第58話 神魔覚醒儀式
王城の奥深く。かつて神魔大戦の頃に封じられたという神殿跡。
古代の魔法陣が刻まれ、中央には淡い光を放つ泉が湛えられていた。
リュウとリリカが両脇に立ち、ナオをその泉の中央へ導く。
仲間たちは円の外側から見守る形だ。
リリカ(母)は柔らかく微笑むが、その瞳には強い決意が宿っていた。
リュウ(父)は双剣を背に構え、儀式を守るかのように背筋を伸ばしている。
儀式の説明
リリカ:
「ナオ……あなたの血には、私(天使)の加護と、リュウ(悪魔)の血統が宿っている。
この二つを同時に受け継ぐ存在は、歴史の中でも極めて稀。
覚醒の儀は、己の中の“光”と“闇”を対峙させ、受け入れることから始まるの。」
リュウ:
「……無理に戦う必要はない。ナオ、お前が望まぬなら、俺たちが前に出る。
だが――お前が仲間と共に歩むなら、ここで覚醒しろ。お前の意思を見せてくれ。」
ナオ:
「……パパ、ママ。わたし……仲間と一緒に戦いたい。
みんなが戦っているのに、わたしだけ守られるなんてイヤ。
だから、やる。絶対に覚醒してみせる!」
覚醒の試練
泉の光が強まり、ナオの身体が宙に浮かぶ。
やがて目の前に二つの存在が現れる――
黄金に輝く翼を持つ“天使の自分”、紅黒の炎を纏う“悪魔の自分”。
天使の声:
「人を守れ。力を与えよ。慈しみを選べ。」
悪魔の声:
「人を凌駕せよ。力を奪え。己を選べ。」
二つの自分の声が同時に響き、ナオの心を引き裂く。
ナオ:
(守る……でも戦う。与える……でも奪う。
どっちかを選ぶんじゃない。どっちも、わたしの力なんだ!)
古代神殿の泉の中で、ナオは光と闇の自分と対峙する。
その意思で二つを受け入れ、力を一度は引き出すことに成功する。
背からは光の翼と闇の炎の片翼が同時に生まれ――しかし、その瞬間。
「――っ! ぐぅぅぅ!」
光と闇が反発し合い、ナオの身体を切り裂くような激痛が走った。
魔力の波が暴走し、泉の水が激しく揺れ、結界が軋む。
リリカ:
「ナオ! 無理に均衡を保とうとしないで!」
リュウ:
「力を出すな、抑えろ! いまはまだ、お前の器が追いついていない!」
ナオ:
「だ、だいじょうぶ……! みんなを助けたいの! わたし、戦える……っ!」
必死に叫ぶナオだが、その体は震え、膝から崩れ落ちる。
リリカは駆け寄り、娘を抱きしめる。
「……えらいわ、ナオ。でも、あなたの力はまだ危うい。
使えば仲間を守るどころか、自分を失ってしまうかもしれない。」
リュウも膝をつき、額に手を当てる。
「焦るな。お前の力は必ず大きな武器になる。
だがいまは、その片鱗を掴んだだけで十分だ。」
仲間たちは見守りながら息を呑む。
ヒカル(腕を組みながら):
「……チート級の力だが、制御できなきゃ自滅するだけか。
だが“未完成”だからこそ伸びしろは無限大だな。」
ユウキ:
「ナオ、焦らなくていい。力は必ず追いつく。
ぼくたちの魔導訓練でも“無理をしない勇気”が一番大事なんだ。」
レナ(厳しくも優しく):
「戦いは力だけじゃないわ。支える仲間がいれば、不完全でも十分。
……それを忘れないことね。」
ソウタ(ガッツポーズしながら):
「ナオちゃんはナオちゃん! 不安定でも、一緒に戦えれば最高だろ!」
ミナ(うるうるしながら):
「うん……! ナオっち、無理しすぎないで。倒れるの、見たくないもん。」
ナオは力なくも笑う。
「……みんな……ありがとう。
まだ不安定だけど……でも、絶対に諦めない。
わたし、ちゃんと強くなるから!」
こうしてナオは “未完成の覚醒剣士” として力を得る。
だが同時に、その不安定さが、今後の大きな伏線となっていくのだった――。
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