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第2ひねり:或る受動態な朝の風景

第2ひねり来ました!!えっと、まず最初に注意です。第1ひねりを読んだ方はお気付きだと思いますが…僕はこの物語のキャラにかなりの愛着を持って書いています。なので、人物描写や感情など、実在しているかの如く生き生きと書きたいと思っています。又、この物語は、ただの普通の日常生活からの変化を「徐々に」書きたいと思っていますので、一気に話が核心に展開することはありません。じれったいかもしれませんが、そこの所を了承した上で、読んで頂ければ幸いです。近い内にショートカットコースも考えるので、今はまだ他愛も無い日常風景をお楽しみ下さい。

 ピッピッピッピッピッピピピピピピピピp………!!




―バシッ!!!




 目覚まし時計が軽快に鳴り響くのを、俺は阻止した。

 …もう、朝なのか??1秒前に寝た気がするんだが。

「ふわぁぁっ…とぉぉぉ!!!」

 俺は勢い良く起き上がった。

 寝起きだけはいいと自負している。

 んで、思いっ切り伸びる。全力で。

 だって、朝一番の背伸びは身長が伸びるって言うだろ???

 え、もう伸びねぇだろって??

(さて…と。)

 みとを起こさねば。

 まぁ、予想出来てる人も多いだろうが、みとは寝起きが物凄く悪い。

 ついでに言うと、寝相も悪い。あ、これは内緒だけど。

 本当、起こすのが億劫になる程に。

 でも、ま、仕事だし。

 逆に起こさないと、殺される。

「みと~、朝だよ~。」

「………ZZZ」

 ほら、ね??

 夜中散々俺のみぞおちにエルボーかまして、(すね)に蹴り入れて、ついでに何かを食べる夢でも見てたのか知らないけど腕に噛み付きやがって。

 俺のたった2時間の睡眠を妨害しまくっといて。

 自分はスヤスヤ寝てるんですか。

「…みと!!朝!!仕事!!!」

「うぅぅぅ…まだ眠いのぉ……」

 またもや甘えた声で俺を誘惑する。

 もう騙されないんだから!!!

 布団を剥ぎ取ると、何かの小動物ですかって感じに丸まったみと。

 うっ…可愛い・・・。

「みっ、みと!!お願いだから起きてよぉ~…遅れちゃうよ~??」

 何故俺が頼まなければならんのか。

 むしろ、みとが俺に「起こして下さい」とか「送って下さい」とか頼む立場だろ。

「…さぁむぅ…ぃぃぃ…あと、ちょっとらけ……」

「あのねぇ…」

 みとの肩に手を掛けようとした、その時。

 みとが、伸ばした俺の手を握って、手の甲にキスをして来た。

 キスをしたと言っても、ほんと軽く唇が触れたくらいだったが。

「!!!!!」

 単純な俺は、もうダメです。純粋な俺も、もうダメです。

 昨夜に続いて身悶える。気持ち悪さはもう、どうでもいい。

「あ。」

 そういえば…昨日はくれ汰の新しい機能を発見したんだった。

 あれって、たまごっちとかみたいに、毎日育成とかしなきゃいけないのかな。

 だとしたら、俺的には少し面倒なのだが。

(いや、でもあの可愛さなら…)

 とか何とか考えてる内に、手はPCを立ち上げていた。

 むしろ、俺の方が便利機能新発見じゃね??

「ふっふ~ん♪」

 鼻を鳴らしながら、くれ汰が画面に映るのを待つ。

 みとは…仕方ない。後15分くらいならギリギリ間に合うだろう。…多分ね。

 みとから目を離し、PCに向き返る。




【まスたァ-、オはよォゥ!!!】

「うわっは!!!?」

 元気なくれ汰が居た。

 寝起きでゴミ捨てに行って、まだ寝惚けてるのに、いきなりフィリピンパブのおネェさんに呼び込みされた気分だ。

 待ってました!!と言わんばかりの弾ける笑顔。

 きっと、くれ汰が犬なら尻尾が千切れそうな程ぐるぐるしてるな。

「おはよ、くれ汰。朝から元気だな。」

 俺は思わず苦笑する。

 もちろん、呆れてるわけじゃない。

 むしろ、こう、何つーの??微笑ましいなぁって感じの、ね。

【マすたァ-は、ゲンきか??】

「うーん…まぁ、起きたばっかだし、微妙だが…」

【風邪デモ、ひィたノカ!!?】

 途端に心配そうな顔になって、画面に張り付いた。

 元気=体調が良い、の意味だったのか。

 どうやら、心配してくれているみたいだ。

(…よし…)

