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第五章 世界を敵に回す、悪役令嬢の覚悟
私は魔導研究を公表し、魔力制御塔の建設を提案した。
「何を言ってる? 魔力は神の賜物だ。制御などしてはならん!」
教会の高位司教が反発する。
「魔導など邪道だ! カルメン・ルミエル・ドシュタァリン! 貴様は異端者だ!」
「異端者? ふーん。じゃあ百年後に魔力が暴走して国が吹き飛んでも、知らんぷりするの?」
「……黙れ!」
私は議会でデータを提示し、未来の崩壊を警告した。
だが、誰も信じない。
「カルメン様……本当にそんなことが?」
データを見たルーネゼが、心配そうに尋ねてくる。
「本当よ。でも世界を救うには世界を敵に回さなきゃ……」
こうなったら……悪役令嬢の特権を使わせてもらうわ。
そうして私は、私財をすべて投じて魔力制御塔の建設を開始した。
土地も技術者も資金も、すべて私一人の力で何とかする。
「カルメン様……」
「貴族が、私たちの未来のために……」
工事現場で労働者たちが涙を浮かべ、首を垂れた。
「……別に慈善じゃないわ。私もこの世界で生きたいだけよ」