第52話 余韻
「ふぅ~~……っ!」
ナオが椅子にどさっと座り込み、大剣を壁に立てかけた。
「いやぁ……もう、全力出しきっちゃった感じするよ! えへへ」
ミナがドヤ顔で指をピースにしてみせる。
「アタシの縛り、バッチリ決まったっしょ? あんなん拘束できるタイミング一回きりとか、ヤバかったけど~」
「でも、その一回が勝負を決めましたね」
ユウキが頷く。「僕も……6連同時詠唱、あそこまで滑らかにできるとは思ってませんでした」
少し誇らしげに笑う姿に、仲間たちも思わず拍手を送る。
「なによユウキ、やればできるじゃない」
レナはにやりと笑い、彼の頭を軽く小突いた。
「でも次は、暴発させないようにしなさいよ。あんたが焦ったら、全員道連れなんだから」
「う……わ、分かってますって!」
ソウタは腕を組み、全員を見渡した。
「なぁ、見ただろ? 俺の“必殺技無効”。あれで砲撃をキャンセルできたから、叩けたんだぜ? 」
「ソウタが“信じろ”って言ったとき……正直、心臓バクバクだったわ」
ナオが笑いながら頬をかく。
「でも、信じてよかった! ほんと、最高の瞬間だった!」
「……俺たちの強さは、誰か一人の力じゃない」
ヒカルが静かに言葉を紡ぐ。
「一人じゃ絶対に突破できなかった。だからこそ、ここまで来れたんだ」
その言葉に、一同はしばし沈黙し――そして自然と笑みがこぼれた。
「ルミナスブレイブ……マジで最強かも!」
ミナがニカッと笑う。
「いけるっしょ、このまま優勝!」
チャイが小さな体でテーブルに登り、両手(両前足?)を高く上げた。
「みんな! つよつよ! チャイ、ほこり!」
「よっしゃ、次も勝つぞー!」
全員で声を合わせ、控室は笑いと熱気に包まれた。
歓声と熱気の余韻が残る控室。
笑い合っていた空気が、ふとした沈黙で変わった。
「……次、白銀の双剣か」
ヒカルの言葉に、ナオがはっと顔を上げた。
「……」
彼女の表情から笑みが消える。大剣を握る手が、無意識に汗ばんでいた。
「ナオ」
ソウタが優しく呼ぶと、ナオは少し視線を落としたまま呟いた。
「……ずっと、避けてきたんだ。お父さんとお母さんに、わたしが冒険者やってるって言うの」
「でも、もう避けられないわね」
レナが静かに言う。その声は冷静だけど、優しさをにじませていた。
「彼らは伝説の双剣。あなたがどんなに頑張っても、比較されるのは避けられない」
「……分かってる」
ナオはぎゅっと拳を握る。
「でも、勝ちたいんだ。――“親に勝つため”じゃなく、“ルミナスブレイブのナオ”として」
その言葉に、一同が頷いた。
ミナが腕を組んで、にやっと笑う。
「アタシも似たようなもんっしょ。……母ちゃんは伝説の拘束士。たぶん今でも現役で最強」
「でもね――アタシはアタシ。漫画で学んだヒーローみたいに、自分の縛りで道を拓いてやる」
ユウキが珍しく声を強めた。
「ミナさん……ナオさん……大丈夫です。きっと僕たちが証明できます。家族の影を越えて、仲間として戦えるって」
ソウタが豪快に笑って、二人の肩を抱く。
「お前らの親は確かにすげーよ。でもな、俺が保証する! “今のルミナスブレイブ”の方がもっとすげー!」
ナオは驚いたように顔を上げ――やがて小さく微笑んだ。
「……ありがと。みんなと一緒なら……わたし、怖くない」
ミナもドヤ顔で頷く。
「いけるっしょ! 母ちゃんだろうがギルマスだろうが、縛ってみせるから!」
チャイが尻尾をパタパタさせながらぴょこんと飛び出した。
「ナオ、ミナ! かぞく、つよつよ。でも……みんなも、つよつよ! チャイ、しんじる!」
その幼い声に、控室の空気がまた温かくなる。
ヒカルはみんなの様子を見て、静かに決意を口にした。
「親でも伝説でも関係ない。俺たちは“俺たちの戦い”をする。それだけだ」
そして、控室の空気は再び一つにまとまった。
次に待つのは、血の繋がりを超えた――世紀の親子対決。
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