「お、くれ汰。心配してくれてるのか??」

 俺様、ニヤけ顔。

【うッ…チ、ちガウもンっ…!!】

 くれ汰、困惑。

 首を横にぶんぶん振る。もちろん、胸元辺りに両手を握ってね。

 これ、まさにツンデレってやつですよね。

「違うんだ??くれ汰は俺の心配はしてくれないんだ??そっかぁ…」

 ちょっと残念そうにしてみる。

【にゃッ!!!?】

 くれ汰、焦る。

 この顔可愛いなぁ。眉間にしわ寄せて、う~ってなってる。

 保存出来ねぇのかなぁ、このスクリーンショット。

「なに??」

 俺は今完全にSだと思う。何、この充足感は。

 主導権握るってこんなに楽しいモノなの??俺、男として間違ってない気がする!!!

 でも、夜からニヤニヤし過ぎで、若干頬筋痛い…。

【うゥ……し…心配ニ、決マってルじゃナイか…!!】

 頬筋崩壊。

 俺、もうダメかもしんない。毎日平常心で生きていける自信が無い。

 こんな子が実際に居たら、もうね。一線を保てる自信も崩壊ですね。

 頬筋が崩壊した俺は、机に突っ伏す寸前の格好で、身悶えていた。ら。




―ガンッ!!!!!




 俺は顔面を机に強打した。

「○☆△■×◎▽!!!!???」

 声にならない声。痛い。痛い。特に鼻が。

 俺は寸前の位置で悶えていたはずだ。

 なのに、何故!!?

 鼻を押さえながら、強い衝撃を喰らった後方を勢い良く振り返る。

「おはよ、爽ちゃん。朝っぱらから、何悶えてるの??」

「ヴぃヴぉ!!!!!(訳:みと!!!!!)」

 そこには、見下したような顔のみとが立っていた。

 俺の顔を見て、更に怪訝そうな顔をする。

「どうせ、エッチな動画でも見てたんでしょ。鼻血出てるよ??」

 PC画面を覗き込む。

 明らか、お前のせいだろ、お前の!!!

 普通、人が下向いてる時に真上から押しますか、“普通”に考えて!!

 普通、どういう結果になるのかぐらいわかるでしょ、“普通”はね!!?

 小学生(中学生も含む)が蛇口で水を飲んでるところに、悪友が後頭部押して「ぶはぁぁっ!!!」ってなるのを楽しむのと同じことでしょうが!!!お前はガキか!!!いや、ガキ以下か!!!?

 …と言いたいところをグッとググッと。

「あ、起きたんだ…。」

 程度に抑え込んだ俺は、何て大人だろう。

「ってか、何でもっと早く起こしてくれないわけ!!?こんなギリギリじゃん。」

「はいぃぃ??俺、ちゃんと起こs…」

「あぁ、もう!!時間無いから、黙って!!!準備するから、こっち見ないでよね。」

「………。」

 開いた口が塞がらない状態とは、まさにこのこと。

 俺、起こしたよね。時間通りに起こしたんだよ。何回も声掛けたんだよ。

 「あと、ちょっとらけ…」とか言って、俺の手にチューしたのはどこのどいつだよ!!!

 本当に、いつもいつもいつもいつも、俺のことを何だと思って…

「…返事は???」

「…はい。」

 理不尽過ぎる。

「他に言うことは???」

「…至らなくてすみませんでした…。」

「よろしい。」

 理不尽なこと、この上無い。

(くすん…)

