四夜 異名を持つ故に・・・
だんだん死神が名だけになってくる・・・。
噴水広場にまたまばゆい光が現れた。
そこから現れたのは一人だけ。先ほどまで血塗られた死神の鎌を持っていた者。
・・・ジュールのみ・・・・
「終了・・・。」
周りはいなくなった妖鬼がどこに行ったが悩んでいるが、それはすでにこの世には既に存在しない。
「あ、あんたが、た、倒したのか?」
円になって取り囲んでいた群衆がこちらを見ている。 一番手前にいた一人の老人が震える指でジュールを指して尋ねてくる。
「そうだけど。僕が倒したらいけない理由でもあった?」
笑いながら、なぜそんなに驚いているかをワ・ザ・ト知らない振りをしているジュールが答えた。
「いえ、ありません。周りの者の代わりに礼を言います。あの化物達をありがとうございました。」
老人の隣にいたシスターらしき人が手を組み、頭を下げながら、厚く礼をジュールに言ってきた。
(まぁ、礼を言われるのはそんなに悪くは無い事だし素直に受け取っておくか。)
ジュールはそんな事を考えながら恥ずかしそうに頭を掻いていた。・・周りの者の代わりって、(苦笑)
「皆さんから礼を言われるためにしたのでは無いので別に良いですよ。」
(あ・・・ どうして人間って素直になれないのかな?見栄を張ってしまったよ。)
少し溜息を吐くジュール。周りは気づいていないので良かったと思っているに違いない。
(まぁ、本当に礼の為じゃなくて尋ね人のためだからな。聞いてみるか。)
そういえば、自分の創造世界で戦闘をしていたから尋ね人と会う事が出来なかったんだね。
「あのー。尋ねたい事があるのですが良いでしょうか」
「はい、私は良いですよ。他の皆さんはどうでしょうか?」
「シスターがそうおっしゃるのなら私達は賛成です!そうですよね?」
若そうな男が大声で皆に尋ねた。人望が凄い人だなシスター。さっきのシスターが言った、周りの者の代わりも十分理解できる。
「・・・俺は反対だ・・・。」
賛成の声の中に小さくても脳に響く声を出す二人組のハンターがいた。
「俺もだ。あいつは月夜の死神だからよ!」
一同驚愕、これがあの゛月夜の死神゛とは考える人はいないだろう。今まで何回かこんな事があったので次の事はすでにジュールは予想していた。
老人が再びジュールを指差して話す。
「本当なのか?君が?」
良くあるパターンだ。次に起こる事は、
「はい、そうです。」
その事実が出ると決まって・・・
「なら、とっとと出て行け!異名を持つ者に与える物は無いのじゃ!」
完全的中・・・。 ジュールにとって当たるのは悲しいがこれは当たり前。 異名は相当強い者の事を指す。 それがいつ暴れるか分からない、そんな者に物資を何も与えたくは無いとは当たり前の事だ。
だけど、ハンターは同じ人間が求めた者だ。どうも自分勝手だ。 ・・・だが、自分が逆だとそう思うだろう。 自分とは名からして違うのだから。
「分かりました。」
了解。
ジュールは群衆に背を向けて歩き出す。背中へ罵声や石などを投げられているがあまり気にしない。気にすると負け、 それは学んだつもりだ。
ジュールは路地裏に抜け、町の扉の前に近づくと歩みを止め、今回の事を思い出す。
(今回の成果は、
・妖鬼を倒す。が、報酬は無し。
・砂漠を越えて来たが、尋ね人はおらず。会ってもいない。
・群衆からは罵声とともに追い出される。人間不信になりそう。
・今後の資金はほぼゼロ、砂漠を越える方法は知っている限り無し。 おそらく(絶対)資金どころか寝床さえ貰えないだろう。)
ここまで考えるとだんだん異名がうっとうしくなってきた。 今や親善活動になってきている自分にも嫌になってくる。
「で、貴方は誰ですか?」
見ると後ろに仮面をした人がいる。今まで全く気づかなかった。 ・・・こんな熱い場所で仮面をするのか?
「よく気づいね。月夜の死神君♪」
声色や喋り方から女性だろう。
「・・・何の用ですか?」
「久しぶりの感動の再会なのに冷たいじゃない、全く。」
「久しぶり?」
ジュールは予想外の言葉に思わず相手をじっと見てみる。どこかで見た事がありそうな人だ。
「まさか忘れたとは言わせないよ。私のこの顔を、」
女性は仮面を外してその素顔をジュールへ見せた。
「思い出したかしら?私の事。」
ジュールは激しく考える! この人こそ砂漠を超えて会いに来た人だ。 だが、実を言うと会いたくなかったのかも知れない。 頭を無意識に抱えている。
「ひ、久しぶりですね・・・。」
過去の記憶に震えている・・・。
異名を持つ事が周りからどんな目で見られるかを書きました。
さぁて、突然表れた人とどんな関係なのでしょうか。
次話から話を加速していきます!
楽しみにしていて下さい♪
過去とお互いに変わった姿と心。
過去から永遠に変わらないであろう恐怖の持ち主。