第62話 ユウキの修行 ― 時を掴む者
時空魔導士ショーンの前に立ち、ユウキは深呼吸をした。
「……お願いします、僕に時空魔法を教えてください」
老練の魔導士は静かに目を閉じ、頷いた。
「いいだろう。ただし――甘くはないぞ。お前の仲間を守りたい心が本物なら、必ず突破できる」
一日目 ― 初挑戦
森の奥深く、ショーンが結界で隔離した修練場。
「さあ、やってみろ。時を縛る言葉を心に刻め」
老魔導士の言葉を受け、ユウキは息を整えた。
「……僕にできるはずだ……! 《クロノ・ストップ》!」
――しかし、何も起きない。風は吹き、鳥は鳴き、世界はただ過ぎていく。
「くっ……また失敗か」
ショーンは首を振った。
「魔力はある。だが、心が散っている。仲間を思う気持ちが強すぎて、逆に時の流れを乱しているのだ」
その夜、ユウキは焚き火の前で、拳を握りしめた。
(僕は……守りたい。なのに、その気持ちが足を引っ張ってるのか……?)
二日目 ― 小さな兆し
再び挑戦。
「――《クロノ・ストップ》!」
今度は、目の前に舞い落ちた枯葉が、一瞬だけ震え止まった。
「止まった……! ほんの、コンマ一秒だけど……!」
ショーンの杖が地面を叩く。
「それで十分だ。その一瞬を感じろ。止まったのは、世界ではない。お前の“覚悟”が揺るがなかった証だ」
ユウキは汗を拭いながら、深く頷いた。
三日目 ― 限界の壁
何度も挑戦し、数秒間だけ停止させることに成功する。だが、連発はできない。
「……だめだ。すぐに魔力が切れてしまう」
荒い息を吐くユウキに、ショーンは厳しい視線を向ける。
「それは当然だ。時空魔法は、世界と対話する魔術だ。無理に押し込めば、反動で魔力を消耗する」
ユウキは膝をつき、悔しさを噛みしめた。
「僕には……まだ足りないのか……」
四日目 ― 覚醒の気づき
修行の合間、ユウキはふとショーンに尋ねた。
「先生……どうしてあなたは、あれほどの同時魔法を操れるんですか?」
ショーンは目を細め、夜空を仰ぐ。
「同時に操っているのではない。重ねているのだ」
「……重ねる?」
ショーンは両手を広げ、魔法陣を二重に描いた。
「複数の流れを“同時”に意識するのは人には難しい。だが、一つの旋律の上に和音を重ねるように、魔力のリズムを合わせれば……自然に重なる」
ユウキはハッとした。
(僕はいままで、力ずくで同時に詠唱しようとしていた……でも、“重ねる”感覚なら……!)
五日目 ― 希望の芽生え
翌日。
ユウキは深呼吸し、二つの魔法を重ねるように意識した。
「――《フレイム》!」
「――《アイスランス》!」
轟音と共に、火炎と氷槍が同じ軌道上に生み出される。互いに相殺するかと思いきや、わずかに噛み合い、赤と青の光が交錯した。
「……できた! 二つが……同時に!」
ショーンは微笑む。
「その感覚を忘れるな。力ではなく、調和だ。同時魔法数を増やす鍵はそこにある」
ユウキは胸を高鳴らせながら頷いた。
(これなら……もっと伸ばせる。僕は必ず……仲間を守れる時空魔導士になる!)
数日間の修行を経て、ユウキは 短時間の時止め(最大5秒) と 二重魔法の安定発動 を習得。
さらに「魔法を重ねる感覚」というヒントを得て、これから同時魔法数を飛躍的に伸ばす足掛かりをつかんだのだった。
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