第39話 新たな訪問者
ルミナスブレイブのギルドハウス。ちょうど夕食の時間、ヒカル、ナオ、ユウキ、ソウタがテーブルを囲んでいた。そこへ砂まみれのレナとミナが帰ってくる。
「ただいま〜!」
「おかえり。……二人とも、すごい顔だな」ヒカルが笑みを漏らす。
「アタシ、走り込みで砂漠ダッシュ三百本やらされてさ! もう生命の危機だったんですけど〜!」
「……それでその頭砂だらけなのね」ユウキが苦笑。
「えへへ、でもマジ強くなったっしょ! アタシ、今ならめっちゃ縛れる女だから!」
ナオが興味深そうに身を乗り出した。
「ほんとに? どれくらい?」
「敵が動いた瞬間――ピシャッ! 鎖でガッチリ! そんで鎖にビリビリ流し込んで……ギャーッ! ってね!」
ミナが両手を振り回しながら再現すると、ソウタが吹き出す。
「なにその擬音! でも……頼もしいじゃん」
レナも頷いた。
「私も広範囲雷撃を覚えたわ。雑魚ならまとめて一掃できるくらいの」
「へぇ〜、二人とも火力も伸びたんだな」ヒカルの声に自然と感心がにじむ。
「そう! アタシ、火力玉ももらったし! もう“縛るだけの女”じゃないの! 火力もカンスト、マジで無敵じゃね?」
「はいはい、また出た“無敵発言”。でも……ほんとに、頼れる存在になったな」
ソウタが微笑む。
ユウキも目を輝かせる。
「支援職がここまで前に出て戦えるなんて、すごいです! ルミナスブレイブ、ますます最強ですね!」
盛り上がる仲間たちの中で、ヒカルは静かに二人を見つめた。
――自由に騒ぎながらも必死に成長を掴んだミナ。仲間を支えつつ新たな力を得たレナ。
その姿に、彼の胸の奥にも確かな期待が芽生えていた。
「これで、俺たちは……もっと遠くへ行ける」
小さく呟くと、仲間たちの笑い声がギルドの天井に響き渡った。
◆ギルドハウス・夕食シーン
大皿に盛られた肉と野菜のグリルを囲んで、ルミナスブレイブの面々はワイワイと夕食を楽しんでいた。
「アタシさ〜、修行で毎日砂漠ダッシュしてたせいで、もう足だけムキムキになっちゃったんだけど!」
ミナが笑いながら太ももを叩く。
「はは、でも走るの速くなったよね。今日の席取りも一番だったし」
ユウキが苦笑いを浮かべる。
「てかあんたも、魔法6回分を同時発動とかバケモンじゃん!」
「え、えへへ……!」
和やかな空気の中、ヒカルはふとソウタに視線を送った。ソウタもその目を感じ取り、席を立つ。
「ちょっと外の風、浴びてくるわ」
「俺も行く」
二人はギルドハウスのバルコニーへ出た。街の明かりが遠くに瞬いている。
「なぁ、ソウタ」
「ん?」
「……トラベラントから、うちに来てくれて、本当によかったのか?」
ソウタは少し目を丸くし、それから笑った。
「何言ってんだよ。オレが来た理由、分かってんだろ?」
「……ミナか」
「そう。アイツさ、小さい頃から“世界一の拘束士になりたいんだ〜!”って言っててさ。誰も笑えないくらい真剣だった。オレはその夢を支えてやれる男になりたいと思った。それで修行もしたし、トラベラントにもいた」
夜風に髪を揺らしながら、ソウタは少し遠くを見た。
「でも、アイツってなかなか一歩を踏み出せなかったんだよな。だから、ヒカルがきっかけ作ってくれて……マジ感謝してる。いま、ミナが冒険者としてここに立ってるのが嬉しいんだ」
ヒカルは黙って聞いていたが、やがて真剣な眼差しを向けた。
「……ありがとう。実は、頼みたいことがある」
「ん? なんだよ」
「ソウタ、ルミナスブレイブのギルマスを、お前にお願いしたい」
「は?」ソウタは思わず笑った。
「いやいやいや、オレそんな器じゃねぇよ!」
「一見チャラそうに見えて、一番人を大事にできるのはお前だ。俺はゲームオタクだし、器の大きさはないと思ってる。でもこれからもっとメンバーも増える。挑戦できる依頼も広がる。その中でみんなをまとめる役は、お前が適任だ」
