第44話 覇者の集い
ダンジョンキングオーダーの開始を前に、各ギルドは一つの大きな控室へと集められていた。
石壁に囲まれた広いホール。重々しい扉が開くたびに、観客席からの熱気が微かに流れ込んでくる。
ヒカルたちルミナスブレイブは、その一角にまとまって腰を下ろしていた。
そこへ誰かが入ってきた――
「……ナオ」
聞き覚えのある声が響いた。
振り向いたナオの視線の先には、双剣を背にかけた屈強な男と、白銀の髪をなびかせた美しい女性が立っていた。
双剣のリュウと、白銀のリリカ――ナオの両親だ。
ナオ(硬直したように)
「……父さん、母さん……」
リュウは腕を組み、いつもの鋭い目つきで娘を見据える。
リリカは柔らかい笑みを浮かべながらも、その眼差しは真剣だった。
リュウ
「噂は聞いたぞ。ソロオーダーで二位を取ったそうじゃないか」
リリカ
「もう子どもじゃないわね……立派になったわ、ナオ」
ナオはぎゅっと拳を握りしめる。
ナオ
「……まだ、二位です。だから、ここで一位を取ります」
リュウはわずかに口元をゆるめ、鼻を鳴らした。
リュウ
「ほぉ、言うようになったな。だったら……ここで直接証明してみせろ」
ナオ(息をのむ)
「……直接?」
リリカが微笑んで答えた。
リリカ
「そう。私たち“白銀の双剣”も、今回は本気で優勝を狙ってるの。
親子だからといって、容赦はしないわよ?」
ナオは一瞬ためらったが、やがて強い目で見返した。
ナオ
「……望むところです!」
その横で――もうひとつの邂逅があった。
黒いローブを羽織った女性が、すっと近づいてくる。
その瞳は鋭く、それでいて底知れない優しさを秘めていた。
伝説の拘束士、アリス。ミナの母だ。
アリス(微笑み)
「ミナ。……随分と派手にやってるじゃない」
ミナは一瞬、目を泳がせ、次にドヤ顔を作った。
「ま、まぁね! アタシ、いけるっしょ精神でやってるから!
てか、ママこそ、相変わらず最強って感じじゃん?」
アリスは小さく笑い、娘の肩に手を置いた。
「最強なんて言葉はどうでもいい。
大事なのは、仲間とどう勝つか……あなたも、それが分かってきたみたいね」
ミナの目がわずかに潤む。
でもすぐにいつもの調子を取り戻し、胸を張った。
「当たり前っしょ! アタシ、ルミナスブレイブの超重要戦力だから!
……ママに負けない拘束士になってやるから、見てなよ!」
アリスの表情がわずかに和らぐ。
「ふふ……いい顔をするようになったわね。
でも油断しないで。私たちは“伝説のヒストリー”。容赦はしない」
ソウタは少し離れた場所から、二人のやりとりを見ていて、胸が熱くなっていた。
ソウタ(心の中で)
(ミナ……ちゃんと、母さんに胸を張れてるじゃないか)
レナが小声でヒカルに耳打ちする。
「……すごいね、ナオちゃんもミナちゃんも。
両親があんな伝説の冒険者だなんて」
「ああ……でも今は、彼女たちが俺たちの仲間だ。
伝説の影に飲まれるわけにはいかない」
重々しい空気の中、古参ギルドの面々と、ルミナスブレイブの視線が交錯する。
親子の情はある。だが、それ以上に戦場では容赦のない敵。
オーダーが始まれば――血の繋がりも、思い出も関係ない。
ただ、勝利を目指してぶつかり合うだけだ。
ナオと両親、ミナと母の再会の余韻が残る控室。
その空気を破るように、重い扉が再び開かれた。
鮮やかなマントを翻して入ってきたのは、トラベラントの二人――
レイ(時空魔導士)とアラン(魔法使い)。
レイ(冷たい笑みを浮かべ)
「やあ……ルミナスブレイブ。随分と賑やかな顔ぶれになったな」
アラン(肩をすくめて)
「ほんとほんと。伝説の親たちと並んで、どうやって勝つつもりなんだか」
ユウキがすぐに食ってかかる。
「勝つのは、ぼくたちです! ぼくたちの魔法連携、なめないでください!」
レイ(薄笑い)
「ほう……その自信が、いつまで持つかな」
ヒカルは一歩前に出て、冷静に言い返す。
「試合で証明する。それで十分だ」
レイはその言葉に一瞬目を細め、無言で通り過ぎた。
続いて現れたのは、清楚なローブを纏った二人――
白姫のさとみとひとみだ。
さとみ(優雅に微笑み)
「ルミナスブレイブの皆さん、お久しぶりですわね。前回は健闘なさいました」
ひとみ(にやっと笑って)
「でも次は、私たちが上に立たせてもらうわ」
レナ
「そう簡単にはいかないわよ。こっちだって、修行してきたんだから」
ひとみ
「ふふ……その自信、楽しみにしてる」
お互いに挑むような視線を交わし、火花が散る。
最後に入ってきたのは、豪快な笑い声と共に現れたデビルズの面々。
シバ(拘束士)、リナ(チアガール)、スイ(魔法使い)、カテ(僧侶)。
シバ(手を振って)
「おー、レナ! ミナ! 相変わらず元気そうだな!」
ミナ(ドヤ顔で)
「当たり前っしょ! アタシ、めっちゃ修行して超強くなったから!」
シバ(にやり)
「へぇ……そりゃ楽しみだ。オレが教えたこと、ちゃんと活かしてんだろうな?」
ミナ
「もちろん! てか、シバよりカッコよく縛れる自信あるし!」
シバは一瞬むっとするが、すぐに大笑いする。
シバ
「はっはっは! いいねぇ! だったら手合わせ楽しみにしてるぜ!」
一方で、リナがソウタに声をかけた。
リナ
「ねぇソウタ君。今回も応援するの?」
ソウタ(苦笑しつつ)
「もちろん。ただ、今回は応援だけじゃなくて、攻撃もする予定だ」
リナ(驚いたように)
「へぇ! 応援だけでなく火力まで……。やっぱり面白いギルドね、ルミナスブレイブは」
こうして控室には――
トラベラント、白姫、デビルズ、白銀の双剣、ヒストリー、ルミナスブレイブ。
六つのギルドが揃い踏み。
互いの視線が交錯し、火花を散らす。
ヒカルは仲間たちを見回し、小さく言った。
ヒカル
「……これが、世紀の戦いか」
その声に、仲間たちはうなずいた。
緊張と期待、そして燃える闘志を胸に。
まもなく――ダンジョンキングオーダー、パーティ編が幕を開ける。
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