レトロモダンの楽園 3
「お待たせいたしました。ごゆっくりどうぞ」
え? できるものなら理央の言うとおりに、ゆっくりと? 永遠にここに閉じこめられたい、ですか。お気持ちはわかりますが、今日と明日はイベント時間内の授業ということもあり、入り口に「誠に申し訳ございませんが混雑のため、一組様三十分以内を目安にお願いいたします」と看板が出ておりましたからね。
さ、抹茶小豆パフェを召し上がってください。抹茶アイスとバニラアイスの上は、小倉あんに抹茶クリームと生クリーム。栗の甘露煮と、黒蜜ときな粉がかかった白玉団子があしらわれています。その下は抹茶ゼリーとお米のパフ。様々なお味と食感は、何度召し上がっても飽きないでしょう。
書生服のミツキが来ましたよ。
「抹茶小豆パフェご注文のメートヒェンに、はい、これ」
ミツキがくれたのは…小さな羽二重餅ですね。
は? メートヒェンとは何か…ですか? ドイツ語で「お嬢さん」という意味ですよ。
室内にディスプレイされた和綴じの本にドイツ語。どうやらここは「文乙」の設定のようですね。
旧制高校の学部は、大きく理数系と文系に分かれておりまして、それぞれ必修の外国語によって細かく分かれます。英語が甲、ドイツ語が乙、フランス語が丙となります。ちなみに「丙」があるのは文系のみです。
さあ、目の保養もして、おいしいパフェもお召し上がりになりましたから、お会計を済ませて出ましょうか。
出口のレジには学生服の剣虎牙がおります。
金ボタンを全部開け、シャツも第二ボタンまではずした、いつものスタイルですね。
着崩してもなお清潔感がただようのは、彼のクールな外見がそう見せるのでしょうか。
「ありがとうございました」
気のせいか、貴女の目がハート型になっているように見えました。そのぐらい、あのはにかんだ笑顔は罪とも言えますね。
おや、衝立の外には『本日は終了しました』の看板が。間に合ったのは幸いでしたね。
イベント二日目の明日は、二号館の生徒が来るそうです。神楽坂理央と人気を二分すると言われてる、通称「生徒会長」の不知火翼と、ホスト系イケメンの通称「副会長」の柳紫苑が来るようです。
あの生徒会コンビも、かなりの人気カップルだそうですね。
…明日もカフェだけお越しになりますか…?




