レトロモダンの楽園 1
『乙女フェスタ』。
空高く、木々が色づきだすこの季節。連休の二日間にわたり開催される、乙女たちの祭典。
新作乙女ゲームやBLゲーム、女性向けノベルスやコミックスや、アニメなどのグッズの先行販売、ステージでは声優のトークショーや漫画家のサイン会なども催されており、この二日間は全国から大勢の女性がいらっしゃいますから、大変混雑いたします。
お嬢様、お目当ての品はお買い上げになられましたか? お疲れ様です。
あちらの「カフェ・ギムナジウム」でご休憩なさいますか?
そういえばお嬢様のお目当ては、「カフェ・ギムナジウム」でしたね。
今年は「和」という題材で、大正時代あたりの旧制高校を再現しているそうです。
古い活動写真のパネルで飾られた木製の衝立の向こう、そこはレトロな薔薇の楽園、『カフェ・ギムナジウム』ですよ。
ほら、看板が見えますね。え? 文字が逆?
そうです。昭和二十年代までは、横書きの文字は右から左へ読むようになっていたんですよ。ここも院長のこだわりの一つです。
おやおや、ここも長蛇の列ですね。では、先ほどお買い上げになった本でもお読みになってお待ちしますか?
ああ、衝立の中が見えますよ。
蓄音機にコークスのストーブ。
正面には黒板もございますが、現在の黒板とは違い、真っ黒です。その黒板には「お品書き」と書かれています。
いつものメニューとは違い、飲み物は濃茶に薄茶、ほうじ茶に玄米茶、梅昆布茶ですね。
お菓子類は羊羹、くず餅、カステラ、あんみつにお汁粉ですか。
おや、色とりどりのチョークで「本日のオススメ 抹茶小豆パフェ」と書かれていますね。周りにお花や蝶、星も描かれて…あれは宇佐美ミツキの似顔絵でしょうか。なかなかユニークですね。今回もオススメになさいますか?
ほら、やっと貴女の番ですよ。
「いらっしゃいませ。当学院にようこそ」
詰め襟の学生服に帽子の神楽坂理央です。いつものブレザーもいいですが、学生服もなかなか素敵ですね。知的な眼鏡が、法律家を目指す学生かのような雰囲気を醸しだしています。




