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カフェ・ギムナジウム  作者: 風水ほのお
乙女たちの楽園
3/22

乙女たちの楽園 2

「本日のオススメと、薔薇のジャム入り紅茶ですね。かしこまりました」


カウンター内の教授にオーダーを告げて、奥の厨房に向かう理央をご覧ください。

中に入る寸前、すれ違ったアドニスの肩に手を置き、耳元に何か囁いて――アドニスは色っぽく微笑んでおりますね。近くのテーブルから、小さな話し声が上がっています。


「ね、今の見た?」

「うんうん、やっぱりあの二人、いい雰囲気よね」


ああいうスキンシップが、この学院ではお客様へのサービスの一環となっております。

…はい? それを「サービス」と言ってはいけないのですね。二人の関係からくる、ごく自然の行動ですね?

申し訳ございません。わたくしも少々、勉強不足でした。


そうですね、お待ちいただく間に本でもお読みになりますか?

レジの隣に、オーク材のアンティークな書架がございます。

雑誌や漫画の類はございません。


アルチュール・ランボー、シャルル・ボードレール、ジャン・コクトー、トーマス・マン、アン・ライス、オスカー・ワイルド、森茉莉、三島由紀夫、北原白秋、中原中也…ほかには美術書、哲学書、ラテン語の辞書などがございます。

なんでも、院長のお気に入りのコレクションだとか…

状態がとても良いですね。ここだけの話、読む人があまりいないらしいですよ。

皆様、読書よりも生徒たちの様子から目が離せないご様子だそうで。


「お待たせいたしました」


薔薇のジャムが添えられた香りの良い紅茶…。

ここの薔薇ジャムは、海外の薔薇園と提携して特別生産しておりますもので。決して偽造品ではございませんよ。

本日のオススメは、アプリコットとクリームチーズのタルトですね。

金色のシュクル・フィレ(糸飴細工)のカゴの中は、アプリコットとチェリー、その下はなめらかなクリームチーズのタルト。

隣に添えられた洋梨のコンポートとハート型のチョコレート細工も、乙女の皆様方には嬉しい演出ですね。


ほら、ミツキが来ましたよ。


「ようこそ、ボクらのお茶会に。イカレた帽子屋に見つかる前にドーゾ☆」


さあ、お手をどうぞ。

手のひらにキャンディーを乗せてくれましたね。

この宇佐美ミツキが直接お菓子をプレゼントしてくれて、さらにそれ以上にスイートな極上の笑顔。

これに癒やされたいため、日替わりのオススメメニューはいちばんお値段が張るスイーツにも関わらず、彼が授業に出ている日は売り切れ必須だとか。


この学院は専門のパティシエである教授がおりまして、すべて手作りでございます。

こことは別にございます「二号館」にもパティシエの教授がおりまして、出されるスイーツはまた違っております。

お味はいかがですか? おいしいでしょう?

茶葉もコーヒー豆も吟味されたものを使用しておりますから、他の“従業員の顔だけで金を取って味は適当”なお店で味わうものとは、ひと味もふた味も違います。

その割にお値段はごく普通のお店と変わりませんから、普段ご趣味に財産をつぎ込まれる女性方にも、足繁く通っていただけるというわけです。

そこも、お若い頃は苦労をされた院長の方針なのだそうで。


「申し訳ございません。ただいま満席で。こちらでお待ちいただけますか」


ジャケット無しのスタイルで、声優ばりのいい声の持ち主は、スポーツ万能の天羽鷲一(あもう しゅういち)です。

学院一の長身で硬派、それに弟思いです。

レジ横のソファーに三人組のお客様を座らせた彼は…。

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