キセキの価値は?
「・・・お姫様と結ばれた男は、いつまでも幸せに暮らしましたとさ。めでたしめでたし。」
それは、貧乏な騎士とお姫様の身分を越えたラブストーリー。それが本当におとぎ話なら、私は死なずにすんだかもしれない。でも私は……
◆◇◆◇◆◇
あるとき、母様が宝石箱の一番奥から一番のお気に入りという指輪をみせてくれた。キレイな指輪に目を輝かせた私に、母はおとぎ話をしてくれた。
それは、昔々のお話。お忍びのおてんば姫と騎士が恋に落ちる話。徐々に仲良くなっていく二人に降りかかる困難の数々。困難を乗り越える中でますます燃え上がる二人の恋。そして、二人は結ばれた。この指輪はその結婚式でお姫様の指にはめられたものらしい。
「大切にしなさい」
そういって、母様は私に指輪をくれた。
時がたち、私は女王となった。
内政面では何の問題もなかった私の国だが、隣接する大国により、突然の侵攻があり、私は国を追われることになった。同盟国に亡命するため国境を目指すが、敵の追手や家臣の裏切りにより、私は1人国境近くの町に潜伏することになった。しかし、城暮らしに慣れた私の体は決して丈夫とはいえなかった。路銀もつき、長い逃亡生活の疲労で私はついに倒れてしまった。
もうお金になりそうなものは、指輪しか残っていなかった。
しかし、指輪は売れなかった。
「こりゃ、安物だね。まあ、このくらいかな」
そう言いながら、質屋の男は銅貨を3枚つまんでカウンターに置く。
母様の大切にしていた指輪が、たったの銅貨3枚?
そのとき、私の頭の中に母様の語るおとぎ話のエピソードが蘇る。それは姫様が露天で売っている指輪を気に入り、それを貧乏騎士がプレゼントするくだり。
あの姫様はもしかして母だったのだろうか? そういえば、隣国と折り合いが悪くなったのは、先代、隣国との縁談が破談になってからだという話はきいたことがあった。
「それなら仕方ないわね」
そういって、私は質屋の男から指輪を受け取った。私はもう長くないだろう。
指輪を手に質屋から出る私の顔にはなぜか笑みが浮かんでいた。
オチ的には、『彼女の仕事は~』と同じですが、ファンタジーで仕上げてみました。悲劇だけど前向きな感じにしてみましたが、いかがでしょうか?
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