禁断の楽園 3
「まさか。群馬でカマボコの工場やってる」
「似っ合わねっすよー! 水無月さん、ちょーイケメンなのにー」
虎牙がまた笑う。
「俺、いずれはここ辞めて実家戻って、兄貴と一緒に手伝わなきゃいけないんだ」
淡々と語るアドニスだが、虎牙の表情が変わった。
「えっ、マジっすか? 寂しいなあ~…。じゃ、神楽坂さんとのカップル解消っすね」
「そのカップルって設定がいちばんキツいっしょ。ノーマルなのにホモのフリとか」
ミツキは指を動かしたまま、顔を上げて言った。全員、いっせいにうなずく。
実際、院長のその無茶ぶりに耐え切れず、“自主退学”する生徒もいる。
「二号館なんか、カップルのはずの“生徒会長”と“副会長”が犬猿の仲だしな」
と、ニット帽を深くかぶった理央。
古株の理央は、二号館ができた時に助っ人として出向いた時がある。生徒会コンビは、始めからウマがあわなかったそうだ。
「ま、時給が良くて待遇もいいから、仕方ないっすよね。一年に一回、有給休暇がもらえたり昇給やボーナスもあるし。時給でいうと、ここぐらい高いとなると…居酒屋かお水系、後はパチ屋?」
バッグをかついでロッカーにもたれた虎牙。
以前のバイト先がファーストフード店だった虎牙にすれば、天と地ほどの待遇の良さに、破格の給料だ。
「居酒屋のバイトは、前に行ったことあるけどキツいよ~。酔っぱらいが吐くし、外で立ちションして臭いし、トラブルも多いし。それ思えばココは楽かな。酔っぱらいよりメス豚の相手の方がマシだろ」
みかけによらず毒舌な鷹二に、帰り支度を終えた鷲一が声をかける。
「相変わらず酷いな、鷹二さん。あ、俺コンビニ寄ってくけど行きます?」
「うん、行こうかな。その前に休憩室寄る。ヤニ切れだから」
ポケットからライターと煙草の箱を出した鷹二に、理央も便乗する。
「俺も休憩室寄ってこ。鷹二もヘビースモーカーだからな~。それもファンの子にバレるとヤバいから気をつけなきゃな。俺も人のこと言えないけど」
「院長にはなるべく目立たない所で吸えって言われるからね。あと、バンド活動する時も気をつけろって」
虎牙は目を輝かせて鷹二を見る。
「鷹二さん、すごいッスよね。ヴァイオリンだけじゃなく、ベースも弾けるんスから」
特技欄の『小学生の頃 ヴァイオリン』に目をつけた院長に説得され、レッスン代は学院が持ち、レッスン中も時給が発生するからということで“病弱で内向的なヴァイオリニスト(かなりブラコン)の天羽鷹二が誕生した。
鷹二はため息をつきながら、更衣室のドアを開けた。
「まったく、メス豚の妄想に合わせるのも疲れるよ。んじゃ、お疲れ様~」
「お疲れっす~」




