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BOSS!!   作者: 桜花
2/19

いい奴


 昼休みの終わりを告げる予鈴が鳴って、急いでクラスに戻る。クラスまでの廊下を、右斜め後ろをついてくる転校生に、学校内である、と言うことを意識して欲しい。さっき、転校生が言っていたことが、本当であるにせよ、そうでないにせよ、私が目立ちすぎるのは困る。こんな、みんなに追い回されるような人と一緒にいて、私がみんなに疎まれるのでは、納得がいかない。私は、常に、空気のような、そんな存在でいたいのだ。

 ――そうすれば、傷つかなくてすむから。

 もう3年前になる“あれ”は、私に、そんな教訓をもたらした。



 ……いやなことを思い出したな。今は、今だ。とりあえず転校生に呼びかけようとして、彼の名前は2つあることに気がついた。

「えっと……。名前、なんて呼べばいい?」

「学校では、“風間”の方で呼んでください。“優夜”でもかまいませんが……」

学校では、と言うことは、マフィア関係では、リディオで呼べ、と言うことかな? ……ふとうかんできた疑問は後回しにする。今は、今!

「じゃあ、風間くん。とりあえず、その敬語と後ろにつくのをやめて」

「……わかった。えっと……」

「小金井」

「じゃあ、小金井。わかった」

 風間くんがうなずいた瞬間、チャイムが鳴った。



「おまえが遅れなんて珍しいな、小金井」

「すみません」

 5時間目に遅れた私は、普段の私にはあり得ない、教卓の前に立っているという、かなり目立つ事をしている。

 今回に関しては、私のせいだ。予鈴が鳴る前に出てこなければならないのに、そこまで時計を見なかったのだから。

「小金井さんは悪くないです。オレが、案内をお願いしていたので」

私はちょっと驚くが、これくらいでは表情は変わらない。先生は、そのせいで、勘違いをしたようだ。

「そうか、でも、授業には遅れないようにしろよ」

「はい」

 席に着くと、授業が再開される。私は、風間くんに教科書を見せつつ、ノートの端っこに小さな文字を書く。

 

 『なんであんなことしたの? 別にあなたのせいじゃないのに』


 トントンとシャーペンでたたくと、気がついたようで、風間くんのノートにも、細かい文字が綴られる。


 『いや、でも、オレのせいなのも確かだよ。オレのせいで、小金井は時計を見なかったんだろ? 小金井はむしろ、いい奴だよ。怒られなくたっていい。』


 『はぁ? どういうこと? 私、先生に嘘ついたのに』


 さっきの文章の下に続けて書く。


 『ほら、そういうとこ。べつに、嘘くらいつけばいいじゃん。てか、嘘ついたのオレだし。それに、オレが話してるときも、少しも目を離さないで、しっかり聞いててくれただろ?』


 『そんなの、基本じゃない』


 『そういうところがいい奴、って事なの』


 意味が分からずに風間くんを見ると、先生にばれない程度、ほんの少しだけ、こっちを見て笑っていた。

 私のことを、いい奴って言うなんて、変わってる。


 ……でも、平然と嘘をつくのは、いただけないな。



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