1.魔王
死んでしまった僕。
転生させてやろう。勇者と魔王どちらか選べ。
泉に落ちた斧を選ばせるように、神は両手に勇者と魔王を携えている。
「いいえ。私が落としたのは、金の斧でも銀の斧でもありません。」
きっとそれが正しい答えだったのだろう。
しかし僕は答える。
「神よ。僕を魔王にしろ。」
魔王は人間からみた魔王であり、他の生物から見た勇者である。
僕はそう、本当の意味で勇者になったのだ。
僕には聞こえる。
知能なき生物達の嘆きと苦しみ。
僕には聞こえる。
家畜とされた種族の絶望の断末魔。
僕には聞こえる。
実験台とされるモルモット達の悲しみの涙が零れる音。
僕が人間の魔王に成ろう。
僕がすることは人間の管理。
僕が法になろう。
僕が力という合理的な方法で人間を統べてやろう。
僕が導こう。
正しい真の平等へと。
人間という種族は知能というチートな能力で、他の種族を理不尽に搾取する蛮行を続けている。
勝ったものだけが正義。
勝者の人間は都合のよい正義を振りかざし、今も次々に命を奪い続けている。
魔王を選んだ僕に神は語りかける。
「ただし…」
神が僕が魔王になるために提示した条件。
それはダンジョンの最下層にいる、現魔王を倒すこと。