ソウタはしばらく黙っていたが、ヒカルの真剣な目に押され、やがてため息をつく。
「……お前ってヤツは、本気で言ってんだな」
「ああ」
「分かったよ。オレでよけりゃ、やるわ。ギルマスって肩書き、悪くねぇしな」
二人は拳を軽くぶつけ合い、笑った。
◆ギルドハウス・リビング
ヒカルとソウタは全員を集め、話を切り出した。
「実はな、これからギルマスはソウタに任せることにした」
ナオが目を丸くする。
「え、ソウタさんが?」
「マジ?」ミナが爆笑しながら拍手。
「私、賛成よ。まとめ役としては、ソウタが適任だと思うわ。ヒカルはきっと他の事に集中したいんでしょ?」レナが微笑む。
「ぼ、僕も賛成です!ソウタさん、よろしくお願いします!」ユウキも元気に頷いた。
ソウタは照れくさそうに頭をかきながら言った。
「お、おう! これからもよろしくな!」
ギルドハウスのリビングで、皆が笑いながら晩ごはんを楽しんでいると、突然ドアが勢いよく開いた。
「……」
飛び込んできたのは、小さな金髪の少女。セミロングの髪が乱れ、街の子供服は泥だらけだ。泣きはらした目が必死にこちらを見つめている。
ミナがフォークを落とし、目を丸くした。
「ちょ、ちょっと!? 誰!?」
「わたし……チャイ。」
少女は光をまとい、瞬く間に子犬サイズの黄色いドラゴンに変身した。小さな翼をパタパタさせ、琥珀色の瞳で必死に仲間たちを見つめる。
ソウタが驚きの声を上げた。
「お、お前……鉱山都市で見かけた……あの小さなドラゴンか!」
チャイはまた人間の姿に戻った。チャイは8歳くらいの人間の姿で、金髪のセミロングの髪を揺らしながら、少し震えた声で話す。
「えっと……あの、わ、わたしの家族が……カイに捕まっちゃったの……」
「取り逃した禁忌の魔術師カイか…」
ナオが大きな目を見開く。「え、マジ!? 」
ミナも心配そうに寄り添う。「アタシたちがなんとかすっから、心配すんな!」
ヒカルは少し落ち着いた表情で、チャイに向き合った。
「チャイ、君が覚えている場所のことを、詳しく教えてくれ。できるだけ正確に。」
チャイは小さな手を握りしめ、うつむきながらつぶやく。「うん……鉱山都市の外れの、あの暗い洞窟の奥……大きな扉があって……その中に……」
ユウキが目を輝かせる。
「なるほど……その記憶を頼りに、追跡魔法で魔力の残りを探せるはずだ。」
ソウタがヒカルの横で頷く。
「ユウキに任せるか……。追跡魔法なら安全に、正確に場所を特定できるしな。」
チャイの目がぱっと輝く。「え、ほんと!? あの扉のところまでわかるの!?」
ナオが前に出て拳を握る。
「じゃあ今から救出作戦だね、えへへ!」
ミナも興奮気味に声を上げる。
「いけるっしょ! チャイのためなら、絶対成功させるっしょ!」
ヒカルが皆を見渡し、作戦の概要を伝える。
「よし、まずはダンジョンの入口まで接近する。その後、内部はユウキの追跡魔法でカイとチャイの家族の位置を確認。安全を優先して進む。」
ソウタが頷き、
「了解、俺も援護する。」と言った。
チャイは少し人間の姿で背伸びしながら、
「チャ、チャイもついていく……!」と答える。
ヒカルは静かに微笑みながら、言う。
「頼むぞ、みんな。無事に救出して、作戦を成功させるんだ。」
ナオが大きく笑う。
「えへへ、じゃあ行こっか! チャイちゃん、すぐ助けるからね!」
こうして、ルミナスブレイブのメンバーは、チャイの記憶とユウキの魔法を頼りに、鉱山都市の奥深くにあるカイのアジトへと向かう準備を整えた。
いつも読んでくださり、ありがとうございます。
良ければブックマークと評価をお願いします。励みになります。




