第38話 デビルズ修行
◆デビルズ修行編 ― レナとミナ
デビルズの訓練場。荒野を切り開いた広場には、風に揺れる砂埃と鉄の匂いが満ちていた。
「よぉ、レナじゃん。……ってか、お前まだ冒険やってんのか。しぶといな。」
腕を組み、挑発気味に笑ったのはシバ。黒衣に鎖を巻きつけた姿は鋭さを放っているが、顔立ちはまだ幼さを残す十六歳の少年だ。
「シバ……大きくなったわね。あの頃の子供じゃないわ。」
「はっ、ガキ扱いすんなよ。今の俺は“ワールド一”の拘束士だぜ?」
そう言って胸を張る。鼻につく態度なのに、妙に嫌味がないのは、その言葉が嘘じゃないからだろう。
「紹介するわ。こちらはミナ。ルミナスブレイブで拘束士をしてるの。」
レナに促され、ミナは少し緊張気味に一礼した。
「えっと、ミナです。よろしくお願いします!」
シバはじろじろと彼女を眺め、鼻で笑った。
「ふん、悪くねぇ雰囲気してんな。でも拘束士は“敵を縛れりゃいい”って仕事じゃねぇんだ。……わかってんのか?」
「え、えっと……た、多分……」
「多分じゃダメだっての!」
シバはミナの額を指で弾いた。
「拘束士は、火力職に“最高の舞台”を用意する役だ。敵を一か所にまとめ、縛り付けて、“はい、どうぞ!”って差し出す。――腕のある拘束士がいると、剣士でも魔法使いでも、下手でも楽勝で雑魚処理できんだよ。」
「……! なるほど……」
「で、やるなら完璧にやれ。俺の前じゃ、半端は許さねぇからな。」
その日からミナの地獄の修行が始まった。
◆走り込み
「おらぁ、遅い! 足が遅い拘束士とか、ただの飾りだぞ!」
「は、はや……っ! えへへ……やっちゃった、転んじゃった……!」
砂まみれで立ち上がるミナに、シバはあきれ顔。
「バカ。最短ルートを先回りして敵を釣るんだ。拘束士は常にパーティで一番速く動けなきゃ意味ねぇ。移動速度はカンストが当たり前。走り込め、死ぬまでな!」
ミナは毎日、砂漠の岩場を走り続けた。足に重りをつけ、坂道を駆け上がり、息を切らしても止まらない。
◆挑発スキル
「よし、次は“挑発”だ。敵を自分に寄せるオーラを出すんだよ。……ま、普通は門外不出なんだけどな。」
「えっ!? そんな貴重なの教えてくれるんですか?」
「お前、根性はある。……それに、なんか放っとけねぇ顔してんだよ。」
そう言いながらシバは指先から淡い赤い光を立ちのぼらせた。
「こうやってオーラを広げて……“おい、こっち見ろよ”って意識を叩き込む。やってみろ。」
「は、はいっ!」
ミナも真似して集中するが、ただの光がふわっと広がるだけ。
「ぜんぜんダメ! “来い!”って気迫がねぇんだよ!」
「え、えへへ……やっちゃった……」
「笑ってんじゃねぇ! 敵にナメられたら終わりだ。気迫で押し込め!」
叱られながらも、ミナは繰り返し挑戦した。
◆ボス戦訓練
「ボス相手はな、ただ縛りゃいいわけじゃねぇ。“縛れる瞬間”を見極めんだ。」
「瞬間……?」
「そう。攻撃の直後、動きを切り替える前、止まった時。そういう隙を全部拾う。……俺は5秒ごとに縛れる。お前は10秒だろ? でも“時短の指輪”があれば、俺と同じ領域に行ける。」
シバは鎖を投げ、岩に絡ませて一瞬で砕いた。
「この精度、この速さ。……真似してみろ。」
「やっ……!」
ミナの鎖は空を切り、岩にかすりもしない。
「はぁ!? お前、鎖が泣いてんぞ!」
「ご、ごめんなさい!」
「謝るな! 次!」
何度も失敗を繰り返し、ようやく鎖が岩を捕らえた。
「……よし、ちょっとマシになったな。」
「ほんとですか!? えへへ……!」
「ただし甘えるなよ。お前の鎖、威力が足りねぇ。」
シバは腰のポーチから真紅の小さな宝玉を取り出した。
「“火力玉”だ。これを取り込めば攻撃力がカンストする。俺の持ってる分、分けてやる。」
「えっ、そんな貴重なの……!」
「お前が弱ぇままじゃ俺が退屈すんだよ。――強くなれ。」
◆僧侶レナの攻撃魔法
レナは、聖なる光による雷撃を身に着けた。
デビルズの僧侶カテから学んだ。
彼は僧侶という支援職なのに、火力職だらけの魔法職オーダーで9位に入賞するという奇跡を起こした人物だ。
レナの雷撃は広範囲の技だが、比較的簡易的に使える。
威力はそこまでじゃないが、雑魚程度なら殲滅可能だ。
使いどころを工夫すれば、敵の牽制にも使えるだろう。
こうして、ミナもレナも成長を遂げた。
◆時空間ダンジョン
そして、修行の仕上げとして挑んだのは、時空間のダンジョン。
暗闇の洞窟。壁一面に浮かぶ不気味な絵文字が淡く光り、時間の流れを乱していた。
「ミナ、レナ。ここからはお前らだけでやれ。俺は手ぇ出さねぇ。支援職だけでクリアしてみせろ。」
一歩引いたところから、シバが指示する。
「……わかりました!」
「うん、やってみる!」
襲いかかる無数のゴブリンは、レナの広域雷撃で一掃。だがボスの間に現れたのは――。
「時空魔導士の亡霊……!」
亡霊は杖を振り、世界が止まる。気づけば背後に回られ、斬撃を浴びせられる。
しばらく時空魔導士がどこにいるのか特定することができず、苦戦するミナとレナ。
レナが気づく。
「くっ……! 時を止めて三秒……次の停止まで十秒よ!つまり、十秒以内にボスを見つければ攻撃できる。」
ボスが目の前から消えた瞬間、時の停止が行われたと察知したレナは、広域雷撃を自身を中心として、発動した。
すると、レナの雷撃が一閃し、声をあげる亡霊。その声で位置を特定した瞬間、ミナが光の鎖を投げ放つ。
「いっけぇぇ!!」
鎖が亡霊を絡め取り、そこに電撃が走った。さらにレナの雷撃が重なる。
「ぎゃあああああ!!」
もともと、光属性が弱点であった亡霊は絶叫し、光の粒となって消えた。
勝利の瞬間、ミナの手には新たな宝が宿っていた。――「時短の指輪」。
「す、すごい……! 体が軽い……! これなら……!」
「ふっ。やっとスタートラインだな。これで拘束のクールタイムも10秒から5秒に半減する。」
シバは薄く笑った。
「ミナ、レナ。お前ら、俺を超えてみせろよ。……いや、超えられなきゃつまんねぇ。」
「ふふっ、言われなくても!」
「わたし、絶対強くなります!」
シバは苦笑しつつも、誇らしげに二人の背を見送り続けた。
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