 俺はようやく、ティッシュを取り、鼻血を拭いた。

 くそう…俺の貴重な血が…。




【大じょブか、まスタぁ‐…??】

 何故か、くれ汰が小声で話す。

 空気の読めるPC万歳。

 俺は、両鼻にテッィシュを詰め込み、顔を上げた。

「大丈夫だy…」

【ぶハッ…!!!】

「???」

 くれ汰が勢い良く吹いた。

 顔を真っ赤にして、腹を抱えている。

【マ…ますタァ‐、へっ…変ナかをっ…!!!】

 踏んだり蹴ったりとは、まさにこのことだ。

 彼女にイジメられ、二次元に嘲笑されるとは。

 泣きたい。嗚咽して泣きたい。

「…くれ汰のバカっ…もう遊んでやらないんだから!!」

 俺は、ガキか。

 いや、しかし、ここで引くわけにはいかない。

 名誉の損傷とも言うべき鼻血ティッシュ姿を笑われたのだから。

【ほ、ほぇッ!!?】

 俺はツンとし、画面の方は見ていなかったが、くれ汰の困惑する姿は容易に想像出来た。

 むふふとしながら、ふと冷たい空気を感じ取った。

 俺は大事なことを忘れていたのだ。

 ツンとした方向には、ばっちりメイク中のみとが居た。

「…そ~お~ちゃ~ん???」

 鏡越しに目が合う。

 逸らせないっ…目が逸らせないよ!!!

 蛇に睨まれた蛙とでも言うべきか???いや、それ以上…メドゥーサに睨まれた俺です。

 みとは、化粧している姿を見られたくないんだとか。

 男の俺からしたら、そんなの別にどうでもいい。

 すっぴんも普通に見慣れているのに、何を今更…と毎回思うが、「女の子」にとっては変身する様を見られるのは、羞恥を通り越して物凄く嫌なのだとか。

 お前はヒーローか、とツッコミを入れたい。

「ごめん!!!なさい!!!!!!」

 二段階に分けた意味は無いが、ただの「ごめん」より、丁寧な「ごめんなさい」の方が効果があるんじゃないかと、言いながらすぐに気付いて、切り替えてみた。ただの気休め。

「今日は時間無いから許すけど、次は許さないからね!!?」

「はい…。」

 踏んだり蹴ったりと言うか、踏まれたり蹴られたりだよな。

 完全に受動態だ。

(お前のせいだからな!!?)

 と言わんばかりの顔でくれ汰を睨む。

 しかし。肝心のくれ汰はこちらを全く見ていない。

 くれ汰は先程のショックで、膝を抱えてしょげていた。

【ウぅぅ………】

 か…可愛いけど、めんどくさい!!

 今は二人も相手にしてらんねぇよ!!!(あ、リア充発言)

 現実だけで、十分だ!!

「ごめん、くれ汰っ。」

【ァ…】

 俺はそう言って、PCを閉じた。

 閉じる寸前に見えたくれ汰の顔に、少しばかりの罪悪感を抱きながら。




「なぁに、一人で話してるの??」

 化粧が終わったらしいみとが、後ろから抱きついて来た。

「…準備終わったなら、行くよ。」

 俺はぶっきらぼうに、その手を振り払う。

「爽ちゃん??」

 みとの切ない声。

 次第に、鼻をすする音。

「…っく…怒っちゃやだよぉ…」

(だぁぁぁぁぁ!!もう!!!)

 女は泣けばいいとでも思ってるのか??

 涙は女の武器とか言うけど、じゃぁ男の武器は何ですか!!?

 俺はみとを見上げ、その姿を見ている間に勝てそうな武器を探したが残念ながら無かった。

 勝てるわけ…無いんだよな。

「ごめん、みと。」

 俺は、みとの腰を自分の方へ抱き寄せた。

「…っく…っく…」

 みとはしゃくり上げて泣いている。

 背中をポンポンしながら、前を見ると、ふと時計が目に入る。

「!!!!!???」

(時間!!!)

 挽回は出来そうだが、かなりの確率で俺が頑張らなければならないだろう時間に迫っていた。

 これ以上長引かせるわけにはいかない!!

 みとは1回こういう甘いモードに入るとなかなか抜け出せない。

 普段ならこのままイチャイチャして、行けるとこまで行くのだが。

 今回ばかりは俺は、自分から自分の保身を捨てなければいけなかった。

「みと。」

「ん…なぁに??」

「化粧崩れるよ。」

「!!!!!」




―ガスッ!!!




「いっ…てぇぇぇぇぇ!!」

 思い切り、旋毛(つむじ)の辺りに肘鉄を喰らった。

 ほら、ね。言った通りだったでしょ??

