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カフェ・ギムナジウム  作者: 風水ほのお
乙女たちの楽園
2/22

乙女たちの楽園 1

コーヒーとブール・ノワゼット(焦がしバター)、それにカラメルソースの香りが鼻腔をくすぐります。

バロック調のクラシック音楽が耳に心地よく響きます。

アーチ窓はビロードのカーテンでふちどられ、天井からはシャンデリア、壁には大きな柱時計、煉瓦の暖炉、アンティークなオルゴール。

テーブルはマホガニー製で、猫脚には薔薇の彫刻が施されております。椅子も旧きよき時代を思わせる、座面と背もたれが蔓薔薇や野いちごなどの柄のゴブラン織りです。


「いらっしゃいませ。お一人様でございますか?」


ブルーグレーのブレザーの制服に、メタルフレームの眼鏡がよく似合う、長身の「生徒」が笑顔で出迎えてくれました。彼はスマートに、貴女をカウンター席までエスコートします。


「カウンター席で申し訳ございません。ただいま室内が混み合いまして」


平日で、しかも食事時でもないのに「室内」は女性客でいっぱい。さすがにネットや雑誌で話題になるだけのことはありますね。


「ご注文がお決まりになりましたら、そちらのベルでお呼びください」


差し出されたメニューは、まるで高級レストランのそれであるかのように革で装丁されています。

先ほどの眼鏡の生徒は神楽坂理央(かぐらざか りお)と申しまして…ああ、名札をチェックなさったのですね。さすがはお嬢様です。

彼は公式サイトの人気投票で一位の生徒です。

ここではホール担当の従業員を「生徒」、調理師やパティシエ及びバリスタは「教授」、店内は外国の寄宿学校の談話室をイメージしていますから「室内」、この建物は「学院」、営業時間ではなく「授業時間」とお呼びください。ああ、ちなみにオーナーは「院長」ですよ。


ほかの生徒もご覧になりますか?


色白で彫りが深く細身で、ミルクティー色の髪の生徒は、アドニス・(れん)水無月(みなづき)

ギリシャ人の母と日本人の父を持つハーフ。父はイギリスで貿易会社を経営。

彼、アドニスは先ほどの神楽坂理央とのカップルで一番人気となっております。


この学院の制は、ブルーグレーのエンブレム入りのブレザーに同色のスラックス、白いシャツに紺色のネクタイと同色のベストですが、一人だけ着崩した生徒がいますね。

彼は剣虎牙(つるぎ たいが)。ベストとネクタイは無し、腕まくりしたブレザーのボタンを留めず、シャツは裾を出し、第二ボタンまで開けています。

少々無愛想ですが、ああ見えてシャイな部分もあり、その不良っぽさが人気です。


「ようこそ、ボクらのお茶会に」


あちらのテーブルでは、ちょっとクセっ毛の小柄な生徒が、ポケットからキャンディーを出してお客様にプレゼントしていますね。

あれが弟キャラとして人気の高い、宇佐美(うさみ)ミツキ。甘い物と『不思議の国のアリス』が大好きだそうで…。

なぜ、キャンディーが配られないお客様もいらっしゃるのか、疑問に思われたでしょう。

ミツキは平日のみ、日替わりの『本日のオススメメニュー』を注文したお客様に、ああしてキャンディーやチョコレート、クッキーやマシュマロなどをプレゼントしているのでございます。


いかがですか? オススメメニューをご注文なさいますか?

カウンターにあるベルを鳴らしてくださいね。ほら、理央が来ましたよ。


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