第85話 キューブ
ルミナスブレイブがたどり着いた第5階層は、何もない広大な空間。そこにただ一つ、宙に浮かぶ巨大な立方体が存在していた。
「……あれが、ボス?」
レナが目を細める。
「めちゃくちゃ硬そうだな」
ヒカルが剣を構え、距離を測った。
そのキューブは静止しているように見えて、次の瞬間――。
「は、速っ……!」
ソウタが叫ぶ間もなく、キューブは光の残像を残して縦横無尽に移動し始めた。
剣の一撃も、魔法の一閃も、そのすべてを空振りさせる。
しかもカッチカチの装甲に、かすった攻撃はほとんど通らない。
「おいおい、これじゃあ……!」
ヒカルが舌打ちしたそのとき、遠くからキューブが光を収束させる。
「レーザー!? 避けろ!!」
轟音とともに、巨大な光線が床を抉り、灼熱の風が吹き荒れた。
休む暇すら与えない。まさに絶望的な相手だった。
――だが、一人が立ち上がる。
「僕に任せて!」
まだ体力が戻りきっていないユウキが、額に汗をにじませながら杖を掲げた。
「《マジックセイムタイム・セット100!》」
無数の氷壁が、キューブの進路を塞ぐ。だが――。
「うそ……全部砕かれた!」
レナが息をのむ。
しかし、ユウキは口元を引き結んでいた。
「でも……スピードは落ちたはず!」
その瞬間を、ミナが逃さない。
「ナイス、ユウキ! ――あたしが止めるッ!」
鎖が光を帯び、キューブへと走る。
「《強制拘束》ッ!」
ガシャンッ! 鎖が確かにその巨体を絡め取った。ほんの一秒。されど、決定的な一秒。
「今よ、ナオ!」
「うんっ!」
ソウタとレナが同時にバフを重ねる。ナオの周囲に赤と金の光が集束し、力が膨れ上がった。
「《悪魔の覇道・改》――さらに、全力だぁぁぁぁぁぁ!!」
赤黒い閃光がキューブに叩き込まれる。
さらにナオは成長の勢いそのままに、次の奥義を解き放った。
「《悪魔の覇道・改・拘束百連撃》ぇぇぇぇッ!!」
振り下ろされる剣撃が連打となり、ミナの鎖が合わせて敵の装甲を裂いていく。
ソウタは歯を食いしばりながら支援を続け、気を失いかけるナオを鼓舞する。
だが、そこで――。
「変形……!?」
ヒカルが目を見開いた。
キューブが分裂し、無数の黒い球体へと姿を変える。
「ちょっ、何これ!? バラバラになったじゃん!」
ミナが鎖を引き戻し、唇をかむ。
それぞれの球体がメンバーに襲いかかる。
「危ない!」
ヒカルが声を張る。
ユウキは咄嗟に魔力を解き放った。
「《アイスフォートレス》!」
分厚い氷の壁がレナとソウタを守り、そのまま次々と迫る球を防ぎ切る。
ヒカルとナオは剣を閃かせ、弾丸のような球を打ち返す。
そしてミナは――。
「ここで出すしかないっしょ! 《チェーンシールド》!」
鎖が煌めき、光の盾を形成する。無数の球体がぶつかり、閃光と火花が迸る。
「ミナ、それ……そんな技まで!?」
ヒカルが驚きを隠せない。
「えへっ、サプライズ☆ でも今は集中して!」
ミナはウインクしながら、鋭い眼差しで敵を見据えた。
そのとき――ヒカルが声を張る。
「よく見ろ! 無数の中に……一つだけ、黄金のボールがある! あれが核だ!」
仲間たちが必死に視線を走らせる。
そして――。
「……あった!」
ナオの目の前に、黄金の球が現れた。
「いっけぇぇぇぇぇッ!」
豪快な一振りで、その黄金を真っ二つに粉砕する。
直後、残りのすべての球体が光となって消え去った。
「……勝った、のか」
ソウタが膝をつき、息を整える。
「うん、やったね!」
ユウキが笑顔を見せる。
こうしてルミナスブレイブは第5階層を突破した。
しかし――。
「タガに抜かれている……!」
レナが映像に映る順位を確認し、声を震わせる。
さらに、わずか数秒差で、黒姫が同じく第5層を突破していたのだ。
「第6階層で……再度抜き返す!」
ヒカルが仲間に力強く言い切る。
ルミナスブレイブは再び駆け出した。
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