夜の前 二度目の夕暮れ時
ここはどこ? 白いだけの世界。 私はだれ? ジュールと言われている人間。
僕以外は何も無い世界。 そう、向かい会っているもう一人の自分と僕以外は誰もいない世界。
『持ち主さん、どうなの?最近の状態は。』
向こうから語りかけた来た。
「順調に旅も進んでいるから大きな問題点は無いね。」
僕は返答をする。
そう。 僕達は心の中で時折相談(相談と言っても、世間話やたわいの無い話など、いわゆる雑談。)をしている。 あ、もう一人の自分は因子が意思をもった者。簡単に言えば、因子の人格だ。 僕の中にいるからか、僕の姿をしている。
自分とは全く違う自分と話すのも意外と楽しいものだ。
『君の旅の話をしているんじゃない。 君自身の状態を聞いているんだ。 例の能力を使ってから時間が経っているから、だいぶ体への負担を消えたかもしれないけれど、妖鬼を喰らった代償は大きいはずだよ。』
僕の心配をしてくれているんだ。いや、宿り木である僕の体の心配をしているんだ。 結局は同じ事だけど。
「大丈夫。 もう僕一人の体ではないから、それなりに気を付けているよ。」
微笑むと相手も、よく聞く言葉だが、そうだな。と、いっているような顔をした。
『そりゃぁ気を付ける理由にはさ、片思いの彼女がすぐ近くにいるからだよねぇ。』
僕の反応を楽しむかに悪戯っぽく笑っている。
慌てて僕は返事を返す。
「そ、そんなことは無いよ!(手を横にブンブン振る)別にそんな事は…。」
気のせいか顔が少し熱くなっている。
『ははっ、やっぱりジュールはジュールだよ。 12歳の誕生日から全く変わっていない。』
「う〜ん、そうかなぁ?」
『そうだよ。』
(ジュール!起きなさい!いつまで寝ているつもり!?)
『おっと、愛しの人による現実へのお呼びだよ。 向こうの気持ちは分からないけどね。』
もう恥ずかしくて言葉もうまく言えない。かろうじて言えた言葉は、
「人が悪いよ。」
『分かった、分かった。もう言わないよ。 まぁ、向こうの気持ちでも聞いてみれば?』
こんどこそ恥ずかしくて言葉では言えなかった。
『もう、言っているじゃないか。 そう思ったでしょ?』
的を得たれた。 もう考える事すら止めたくなってきた。
(早く起きなさい!クレイソナ城についても肝心のアンタが寝ていたら意味が無いじゃない!)
「は〜い。」
「じゃあ、バイバイ。」
『バイバイの前に一つ忠告しておく。 彼女に何かあっても理性を失うなよ。 お前の心に隙ができたら、表の俺が無理矢理お前の体を奪うからな。』
「分かった。」
因子の僕の表。 合わせて三人の人格を背負っているなんて僕って相当変な人間だな。
「ジュール!いい加減起きなさい!」
僕の耳元で叫んでいる彼女がいる。 周りの人達はその声に迷惑そうだ。
「ん、おはよう。」
だけど、僕ではどうしようも無いので分かっていない振りをする
「まったく、あの日の夜にここに着いたらすぐに宿で眠りについてさ。全く計画性が無いじゃない。」
この宿は、木製の造りでカーテンによって部屋が分けられている。 木製の病院みたいな造りだ
「ネールルに言われるとはひどく心外だな。」
「あら、言うじゃない。」
さも、驚いた顔をする。 知らない人がこの顔をすると、少し引いてしまいそう。
「うん、行こうか。」
ベットから立ち上がり、顔と視線を合わせる。
「な、何よ。いきなり。」
「いや、ネールルはネールルだなっと。」
「どんな意味よ!」
外に出て行こうとする僕に慌てて聞き返そうとするが、それは無視をする。
(いつからこんな思いが芽生えていたのかな?)
涼しい外の風にあたりながら、ネールル個人に対する感情について考える。
前を見ていなくて木にダイレクトに当たると、ベタな事になったが。
「人間ってさ、心で思っていても、口には出せない事があるって面白いわよね。」
「えっ!いきなり何!?ネールル」
空を見上げているネールルがいきなりそんな事言い出した。
「無視したから答えないわよ。」
「目には目を。って訳ですか。」
笑いながら表通りを歩いていく僕達。 どっちが鈍いのかは分からないけど今のところ彼女には僕の気持ちが分かっていないみたいで、なぜかホッとする。
「ここのをT字路を右に回れば、目的地だよ。」
ここからまた新しい何かが始まるのだろう。 そんな事を想う僕だった。
裏と表のジュールは意外にいいコンビだったり。
キーワードに幼馴染と恋愛を入れてみようかと考えている日々。(そこまでの話になるかは分かりませんが。)
また、ゆっくりやって誤字脱字を出来るだけ無くす事にしました。
これからも月夜をお願いします。