第64話 修行の完成
郊外の森にある小屋。その広場で、ナオは両親リュウとリリカの監督のもと、何度も神魔覚醒状態を繰り返していた。
「はぁ……はぁ……!」
紅い光がナオの体を包み、闇と光が混じるようなオーラが迸る。だが、維持は数十秒が限界で、力を抑えきれず暴走しかける。
「ナオ、深呼吸しろ。力を制御するのは、力そのものじゃない。お前の心だ」
父リュウの低い声が響く。
「そうよ。恐れないで、受け入れるの。力はあなた自身の一部なんだから」
母リリカはやわらかく、しかし強く言い聞かせる。
ナオは再び目を閉じ、暴れる魔力を必死に鎮めようとした。だが、何度繰り返しても失敗し、地面に膝をつく。
一方、その横で、ヒカルもまた修行を続けていた。
彼の狙いは――ゲーム時代に封じていた“隠しコマンド”の技を、この世界でも再現すること。
「……あの頃は、ボタンを押すだけで発動できた。でも今は……」
ヒカルは木剣を構え、無数のイメージを頭に描く。入力コマンドを感覚へと落とし込み、自分の魂に刻むように――。
何度も失敗を繰り返した末、ある瞬間、空気が変わった。
「……来た!」
光が迸り、彼の剣先に神聖な輝きが宿る。
新たなスキル
ヒカルが身につけた技は二つ。
《神裁》
相手の防御や耐性を一切無視し、確定でダメージを与える神罰の一撃。悪魔にしか通じないはずの「リリカの特攻」に匹敵し、彼ひとりでも悪魔を討てる切り札となる。
《神化》
わずか3秒間だが、絶対的な防御を得る無敵状態。しかし発動後は10秒間神化はできない――。7秒間は無敵ではない状態となるわけだ。タイミングを誤れば死を招く諸刃の剣だ。
「……ふぅ。これで……少しは、この世界に来た意味を果たせる」
こういう知識を使わないとな。ヒカルは深く息を吐き、汗を拭った。
もちろん、仲間に「ゲームの隠しコマンドで」とは言えない。彼は「なんとなく感覚でできるようになった」とごまかすつもりだった。
訓練の成果
日が暮れかけたころ。
再び神魔覚醒を試みたナオのオーラは、以前よりも安定していた。暴走しかけても、両親の言葉を思い出し、自力で制御することができたのだ。
「……やっと……少しは、掴めてきたかも」
肩で息をしながらも、ナオの瞳は決意に満ちていた。
リュウは無言で頷き、リリカはそっと娘の肩に手を置く。
「もう大丈夫ね。約束の宿へ行きましょう。みんなが待っているわ」
ヒカルとナオは互いに視線を交わし、うなずいた。
こうして、二人はリュウとリリカと共に、城下町の宿へ向けて歩み出すのだった。
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