第61話 レナの修行 ― 光の中で芽生える想い
王都・大神殿。
その奥深く、白銀の封印が施された修練場で、レナの修行は始まった。
師は、白姫の僧侶・早雲。
僧侶であれば誰もが憧れる、治癒と蘇生の神髄を極めた男である。
初日 ― 奇跡の扉は遠く
「蘇生魔法――《奇跡の復活》」
レナは両手を掲げ、魔力を流し込む。
目の前の試練像――模擬戦で倒れた仲間を再現する幻影――に光を注ぐが、反応はない。
「……くっ」
額から汗が滴る。魔力の消耗は激しいのに、対象は蘇らない。
「焦るな、レナ。奇跡は力でねじ伏せるものではない」
早雲は柔らかく諭すが、レナは唇を噛んだ。
「……わたしが……守れなかったら、意味がないのに!」
彼女の胸には、かつて仲間を守れずに失った記憶が重くのしかかっていた。
二日目 ― 魔力の限界
「《MPリサイクル》!」
自らの生命を削り、仲間へ魔力を渡す技。
だがレナの体は悲鳴を上げ、彼女自身が倒れ込んだ。
「はぁ……はぁ……だめ、全然続かない……」
早雲は回復を施しながら首を振る。
「自分を犠牲にするだけでは、仲間を救えぬ。命を削る覚悟と、同じだけの“強い想い”が必要だ」
レナは拳を握りしめ、浮かぶのは仲間の顔。
ユウキの真剣な眼差し、ナオの明るい笑顔、ミナの自由さ、ソウタの大声――そして、ヒカルの背中。
その姿を思い浮かべると、胸が熱くなり、心臓が不規則に跳ねた。
(……わたし、なんでこんなに彼のことを……?)
三日目 ― ヒカルの影
休憩の合間、早雲にぽつりと聞いた。
「早雲さん……ヒカルって、妙にいろんなことを知ってますよね」
「ふむ、そうだな」
早雲は目を細め、静かに続けた。
「まるで、この世界の理を外から覗き込むような……そんな口ぶりをすることがある」
レナははっとした。
「まさか……この世界と、関わりのある別の世界から来た……?」
「断定はできぬ。だが、転生者という存在は昔から伝承にある。
何度も生まれ変わり、役目を果たす者がいる、と」
ヒカルの後ろ姿を思い浮かべる。
誰よりも冷静で、誰よりも不器用で、それでも仲間を導く背中。
レナの胸に、不可解なざわめきが広がった。
(……だから、惹かれてるの? それとも……もっと別の理由?)
四日目 ― 奇跡の光
再び挑む。
「――《奇跡の復活》!」
これまでと同じ光。だが今度は、心の底から願った。
(お願い……もう二度と、大切な人を失いたくない!)
光が溢れ、試練像が蘇る。
成功。
レナは膝をつき、涙が溢れた。
「やっと……やっと掴めた……!」
早雲が静かに頷く。
「今のお前ならできる。仲間を信じ、自分を信じたからこそだ」
五日目 ― 命を繋ぐ力
最後の修行。
「《MPリサイクル》!」
今度は自身の生命を削りながらも、同時に魔力の循環を意識する。
己の体は限界に近づくが、それを恐れず受け入れた。
仲間の笑顔を思い浮かべながら――。
結果、魔力の流れが安定し、複数人へ同時に供給が成功した。
修行の終わりに
「……やっと……」
レナは膝に手をつき、息を整えた。
「《奇跡の復活》と《MPリサイクル》――両方とも習得、おめでとう」
早雲は優しく微笑む。
レナは汗に濡れた髪を払い、ふと夜空を見上げる。
(……ヒカル。あなたの秘密に触れたい。
でも、それ以上に――あなたを、守りたい)
胸の奥で芽生えた感情は、彼女自身もまだ正体を掴みきれなかった。
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