気づかなくてごめんね」
「謝らなくていいから。逆の意味だってことに気づいて」
こんなの朝から食べたら動けなくなるわ!
母は休日だと腕によりをかけてご飯を作ることがあるが、朝からこんなにヘビーなのは珍しい。
「えー、多かった? うーん、でもでも、結樹は今日昼ご飯を外で友達と食べるっていうし、私の料理食べて欲しかったの!」
そういって口を尖らせる母。
この台詞、可愛い幼馴染(そんな奴は俺の周りにいない)や将来の奥さん(こちらも俺の周りにその候補すらいない)に言われたかったよ……。
「結菜は? これ食べたの?」
「それが聞いてよー。オムライスを見た瞬間に、『ごめん、お腹の調子が悪いことに気づいた』って言われちゃったのー」
「……逃げたか」
結菜のやつ……。
「だから、食べてね? 結樹♡」
ちくしょう、諦めて食べるしかないか……。
母の愛と食べる量、色んな意味で朝から重すぎた。
「そうだ、結樹」
「何?」
「お母さんも今日は隣の山名さんの奥さんとお出かけすることにしたからー」
「あ、分かったー」
「夕方には帰ってくるけど、結樹も遅くならないようにね」
「はいはいー」
「ちなみに父さんは?」
「今日は仕事が無いみたいだから、1日中寝ているって。起こしちゃダメよ」
「了解ー」
父さん……働きに行っているか寝ているかしか見てないが、人間的な生活はできているんだろうか。
朝食を食べ終わって(胃腸がきつい……)、居間に行くと結菜がプリ●ュアを見ていた。あ、そんな時間か。
「……ふぉー」
すげー真剣に見ているな……。
って、あれ? プリ●ュアって街を守る女の子のイメージがあったんだけど、なんか宇宙に出て行ってよくわからん生物と戦っているんですけど?
最近のプリ●ュアってこんなのなの?
あ、でもなんかあの緑髪のキャラ、ちょっと可愛いかもしれない。
「いいなぁ……変身☆スターカラーペンダントDX買おうかなぁ……」
なにその『とりあえず色んな要素を組み合わせました!』みたいな商品名。
いや、買ってもいいとは思うけどさぁ!
あ、エンディングになった。
「パペピプペポパポ☆ロマンチック!」
え、何その歌詞!? 発音練習か何かですか!?
ていうか、妹よ! お前、なに歌って踊っているんだよ!?
兄貴ビックリだよ!
『リンッ』
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高瀬 結菜年齢:14
職業:中学生
- 女子中学生 Lv. 32
- お菓子作り Lv. 8
- アニメオタク Lv. 8→9 (パラメータが更新されました)
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順調に成長しているなぁ!
この間、アニメイト行ってからなんか色々本とか買う量増えているように見えるけど大丈夫かなぁ……。
ん? あれ、居間の窓に何かが見えたような……って梨乃ちゃん!?
『ポッ』
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松川 梨乃
現在の心境:……ふへっふへっ、結菜ちゃん可愛いでしゅ……
踊りも前よりも上達しましたねぇ……ふへぇ……
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涎を溢しながら結菜の撮影をする梨乃ちゃんがそこにはいた。
なに普通に他人の家の中を盗撮してんだよ!?
この間、梨乃ちゃんも毎週プリ●ュア見ているって言ってたけど、ここで見てたのかよ!?
マジで通報した方が良いんじゃないか!?
と、梨乃ちゃんの不審な行動に気を取られていた俺は、プリ●ュアを見終わって居間から出て行こうとする結菜の存在に気づかなかった!(劇場版名探偵コ●ンのオープニング風に)
「あに……き……?」
「あ、えっと、結菜……。おはよう……?」
うわー、結菜さん。顔真っ赤ですね……。
「みた……?」
「な、なにを……かなぁ……?」
「見てたんでしょ、このクソバカ兄貴ィ!」
「ごばぁ!?」
結菜渾身の回し蹴りが俺の脇腹にヒットした。
朝食が出てきちゃうから腹はやめてよ……。
『シュッ』
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松川 梨乃
現在の心境:ひょー、回し蹴りする結菜ちゃんも素敵ですぅ!
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お前は俺の心配をしろ。あと、今のシーンも撮ってんじゃねぇ!
心の中でツッコミながらも薄れていく意識。
そのせいで、デート作戦の集合に5分だけだが遅刻してしまうことになった。
やれやれだぜ……。
あれ? この回でデート作戦本編も書き始めようと思っていたのに、朝の家族との会話(+変態百合ストーカー)が長くなってしまった……。
次回からデート作戦本番です!