表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ディヴァイン・デバッグ ~【粗探し】しかできない不運なデバッガーの異世界“欠陥”修正ログ~  作者: 鳴海なのか


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

5/5

第5話「落下の果ての“欠陥”(2)」


 ナユタの奏でる歌は、長くは続かなかった。


 最後の一音が静かに消える。

 と同時に、淡い光もフッとほどけて消えたのだった。



「……ど、どう……ですか?」


 おそるおそる聞いてくるナユタ。

 俺は左腕を回し、脇腹を押さえ、足に体重をかけてみる。

「おお……」

「えっ」

 一瞬焦るナユタ。

「……普通に動くぞ。さっきまでとは大違いだ」

「よ、よかったぁ~……!」


 その場にへたり込みそうな勢いで、ナユタが胸を撫で下ろす。


「おいお前、もしかして自信なかったのかよ」

「だ、だって……治す前に何か変なところへ流れたらどうしようって思ってましたし……」

「思ってたのかよッ」

「でもっ、ちゃんとできましたよ?」

「そこは素直に助かった。ありがとう」

「えへへ……」


 ぱっと顔を明るくするナユタ。

 ……わかりやすいヤツだ。




「まあいい。動けるうちに、進むための戦略を立てるぞ」


 俺は改めて周囲を見渡した。


「え、進むんですか? ここでリィゼルさんを待ったほうがいいんじゃ」

「いつ合流できるかわかんねぇだろ。もしかしたら、どこかに出口があるかもしれない。そしてここが何なのかも――立ち止まってたら何も分かんねぇ。食料も水も限られてる。いつまでもいられるわけじゃない。だったら調べるしかないだろ?」

「そう……ですね」


 誰も知らない地下領域。

 我が国の文明ではありえない構造。

 そして、まだ正体の分からない妙な“何か”。


 不安はある。

 だが、それ以上に――確かめたいッ……


 そう思ってしまうあたり、やっぱり俺は、生粋の()()()()()気質なんだよな。




 ***




 剣はある。

 防具も無事だ。


 携帯照明(ランプ)も無事だし、背嚢(ナップザック)も落とさず済んだ。

 中身は水筒、堅パン、干し肉、乾燥チーズ、火打ち石、拾った魔物素材……などなど。

 2人分を合わせればそこそこの量だが、節約したって何日も籠城できる量じゃない。


 てか今回のダンジョン、ほんとは日帰り予定だったんだぞ。

 念のため、ってことで少々多めに持ってきてて正解だよ……。




 状況を把握できたところで、俺は言った。


「第1の目標は『出口を発見すること』」

「はいっ!」

「第2の目標は『ここが何なのか調査すること』」

「……はい?」


 首をかしげるナユタ。


「いや調べるだろ普通」

「えー……エルヴィンさんの普通、ちょっと変です……」

「変じゃない。俺たちは今、未知の領域(エリア)にいる。ここが何かを理解できれば、どんな危険が潜んでいるか推測しやすくなる」

「あ! 結果として、安全に進めるようになるってことですね?」

「そういうこと。いいか、情報は武器だぞ?」

「わぁ~、勉強になります!」


 すっかり信じ切ったらしいナユタ。

 まぁ半分は()()、半分は()()()()だけどな!


 怖くないと言えば嘘になる。

 でも、未知の構造を前にすると、恐怖と同じぐらい、知りたい欲も湧いてくる。


 ……悪い癖だよ、ほんと。




 ***




 しばらく歩いたところで、ナユタが言った。


「……エルヴィンさん」

「なんだ?」

「あの……大丈夫、なんですよね?」

「知らん」


「え!? そんな無責任な――」

 俺の答えに慌てるナユタ。


「いやいや、下手に適当な事を言うよりいいだろ。知らんものは知らん。だからこうやって調べてるんだ……お、これ、高く売れそうだな!」


 落ちていたのは、見覚えのない青銀色の金属ブロック。

 やたらと軽く、やたらと丈夫。

 武器とかに加工したら、割といい感じっぽいんじゃないか?



 呆れた顔でドン引くナユタ。

「ほんと図太いですよね……こんなときに、お金の話なんて」

「金は大事だぞー。この世はなぁ、何をするにも金がいる」


 ま、生きて帰れたら、の話だけどな!




