第76話 ワールドギルドの実力
ランド祭の中日。街中はまだまだ賑やかさに包まれていた。屋台の香ばしい匂いと楽器の音色、笑い声が絶えず響き渡っている。そんな喧噪の中、ルミナスブレイブの仲間たちは、人形の姿になったチャイも一緒に、祭りのカフェのテラス席に腰を落ち着けていた。
「お祭りの日に、こうして皆で食卓を囲むのはいいな」
ヒカルが軽く笑うと、ナオは両手にパンケーキと串焼きを持ったまま、頬をいっぱいに膨らませてうなずいた。
「……んぐ。おいしいです! お祭りって、やっぱり最高ですね!」
「ナオさん……口の周りにソースが付いていますよ」
ユウキがそっとハンカチを差し出す。まだ十二歳ながらも、その落ち着いた仕草は大人びていた。
「ありがと、ユウキ!」
ナオが受け取ると、ユウキは小さく笑った。
その時だった。
街中に設置された魔法掲示板が、一斉に青白く輝き始める。瞬間、祭りの喧騒が少しずつ薄れ、人々の視線が掲示板へと集まっていった。
「……始まるみたいだな」
ヒカルが呟き、仲間たちもカフェの席から見える王都大広場前の巨大掲示板に目を向けた。
映し出されたのは、次の日に控える「ダンジョンキングオーダー ワールド大会」の告知だった。
『今年のオーダーは各ギルド一度きりの挑戦。そして、すべての国の代表ギルドが、同時に仮想ダンジョンへ挑む!』
ざわめく街。ルミナスブレイブの仲間たちの胸にも、自然と緊張感が広がった。
ルミナスブレイブの紹介
最初に映し出されたのは、ランド王国代表のルミナスブレイブ。
ユウキの同時詠唱で複数の魔法が一斉に発動する場面、ナオの信じられない速度の剣撃、ミナの的確な拘束、ソウタの無効化と大幅バフ、レナの回復だけでなく攻撃への参加――。
「おおお!」
映像を見ていた街の人々が一斉に歓声を上げる。子供たちが「ユウキー!」「ナオさまー!」と叫び、手を振っていた。
ユウキは「僕はそんなに大したことやってないです」と苦笑する。
「いやいや、同時に何個もって普通ありえねぇだろ!」
ソウタがすかさず突っ込むと、ユウキは眉を下げて言った。
「……それを言われると、返す言葉がございませんね」
続いて映ったのは、シーブルー王国代表ギルド「黒姫」。
映像が切り替わると、群がる敵の中を剣神と呼ばれるサムライが駆け抜け、一瞬で敵が斃れていった。
「……え? 今、何が……」
ユウキは思わず口をぽかんと開ける。
「剣神様だ!」
観客の中から誰かが叫び、シーブルーから来ている者たちが口々にその名を連呼する。
さらにボス戦。最後に入ってきたギルドマスター咲が、遠くから剣を一振り。鞘に収めた瞬間、ボスは崩れ落ちた。わずか三十秒の決着だった。
「な、何それ! 反則すぎるって!」
珍しくユウキがタメ口でツッコむ。
レナは拳を握りしめ、隣のヒカルと視線を交わした。
「……やっぱり、とんでもない相手ね」
最後に登場したのは、マウントグリーン王国代表ギルド「タガ」。
職業は全員「秘術師」。聞きなれないその職に、街の人々はざわついた。
映像が始まると、彼らはただ走っているだけに見えるのに、進む先々で敵が次々と倒れていく。
「……何をしているのだ?」
ユウキが思わず首を傾げる。
ボス戦。巨大なゾウが現れた瞬間、仲間たちがギルマスのダーゲリに念を送る。ダーゲリは宙に浮かび、全身から放たれる気功のような光がゾウを消し飛ばした。
「ちょ、ちょっと待ってください……! あれは魔法ですらないのでは?」
ユウキが目を丸くし、思わず声を上げる。
ソウタは腕を組んで低く唸った。
「……ありゃ本気でやばい連中だな」
ヒカルは皆を見渡し、にやりと笑った。
「けどな……俺たちも、この映像の頃より強くなってる。自分たちの戦い方をすれば、必ず勝てるさ」
その言葉に、仲間たちはうなずいた。
街の喧騒はますます大きくなり、祭りはクライマックスへと向かっていく。
そして翌日――ついに、ワールド大会「ダンジョンキングオーダー」が幕を開けるのだった。
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