第84話 地獄ピエロ
深紅のカーテンが垂れ下がる、不気味な劇場空間。中央には、奇怪な化粧を施した道化師――地獄ピエロが、狂気の笑いを響かせながら待ち構えていた。
疲労が濃く刻まれるユウキ、レナ、ソウタは即座に支援態勢へ。
「ナオさんに……全部、託しましょう!」
ユウキが杖を掲げ、攻撃力強化の詠唱を開始する。
「アタックブースト、最大出力!」
ソウタの叫びと共に、ナオの全身に赤黒い光が宿る。
ナオは静かに剣を構え、瞳を細めた。
「……《悪魔の覇道・改》」
次の瞬間、赤黒い閃光がピエロを貫いた。轟音と共に、ボスの身体が大きくよろめく。
「きゃはははっ!? おっとっと……!」
確かな手応え――しかし、ミナの目は鋭く敵を見据えていた。
「……このピエロ、縛りポイントが……ない!?」
仲間たちの顔に緊張が走る。拘束が効かない敵は、想定外の強敵だ。
「ま、待ってミナ! それじゃ……!」
レナが思わず声を上げる。
だがミナは一歩前へ進み出た。
「大丈夫。……わたしにはもう一つ、切り札があるから」
彼女の瞳は燃えるように揺らめいていた。
母アリスですら完成できなかった幻の奥義――《強制拘束》。
「たとえ一秒でも……みんなの刃を届かせる!」
次の瞬間、ナオの攻撃が振り下ろされる直前に、ミナが叫ぶ。
「《強制拘束》!!」
地獄ピエロの動きが一瞬止まり、その身体に鎖が絡みつく。
防御半減のデバフが発動し、ナオの一撃は倍の威力を叩き込んだ。
「……これが、ミナさんの強制拘束連携……!」
ユウキが震える声で呟く。
高頻度で続く攻撃と拘束の連携に、地獄ピエロの体は大きく削られていく。だが――。
「キャハッハッ! 面白いねぇ! じゃあ……こっちも本気だ!」
ピエロが跳ね、三枚のカードを宙へ放る。
それは狂気の必殺――三連続の全体即死攻撃だった。
一撃目。
「させるかッ!」
ソウタが即死無効スキルを発動し、仲間全員を庇った。
二撃目。
ソウタのスキルは間に合わない。
閃光が迫る瞬間――ヒカルがレナを抱き寄せる。
「今だ、神化!」
「……はい!」
ふたりの身体が神の光に包まれ、三秒間の無敵へ。
光の外にいた仲間たちは倒れ伏すが――。
「みんな、戻ってきて……! 《奇跡の復活》!」
レナの祈りと共に、白い花弁のような光が舞い、全員が息を吹き返した。
しかし、最後の三撃目。
ヒカルの神化はクールタイム中――もう避けられない。
「これで終わりだァァッ!!」
ピエロの狂気の笑いが会場を震わせる。
だが――閃光は訪れなかった。
「な……何だと……?」
地獄ピエロの動きが止まっていた。
ミナが震える手を突き出し、鎖が敵を縛っている。
「っ……今……キャンセル、した……!」
観客席がざわめきに包まれる。
ヒカルでさえ、目を見開いた。
(信じられない……俺ですら決められなかったキャンセルを……ミナが……!)
全員が息を合わせる。
「これで決める!」
ユウキが再びバフを集中させ、ソウタが攻撃力を極限まで引き上げる。
「――《悪魔の覇道・改》!」
ナオの漆黒の閃光が走る。
「――《神裁》!」
ヒカルの白光が重なる。
光と闇が交錯し、地獄ピエロを飲み込んだ。
絶叫と共に、道化師は崩れ落ちる。
――第4階層、突破。
ルミナスブレイブの名が再びトップで掲示板に刻まれる。
観客席は総立ち。だが他ギルドの表情は引き締まっていた。
「……ユウキが消耗した時点で終わりと思ったが……違ったな」
黒姫の剣神が低く呟く。
タガのダーゲリは興味深げに目を細める。
「神化での回避……いや、それ以上に……あの拘束士の娘か」
第2位通過はタガ。第3位通過は黒姫。
戦いは次の舞台、第5階層へと続いていく。
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