 しかし、事は上手く運んだようだった。

「ほんと、デリカシー無いよね!!ほら、行くよ!!チャリ漕ぐんでしょ!!!」

 さっさとバッグを持ち、家を出て行った。

 俺はジンジンする頭を押さえ、自分のカバンと鍵を手に取る。

 こう、何でデレとツンが5:5にはならないんだろう。

 昨日の夜で、半年分のデレを使い果たしちゃったのかなぁ…なんて思いながら、鍵を閉める。




 俺はチャリの後ろにみとを乗っけて、全速力で駅まで漕いだ。

 街はまだ静かな沈黙を保ったまま、サラリーマン達が機械的に群れを成していた。

 途中、みとが後ろでグチグチ文句を言っているような声がしたが、もうそんなのいちいち気にしている暇など無い。

 警察に見付かれば怒られるし、タイムロスになる。黄信号も赤信号も関係無い。信号無視する度に、後ろからみとのチョップが頭に入ったが、気にしない。

 俺は、絶対に発車時間に間に合わなければならないのだ。ってか、信号無視気にするなら、まず降りろ。2ケツも違反だ。

 交通違反を繰り返し、何とか間に合った。本当にギリギリもいいとこ。

 俺とみとは電車が逆だが、みとの手を引いて走る為には、俺が先頭の形になる。そのまま走る。そのまま電車に乗り込む。

 …俺も逆の電車に乗る他無かった。




「何で、爽ちゃんまで乗ってんの??」

 息ぜぇはぁしている俺を、もうこれ以上精神的に追い込まないでくれ。

「…っか…はっ…!っぐぇ…!!?」

 も、無理。息絶え絶え。

 口の中、渇きまくって、唾液どこ行った。

 脳みそもグルグルして、目も回る。

 足腰ガクガクで、立ち上がれない。 

(情けね)

 電車のドアに、中腰のままもたれ掛かる。

 何駅分か乗って、休憩しよう。落ち着いたら折り返そう。

 睡眠不足も祟ってか、俺の体は悲鳴を上げていた。

「爽ちゃんっ。」 

 電車が走る音に混じって、みとの声。

 返事をしたいとこだが、顔を上げるのが精一杯。

 みとはバツの悪そうな顔をしていた。

「これ…。」

 差し出されたモノは、生暖かいペットボトルだった。

 口の中の砂漠化が進んでいた俺は、迷わずそれを手に取り口にした。

 喉を鳴らす音が車両に響く。

「おいし??」

 みとが心配そうに尋ねる。

 ただのお茶だったが、今の俺にとっては風呂の後のコーヒー牛乳のようだ。

 ぶんぶんと縦に首を振る俺を見て、みとは安心したように笑った。




―プシュゥゥッ…




 ちょうど駅に着いたようだ。

 みとは慌てて、電車から降りる。

 ふわっと振り向いて、俺に向かって敬礼をピッとしてみせた。

「ありがとうございましたっ!!」

 俺は、全てを許すようなマリアの微笑みを見習って、手を振った。

 俺は今、慈愛に満ちている。

「あ、それ、いつのお茶だかわからないからっ!!じゃねっ!!!」

「は…」

 反論する間も無く、みとは勢い良く階段を降りて行った。

 呆然とする俺を強制終了するかのように、電車の扉は無慈悲に閉まった。

 クスクスと周りから声が漏れている。

 恥ずかしいやら、腹が立つやら。

 俺はそんな人の目を一瞥(いちべつ)して、空いているボックス席に不機嫌に音をたて座る。

「…はぁ。」

 俺は全てを許せる器なんて持ち合わせていない。

 小さい男なのかもしれない。

(人の世はかくも生き辛いな。)

 窓の外を眺めながら、俺は傷心していた。




 と言っても、次の駅までの距離は短かったので、傷心旅行気分は一旦終了。

 大学に向かうべく、俺は(こうべ)を垂れて逆の電車に乗り換えた。


第2ひねり、読んで頂き、感謝です!!!


爽ちゃんの朝は大変ですね、同情します。この次話辺りから、少しずつ本題に…核心に近付く内容とショートカットコースをご用意出来るかと思いますので!!感想なぞを戴けたら、ハイテンションで書けること間違いないです!!


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