 ***




 やがて通路は2つに分かれた。


 ――右は広い。

 ――左は狭い。


 どちらにしても奥は見えない。

 俺の携帯照明(ランプ)は急いで買った安物で、あんな遠い所まで照らせない。

 ナユタの持ってた高級携帯照明(ランプ)があればよかったんだが、落下時に行方不明ときた……。

 ちくしょう、あれさえあればッ!


 気を取り直して前を向く。


「さぁナユタ、どっちを選ぶ?」

「えっと……出口につながってるほう?」

「それが分かりゃ苦労しねぇよ……」



 途方に暮れたようにつぶやくナユタ。

「うぅ……どっちが出口なんでしょう? 落ちてきた穴からは出られないし、あたりも暗いし、まるで()()()()()()()みたいですぅ」

「閉じ込められた、つまり()()…………待てよ?」


 ふと、頭の中に()()()()()

 俺は周囲を見回した。



 ――ダンジョン。

 それは魔物たちが住まう領域、外界への出入口を備えた構造。

 この場所はダンジョン内ではあるが、まるで“密室”。


  ――密室。

 それは閉じ込められた空間、外界から遮断された構造。

 だとすれば、この場所は……




「……仮に『ダンジョン=密室』と定義すれば――出入口って欠陥(バグ)だよな?」

「ん? それってどういう――」

 ぽかんとするナユタ。

「発想の転換さ。この場所を仮に“閉じ込められた密室”と見るならば、外に出られる道ってのは、むしろ“欠陥”ってこと!」


 俺の加護(スキル)は、使()()()()()()()()()()欠陥(バグ)がわかるというもの。

 だったら対象の定義次第で、鑑定結果が変わってもおかしくない。



 深く、深く、息を吸う。

 それから俺は「()()()()()()()()()()」をひとつの()()として()()した。



『――【粗探し(オート・デバッグ)】』


 脳内に響く、無機質な声。

 次の瞬間、視界の中で左の通路の壁面に出たのは――赤い線。


「――出た」

「えっ何が?」

欠陥(バグ)。つまり出口へと繋がる道さ」

「へ?」

「正解は左だ、おそらくな。行くぞ!」

「あ……はい!」




 ***




「「…………」」


 左の道、赤い線を辿った先。

 俺たち2人は無言で立ち尽くしていた。



 やがてナユタが口を開いた。

「……エルヴィンさん。なんか言うことありますよね?」

「んー、有るような、無いような」

「うぅ……まぁしょうがないですよ、未知の領域なんで」

「「はァ」」

 2人揃って、大きな溜息をつく。



「おかしいな? 【粗探し(オート・デバッグ)】は確かにこっちを指してるんだが……ん?」


 赤い線の先は、正面の壁を指している。


 よくよく見れば。

 ちょうど指し示された1点に、凹みのような穴があった。

 これってもしかして……!



「ナユタは下がってろ。で、警戒しとけ」

「なんで?」

「何が起こるか分からないからさ」


 言われた通りにナユタが下がったところで。

 俺自身も警戒しながら、凹んだ部分を、グッと押し込む。



 ――ゴゴゴゴゴ……


 音を立てて、壁の一部が開いていく。

 その先には人ひとり通れるほどの隠し通路が続いていた。



「ほい。道が開けたぞー」

「す、すごい……」

 目を丸くするナユタ。

「これって、エルヴィンさんの加護(スキル)が見つけたんですよね」

「そうなるな」

「ほんとにすごい……さっきは疑ってしまってごめんなさい」


 まぁ疑うよな~。

 ちなみにさ、俺も今、とても驚いているところだぞ。

 正直ちょっと楽しくなってきた。



 ――【粗探し(オート・デバッグ)】。

 最初は、人の秘密を暴くだけの嫌味な加護(スキル)かと思ってたが――


 想像以上に凄い能力(スキル)なのかもしれないな!



ここまでお読みいただきありがとうございます。

彼らの冒険はまだまだ続きますが、書きたかったシーンが5話となるため、いったん完結扱いとさせていただきます。

続きは気が向いたら……ということで!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