苦悩の楽園 1
院長の執務室。事務室に当たるのだが、そこも院長のこだわりで「執務室」と呼んでいる。
『乙女フェスタ』の旧制高校カフェの準備で、慌ただしく毎日が過ぎてゆく。
その合間にも、公式サイトの更新は欠かさない。ご意見・ご要望の欄も、森田が一つずつ目を通す。
「院長、グッズやコスプレ衣装を出してほしいという要望が多数あります」
「ああ…それも考えたんだけどね…」
院長は机に頬杖をついた。
「エンブレムの入った文房具とかハンカチとか。でもそれをレジ横に置いちゃうと何だかファミレスっぽくなって、学院のアンティークなイメージが台無しになるのよね~」
「通販、というのはいかがですか?」
「受注や発送に人手がいるし、どこかに委託しても費用がかかるもの」
グッズを出したとて、どの程度売れるか不明だ。増設の問題がある今、できるだけ出費は抑えたい。
「コスプレ衣装もね~、万が一うちの偽物のカフェが現れたりしたら…」
「そ、それは考えすぎでは…。院長、偽物というより真似た店なら、オープンするという情報がありますよ」
森田の言葉に、院長は鼻を鳴らした。
「うちのパクり? ま、いずれは出るかと思ったけどね」
「正式には未発表ですが、私が調べたところによりますと、女学院として男性の集客を狙っているようです」
「…ふ~ん…うちの二番煎じね。どんなコンセプトかしら?」
森田は胸ポケットから小さな手帳を取り出した。どうやら情報はネット上ではなく、極秘ルートで手に入れたらしい。
「ミッション系の女子校で、調理係にも女性をそろえ、『シスター』と呼ばせるらしいです。お客様を交えた交流会や、生徒にもお客様とのコミュニケーションを大切にさせる…いわば、メイドカフェの女学院版ですね」
「それで? メニューは?」




