第一章 転生してまず気づいたのは、自分が悪役令嬢だったこと
「……はあ!?」
目が覚めた瞬間、私はまず驚きで声を上げた。
白く荘厳な天井からはシャンデリアがぶら下がってきらめいており、開かれた窓の向こうからは小鳥のさえずりが聞こえる。
どこか見覚えのある風景。
まるで、昔遊んだゲームの世界そのものだ。
「まさか……!?」
私は身体を起こし、姿見の前に立った。
手足は細くしなやかで。
肌は白く、髪は艶やかなロングヘア。
鏡に映る顔は見事なまでに整っている。
そしてその耳たぶには貴族の証である、銀の耳飾りが光っていた。
「……クソ。また乙女ゲームの世界に転生したのかよ……」
私が転生するのは、これが最初じゃない。
もう何度も乙女ゲームの登場人物に転生してきた。
しかも、今回私が生まれ変わったのは「運命の王女」という、とある人気乙女ゲームの悪役令嬢、カルメン・ルミエル・ドシュタァリン。
乙女ゲームオタクだった私には、このゲームをプレイした記憶がある。
主人公の平民出身であるヒロインのルーネゼが、王太子のアルテミウス・セバスド・ルミアシアと恋に落ち、国を救ってハッピーエンドを迎える。
そして、その邪魔をするのが──カルメン・ルミエル・ドシュタァリンだ。
高慢で傲慢、ヒロインをいじめたうえに王太子を奪おうとし、最終的には追放か処刑される。
典型的な「悪役令嬢」のレールを、完璧に歩いていく運命。
「……もうウンザリだよ」
前世ではOLとして過労死した私。
意図度目か人生でも、またこんな役回りか。
でも──
「ただじゃ終わらせないわ」
私は鏡に映る自分を見つめ、唇をにやりと上げた。
「世界を敵に回すのも悪役令嬢の特権、でしょ?」