第57話 神魔大戦
◆4000年前 ― 神魔大戦の真実
遥か昔――今から4000年前。
まだ人と魔、そして天が、ぎりぎり均衡を保っていた時代があった。
人は力を求め、魔は支配を求め、天は秩序を守ろうとした。
しかし三者の思惑はやがて衝突し、歴史に刻まれる大戦――「神魔大戦」が起きたのだ。
◆禁じられた契約
その戦乱のただ中。
一人の悪魔が、人間の女性に心を奪われた。
彼の名はバルザール。
地獄の軍勢を率いる将でありながら、敵国の村に住む少女を愛してしまったのだ。
「愚かだと笑うがいい……だが、俺はこの娘を守りたい」
彼は禁忌を犯した。
人と悪魔の契約を越え、彼女と結ばれ、子をなした。
その血筋が――後に「リュウ」へと繋がる。
悪魔の血を継ぎながらも、人として生まれた子供。
その存在は戦場における「異端」でありながら、確かに愛の証でもあった。
◆天と人の盟約
一方で、天にもまた似た物語があった。
戦火に晒され、滅びかけた小国に、一人の天使が舞い降りた。
彼女の名はセラフィーナ。
白き翼を持ち、人々を守るため戦場に立ったが……その国の若き王に心を寄せてしまった。
「愛は堕落か……それでも私は、この人と共に歩みたい」
天の掟に背き、彼女もまた人と結ばれた。
その子孫こそ――「リリカ」である。
天の血を受け継ぎながら人の世に生まれた者。
彼女の系譜は「祝福」と「呪い」の狭間で受け継がれていった。
◆禁忌の子ら
やがて大戦は終わりを迎え、悪魔も天使も人の前から姿を消した。
だが、その時に残された二つの血脈――
悪魔と人の子孫。
天使と人の子孫。
それぞれはひそやかに人の歴史の中を流れ、時に迫害され、時に崇められ、細々と生き続けた。
やがて4000年の時を経て。
現代に至り、その血脈の末裔が――
悪魔の力を嗣ぐ者「リュウ」。
天使の力を嗣ぐ者「リリカ」。
二人の双剣士として、同じ時代に再び姿を現したのだ。
◆ルシフェルとの因縁
「なるほど……」とヒカルは唸った。
「だからリュウは悪魔の居所を感知できるのか」
リュウは頷く。
「俺の血が、ルシフェルの波動に反応してる。まるで……遠い親戚に呼ばれているみたいだ」
リリカもまた瞳を伏せた。
「そして、私の血は……天界に近い。だから、ルシフェルを斬る剣になれる」
4000年前の禁忌の愛が、今、この瞬間の戦いへと繋がっている。
運命の円環は、再び回り始めたのだ。
王の間に沈黙が落ちた。
リュウとリリカが自らの血の宿命を語り終えたとき、誰もが息を呑んでいた。
「……悪魔と天使の血を継ぐものは、それぞれの存在を感じ取れる」
リュウの声は低く、確信を帯びていた。
「俺はルシフェルの居所を――血が導くように理解できる。そして、リリカが討つ剣となる」
リリカも静かに続ける。
「だが、なぜ4000年の沈黙を破り、今になって悪魔が現れたのか……その答えは一人の人間にある」
名が告げられる。禁忌の魔術師・カイ。
幾度もルシフェルを召喚し続けたことによって、世界の境界は歪みを増し、
ついにはルシフェル自身が自由に行き来できるほどの「裂け目」と化した。
「ルシフェルは、再び人の世界を乗っ取ろうとしている」
リュウは険しい目をした。
「そのためには、この世界の内部から境界を広げなければならない。依り代として――一万人の命が必要なんだ」
その場の空気が凍りつく。
「……そんなこと、絶対にさせない」ナオが震える声で言った。
だがリュウは首を振った。
「悪魔を討てるのは天使の力のみ。天使を討てるのは人。人を討てるのは悪魔。……この循環こそが神魔大戦で示された理だ」
「つまり……今、ルシフェルを止められるのはリリカだけ」ヒカルが唸る。
「ナオ……君はまだ覚醒していない。血は眠ったままだ」リリカは妹のように見つめ、優しく言った。
「焦らなくていい。ただ、あなたにもできることがある」
◆修行の誓い
ランド王は剣を掲げ、王命を下した。
「ルシフェルを討て――ルミナスブレイブよ! 白銀の双剣よ! この国を救ってくれ!」
しかし――。
ヒカルは冷静に言った。
「今の俺たちでは、まだ勝てない。ルシフェルは、これまでの敵とは次元が違う……修行が必要だ」
皆の瞳に炎が灯る。
各々の修行先が決まった。
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