第90話 2人目の悪魔
戦場は混沌を極めていた。
レナが歳三を討ち取ったことで、黒姫は回復を失う。
それは大きなアドバンテージだが、戦いはまだ終わらない。
咲の刀が、容赦なくナオへと襲いかかる。
鋭い刃が頬をかすめ、鮮血が飛ぶ。
「はぁっ……!」
ナオは必死に剣で受け止めるが、押し込まれる。
背後では縛人が鎖を操り、ナオの足を狙っていた。
「逃がさねぇぞ、小娘!」
ナオは後退しながらも叫んだ。
「咲さん! あなた、本当はこんな戦い望んでないはず! 剣神に縛られてるの、分かる!」
一瞬だけ、咲の剣筋が揺らいだ。
しかし剣神の低い声が響き、再び彼女の瞳が濁る。
「……黙れ。お前はただ、斬る相手だ」
「っ……!」
ナオの胸が締め付けられる。咲の言葉が、彼女自身のものではないと分かるからこそ。
剣神と刃を交えるヒカルは、目を細める。
剣神の一撃一撃が、人間離れしているのだ。
「お前……何者だ」
剣神は笑う。
「剣を極めし者。そう呼ばれてきたが――本質は違う」
その瞬間、彼の背から黒い瘴気が噴き上がった。
地面の石畳がひび割れ、空気が重く沈む。
「……悪魔、だな」
ヒカルの言葉に、剣神の口元が歪む。
「ルシフェルだけが悪魔だと思ったか? 我らは無数に存在する。私は“剣を司る悪魔”……人の皮をまとい、王国を欺いてきた」
「……ッ!」
ユウキが息を呑む。
「そんな……じゃあ、咲さんも!」
ナオは強く叫んだ。
「咲さんは剣神に操られてる! 本当の心を、悪魔に奪われてるんだ!」
戦場を見ていたミナが動く。
鎖を投げ、縛人の腕を絡め取った。
「甘いっての!」
縛人が力づくで鎖を引きちぎろうとするが、ミナは笑みを浮かべる。
「アンタみたいなゴリ押し相手は慣れてんの! ……今だ、ナオ!」
拘束されたわずかな隙。ナオは全力で咲へと踏み込む。
剣と剣が激しくぶつかる。
ナオは必死に声を張り上げた。
「咲さん! 思い出して! あなたが戦う理由は何!? 剣神に操られるためじゃない!」
咲の剣が震え、瞳が揺らぐ。
一瞬、少女らしい苦悶の表情が覗いた。
「わ、たしは……」
だが剣神が怒声を上げる。
「目を覚ますなッ! お前は我が剣、その器に過ぎぬ!」
咲の体が硬直し、再び操られそうになる。
剣神を相手にしていたヒカルは、剣を握り直した。
(この男を倒さない限り……咲は救えない!)
視線を仲間へ向け、強く叫ぶ。
「全員、咲さんを守れ! 剣神は俺が斬る!」
仲間たちの目が一斉にヒカルに集まる。
その声に呼応するかのように、ルミナスブレイブが再び一丸となった。
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