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表裏のメモリー
「――僕が君を助けるから」
オレが最初に聞いたのはそんな一言だった。
強く抱きしめられて、凄く暖かい。生まれてすぐにその暖かさを知れたのは幸福だと思った。心地よくて、ずっと感じていたいと思える時間。
オレはこれから頑張ろうと思ったんだ。
※
「――僕が君を助けるから」
泣きじゃくる私を抱きしめて、言ってくれたのはそんな一言だった。
乱暴だけど、どこか優しい。私の事を大切にしてくれてるって思った。すぐ隣にこんな暖かさをくれる人が居るなんて、本当に幸運だった。
心地よくて、ずっと感じていたいと思える時間。私が覚えてるのはそれだけ。
その前に何があったのか、その後彼とどうなったのか覚えてない。
彼の顔も名前も、覚えていない。




