セスト幹部の登録
リディオが取り出した紙のうち、1枚を見せてもらい、内容に目を通す。……が。
「読めない」
「……イタリア語ですから……」
申し訳なさそうに言ったリディオに、日本語に訳してもらう。
……イタリア語勉強しなくちゃ。私の決意はより強固なものになった。
どうやら、簡単にいうと、セストの証明書のようなものらしい。
「ここにサインを」
万年筆を渡され、名前をサインする。サインなんて考えたことも無かったので、普通に漢字で書いた。
もう一枚の方に書いてあることは違うらしく、再びリディオに訳してもらうことになった。
「簡単に言うと、幹部の心得みたいなものか?」
瞳をキラキラさせて紙をのぞき込む陽太。
「まあ、そんなものだ。決して裏切らないとか、当たり前すぎる内容だ」
――それは、リディオが元々マフィアの関係者だからでしょ? そう思ったが、口にはしない。
「サインを」
さっさと自分の分を終えてから、陽太に万年筆と紙を渡す。
「そういえば、この万年筆、返さなくていいの?」
さっき渡された万年筆を見せると、リディオも、自分のものであろう万年筆を取り出した。
「無いと後々面倒だから、持ってていいですよ。特にボスは、サインの機会も多いですから」
「できたぞ」
2人分のサインが入った紙を見て、仲間を実感する。
見慣れた漢字と、まったく読めないイタリア語が並んでいる。
「アロンツォさんにも書いてもらいたいんだけど」
「なんでですか?」
アロンツォは首をかしげるが、理由は言えない。
「……もしかして、残り2人集まるか心配、とか思ってませんよね?」
「う……」
リディオ、ご名答です。視線をそらしたのを見て、リディオがため息をついた。
「ダメですよ。アロンツォは、クイントの命令で動いているんですから」
「う~……。だって、あと3人も……」
そこで、陽太が提案してくれた。
「じゃあ、夏紀は?」
「夏紀……?」
まだあったことのないリディオが首をかしげる。
「小学校の時、仲が良かったの。陽太と一緒の中学だよね?」
「おう。話をしてみる」
心配そうなリディオに、一応言い訳をしておく。
「信用はできるよ」
リディオは、納得し切れてなさそうな顔で、じゃあこっちの学校でももう1人、と話題を変えた。
「生徒会長を狙ってるんですけど」
「……今なんて?」
「だから、生徒会長。情報はたくさん入ってくるし、学校に圧力をかけられる、数少ない役職ですから」
でも、生徒会長は無理じゃない? じとっとした目で訴えてみる。
「いや、挨拶したときに、面白そう、って、のってくれそうだと思いました」
「私、やだよ」
「じゃあ、手紙でやってみますか」
そう言って何やらメモをとるリディオ。入れる気満々だ。
生徒会長にそんなこと言って、怒られないかの方が心配だ。たいした接点もないのに。
イタリア語でアロンツォに何やら言っているリディオ。
あ~も~、勝手にしろ~!!