第74話 祝賀会
扉が開かれると同時に、豪奢な大広間が目に飛び込んできた。天井には大きなシャンデリアが輝き、壁には王家の紋章が刻まれた旗が並んでいる。列席する貴族や他ギルドの面々が、一斉にルミナスブレイブへ視線を向けた。
「――皆の者、彼らがルシフェルを討伐し、我が国の王女を救った勇者たちである!」
国王の声が響く。場内に拍手が広がり、やがて歓声となって大広間を満たした。
「うわぁ……本当にお姫様を助けたんだね!」
「ルミナスブレイブってあの若いパーティだろ? 信じられない……!」
人々の囁きが、誇りとなって仲間たちの胸に届く。
華やかな料理が並ぶテーブルを囲み、仲間たちは思い思いに杯を傾けた。
ソウタは周囲のギルドマスターたちに囲まれ、いつの間にか「若きギルマス談義」の中心となっている。真面目に耳を傾けるその姿に、双子のチャランとポランが「かっこいい!」と目を輝かせていた。
ユウキは他国の魔術師から「同時魔法の秘訣」をしつこく尋ねられて困惑しながらも、丁寧に答え続けている。まだ幼いはずの彼が堂々と受け答えをしている姿に、大人たちも舌を巻いていた。
レナは人知れず視線を巡らせていた。隣国ブルーシー王国の一団の中に「黒姫」と思しき影を見つけたのだ。漆黒のドレスに身を包んだ女性――咲。その眼差しがこちらを射抜いたとき、レナの心臓が大きく跳ねた。
「……気をつけないと」
そう小さく呟き、ヒカルの方へ視線を向ける。
そのヒカルは、壁際でワイングラスを手にしながら静かに全体を見渡していた。
人々の笑顔。仲間の誇らしい姿。これこそ自分が望んだ景色――。だが、その胸の奥では、次なる戦いの舞台がすでに形を取り始めていた。
そんなヒカルのもとに、ナオが歩み寄る。淡いドレスに身を包んだ彼女は、戦場で見せる鋭さとは違い、どこか儚げな美しさを帯びていた。
「……ヒカル」
「どうした、ナオ」
少しの沈黙の後、ナオは柔らかく微笑んだ。
「ありがとう。私……あの戦いで、また一歩進めた気がする。あなたがいたから」
ヒカルは一瞬、言葉に詰まる。だがすぐに口元を緩めた。
「俺だけの力じゃない。お前が、自分で踏み出したんだ」
視線が重なり合う。互いの心に芽生えたものを、まだ名前にすることはできない。だが、その温かな感情は、確かにそこにあった。
やがて楽団が祝奏を奏で、祝賀会は最高潮を迎える。人々の歓声と音楽の渦の中、ルミナスブレイブの姿は確かに輝いていた。
――だが、その夜の陰で、次なる闘いの影も、また動き始めていた。
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