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追放された雑魚剣士、実は最強ゲーム覇者でした。~記憶を取り戻した俺はチート知識で世界をぶっ壊す~  作者: 中瀬
第一章 ワールド覇者編

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第71話 神裁

砂塵が渦を巻き、耳鳴りのような静寂が一瞬、その場を支配した。

――ユウキの放った炎の小惑星群が着弾した場所は、光と熱と音の一点となり、あたりは濃い土埃に覆われていた。


しばらくの、息の詰まる間。やがて風が吹き、舞い上がった塵が落ち始める。視界が少しずつ戻ってきて、皆の視線は一斉に中央へと注がれた。


そこに─ルシフェルが立っていた。全身は焦げ、衣は裂け、魔装バリアはひびだらけ。だが女は生きている。血と黒い瘴気を浮かべ、顔には不敵な笑みを残していた。


「――あの女ぁああああっ!」


ルシフェルの怒声が谷を震わせる。最後の力を振り絞るように、彼女は掌から異常な光線を放った。矢のような速さで、標的はナオの方向へ一直線に伸びる。


「ナオ!」


叫びと同時、リリカとリュウがナオに覆いかぶさり、二人はナオを庇って光線を受けた。光は皮膚をえぐり、二人は勢いよく吹き飛ばされる。


血煙とともに倒れ伏す二人の姿が見えた。ナオは地面に転がっているが、かろうじて息はある。意識は戻らない。


ルシフェルは勝ち誇ったように、高らかに笑う。だが、その口元に浮かぶ笑みは不吉で、すぐに勝利をかみしめるような嗤いへと変わる。


「形成逆転だ。ふははははは!天使の血を継ぐ者はこれでいなくなった。」


――しかし、ルシフェルの昂ぶりは長くは続かなかった。彼女の体はボロボロだ。魔装バリアが再形成されようと、傷は深い。黒い瘴気が体を覆う、その瞬間、ルシフェルは自分の腹に深々と突き立てられた長剣の感触に気づく。


「ばかな……いつの間に....一体、なぜ……」


天使の血を継ぐものがいなくなった今、魔装バリアを貫通できるものはいないはずであった。


剣を突き刺したのはヒカルだった。白い服の裾は砂にまみれ、息を切らしているが、剣は確実にルシフェルの胸に突き刺さっている。ヒカルのスキル"神裁"だった。


「悪いな、ここでトドメを刺させてもらう。」


ヒカルの声は静かだが、そこに揺らぎはない。刃先からは不自然なまでの冷たさと光の輝きが漏れている。


ルシフェルの瞳が、剣に映る光を見据える。その口が震え、信じられないといった表情を浮かべる。


「こ、これは……確定ダメージか……そんなものがこの世界に? 人間界にも、悪魔や天使の世界でも聞いたことがない……お前は一体――」


その言葉は、ルシフェル自身の驚愕だ。確定 —— つまり防御や魔装で無効にできない、直接的な一撃。ルシフェルの体に差し込まれた刃は、彼女の再生やバリアを無視して深く突き刺さり、長い呻きとともに瘴気を撒き散らす。


レナはその光景を見逃さなかった。胸の奥を、何か冷たいものが貫いたかのような感覚。ヒカルの所作、そしてその剣の仕方に、レナはふと確信めいたものを抱く。


(――やはり、ヒカルには何かある。他の誰とも違う、隠されたものが。だが、それが何なのかはまだ掴めない……)


ルシフェルは苦悶の声を上げ、そして黒い霧となって身体を崩し始めた。その瘴気は、ヒカルの剣の周囲で弾け、やがて濃い煙のように広がる。数秒の静寂のあと、黒い霧は風に乗って、ぱっと散った。


「倒せたのか……?」ソウタが声にならない声を漏らす。胸に手を当て、まだ震えている。


ヒカルは剣を引き抜き、砂と血の混じった地面を見据えてから、短く答えた。


「たぶんな……とりあえず、いなくなった。」


その言葉は断定ではない。どこか慎重な余韻を残しつつも、確かな安堵が混ざる。仲間たちは一斉に駆け寄る。リリカとリュウの状態を確認し、レナはすぐに膝をつき、治癒の詠唱を始めた。


「リュウ、リリカ、しっかりして! 私は…私が必ず助ける!」


レナの声は震えているが詠唱はぶれない。光の輪が二人を包み、血色が戻りつつある。ナオの胸元にも優しい手があたり、ゆっくりと呼吸が整うように見える。だが、ナオの目はしばらく開かなかった。


ユウキは額に汗を浮かべ、まだ青白い顔で呟く。


「皆さん、僕の魔力も限界に近いです……。レナさん、ありがとう。」


ソウタはほっと息をつきつつ、ミナに視線を送る。その瞳は安堵の感情だ。


「みんな……よくやったな。ナオ、はやく意識戻れよ。」



ミナは膝をついて、まだ震える手でナオの髪を撫でる。普段の軽口は消え、ただ静かに祈るような表情だ。


ルシフェルが消えた場所を、ヒカルは改めて見つめた。胸の中に、前世の記憶がふとよぎる。ルシフェル――あの存在がエンドコンテンツの一角であったこと。だが、今は語るべき時ではない。彼は仲間の無事を何より優先する。


――きっとなんとかなる。


ヒカルはそんな自分の口癖に、小さく笑みを浮かべた。だが、その瞳には以前よりも鋭い光が宿っている。世界はまだ終わってはいない。弱った敵が去れば、次に来る影はもっと大きいかもしれない。だが、ルミナスブレイブはここにいる。仲間とともに立ち上がることを、彼は改めて胸に誓った。

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