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恵方巻

 家という所に戻ると自分の部屋に入る。

 玄関入って右の扉を開ければそこが私の部屋。

 左がリビング、正面がトイレと二階へ上がる階段がある。

 リビングへ行くこともなければ、さすがにトイレは行くけど階段を上がることもない。リビングに行くのは洗面所を使うとき、そこにある洗濯機を使うとき、それとシャワーを浴びるときのみだ。自分の部屋にはテレビもあるし冷蔵庫も置いた。ワンルーム状態。というかシェアハウスのよう。



 ある日というか、「節分」とかいう嫌な思い出のある日。

 その思い出はもう30年以上前のことだから今更話をしてもしょうがないから今は書かないでおく。

 コーヒーを入れるためにキッチンへ、さすがに水回りまでは部屋にはないのでキッチンには行かなければいけないことがある。

 テーブルには3人分の黒い物体『恵方巻』なるものがあった。そいつが嫌いなんだよ。

 これ見よがしにテーブルの真ん中に置かれていた

 その横を通り過ぎようとした時、なんとも心の無い声が聞こえた。ただの「台詞」、そこに書かれているから、台本に書かれているから口に出しただけ。本心ではなく口に出さなければならない「台詞」として

「恵方巻食べる?」

 テーブルの横を通り過ぎる時にはそこにはすでに3つの影。3人で食べるために3つのそれを買って来たんだよね。そんな台詞聞きたくないんだけど。

 見られてしまったからしょうがなく吐いた言葉、鬱陶しいだけの音。

 背中を向けて吐かれた偽善な「台詞」。ノイズ


「いらない」

 それ以外の答えなんて知らない。それ以外の返事を知らない。

 人のものを取るほど餓えてもいない

 コーヒーを入れて部屋に戻った。


 ある人に言わせると、「いるかいないかわからない人の分まで用意はしないでしょ」だそう。その人たちがそれを買いに出かける前にわたしは家という所に入り挨拶だけはしている。居ることはわかっていたはず。またある人は「食べない人の分まで買わないでしょ」だそう。そう、その通り。間違いなく正解。

 それが大正解。

 なら声をかけるな、偽善な台詞なんて聞きたくない。そんな声なんて音でしかなくノイズだ。人を見ないでどこに向いて発せられたか解らないノイズに返事をするのも鬱陶しい。


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