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カフェ・ギムナジウム  作者: 風水ほのお
乙女たちの楽園
4/22

乙女たちの楽園 3

「おい、鷹二(ようじ)


「なあに、兄さん」


「お待ちのお客様に、一曲プレゼントしてあげなさい」


「はい、兄さん。じゃあ、ヴァイオリンを持ってくるよ」


切れ長の目が涼しげで儚い印象の彼は、天羽鷹二(あもう ようじ)。天羽鷲一とは異母兄弟です。

そのため顔を合わせることができるのが、この学院だとかで。

複雑な家庭環境ということもあり、兄弟で助け合っているようですね。


音楽好きで病弱で内向的な弟と、彼を支えるしっかり者でスポーツマンな兄。

実はこの二人も人気があるカップルとか…。

母親が違うとはいえ兄弟でカップルとは背徳的で美しく、逆に萌えるシチュエーションだと、支持する方々も多くて。


ほら、ヴァイオリンを持ってきた弟の鷹二が、ソファーのお客様方の前で『タイスの瞑想曲』を演奏し始めました。


おっと、いけませんお嬢様。ここは撮影禁止でして。

テレビの取材も一切お断りしております。雑誌やネットでも、室内やメニューの写真は出ておりますが、生徒や教授の写真は禁止です。


生徒の名前は本名ではありませんから、SNSやブログなどで出したり、同人誌を作るのはいいんですよ。

あくまでも学院のイメージを壊すものでなければ。


…その同人誌も院長が容認、と言いますか…推奨されているだとか…。


ファンの皆様方の間でも、暗黙のルールがいくつかございます。

「長居はマナー違反。一時間以内で出る」

「生徒に必要以上に話しかけてはいけない」

「携帯番号メアドを聞くなどもってのほか」

「出待ち入り待ち、もってのほか」

「生徒の本名等を明かさない」

などです。


さてお嬢様、お名残惜しいですが、そろそろ会計を済ませて出ましょうか。

ドア付近にレジがございます。

かなりアンティークなので始めてご来院された方々は、インテリアかと思われるそうです。

剣虎牙がおりますので、その伝票をお渡しください。

ええ、伝票ホルダーも素敵でしょう。それは白蝶貝風ですね。

ほかには大理石風と琥珀風、三種類ございます。


「どうもありがとうございました。またのご来院をお待ちしております」


ずっと仏頂面だった虎牙がお辞儀した後、顔を上げると少し長めの前髪からのぞく瞳は優しく、少しはにかんだような笑顔を貴女に向けました。これこそ彼の人気の秘訣ですが、実はそれだけではございません。


さ、外に出ましょうか。

木製のドアを虎牙が、まるで執事のようなふるまいで開けてくれていますね。あのはにかんだ笑顔で。

不良っぽい外見にそぐわず、紳士的な面もございます。

彼は案外、女性や子供、動物にも優しいみたいですよ。


いかがでございますか?

この学院にはほかにも生徒が多数在籍しておりますが、本日ご覧になった六名が、特に人気の高い生徒たちです。


薔薇のアーチを抜けるとそこは汚れた都会。

乙女たちは少し危険な薔薇の香りを堪能するため、また足を運びます。


乙女たちにひとときの夢を見せてくれる楽園。

それが、カフェ・ギムナジウムなのです。


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