第33話 ナオ覚醒
◆ソロオーダー最終日 ― 王都広場
王都ランドの広場は、まるで祭りのような熱気に包まれていた。
最終日、ついに最後の挑戦者が残る。
「次が……ルミナスブレイブのナオ選手!」
アナウンスが響くと、観客の間から温かい拍手が起こった。
だがその拍手にはどこか慰めの色が混じっていた。
「昨日はタイム縮められなかったんだよな」
「新人なのに、よくやったよ」
「もう十分だよ、立派だ」
広場のあちこちで、そんな声が聞こえる。
最終日も同じくらいの記録だろう、と多くの者が思っていた。
――ただし。
ヒカルとユウキの表情だけは、期待で輝いていた。
「やれるさ。お前はナオだ」
「えへへ、当然っ!」
ナオは背中の大剣を叩いて、広場のざわめきを背に受けながら魔法陣に足を踏み入れた。
◆挑戦開始
ダンジョンに入った瞬間から、ナオの集中は研ぎ澄まされていた。
道中の雑魚たちが吠え、群れを成して襲いかかる。
「ふんっ!」
これまでの突きは一秒かけていた。
だが今は違う。
半秒。
わずかな時間で剣先が閃き、敵を貫いた。
「次っ!」
横凪ぎも、かつては三秒かかっていた。
だが今は一秒で、疾風のように放たれる。
その速さは、刃の軌跡が風を裂き、剣圧となって周囲を飲み込む。
――剣が届かないはずの敵まで倒れていく。
「わ、わたし……いける!」
最短ルートを外れることなく、群れを一気に薙ぎ払いながら駆け抜けるナオ。
その姿はまるで暴風のようで、広場の魔法スクリーンの前では観客が総立ちになった。
「うおおおおおおっ!」
「ナオ! ナオ!」
王都広場は揺れるような大歓声に包まれた。
自然と、ナオコールが沸き起こる。
◆ボス戦 ― 呪われた王
ボスの巨体が待ち構える部屋に飛び込む。
ナオは迷わず距離を詰めた。
「ヒカルの言った通り……フォークダンスだっ!」
剣を振り上げるモーション、横薙ぎ、縦切り――。
パターンは頭に刻み込んである。
次に来る動きが分かるから、避けるのは容易かった。
「避けて! 叩く! 避けて! 叩くっ!」
近距離で舞うようにボスを翻弄し、剣を打ち込むたび、衝撃波のような剣圧が重なって大ダメージを与えていく。
広場の観客は、思わず声を呑んだ。
「す、すごいスピードだ……!」
「これ、舞やダインと並んでるんじゃ……いや、それ以上か!?」
◆帰還と結果
ボスが崩れ落ちると同時に、ナオは光に包まれてダンジョンから戻ってきた。
大剣を肩に担ぎ、汗を光らせながら、満面の笑みで両手を振る。
「えへへ、ただいまー!」
広場は割れんばかりの拍手と歓声に包まれた。
全員が魔法掲示板を見上げる。
ゆっくりと文字が書き換わっていく。
◆最終結果 ― ソロオーダー物理職編
順位名前ジョブ所属ギルドタイム
1位 龍 シノビ デビルズ 122秒
2位 ナオ 剣士 ルミナスブレイブ 127秒
3位 光秀 シノビ デビルズ 129秒
4位 舞 サムライ 白姫 165秒
5位 ダイン 剣士 トラベラント 168秒
6位 メアリー 剣士 トラベラント 170秒
7位 アラン 剣士 デビルズ 175秒
8位 ゲン サムライ デビルズ 180秒
9位 想 サムライ 白姫 185秒
10位 源水 サムライ トラベラント 190秒
◆歓喜の渦 ― ナオ、2位入賞
王都広場の魔法掲示板に「2位 ナオ」の文字が浮かぶや否や、観客の熱狂は最高潮に達した。
「すごいぞナオおおおお!」
「ルミナスブレイブってギルド、やっぱ本物だ!」
「ヒカルに続いてナオまで……新星の輝きだ!」
観客は口々にそう叫び、ナオの名を連呼する。
広場を埋め尽くす大群衆が一斉に声を合わせ、振動が大地に響くほどだった。
ナオは両手をぶんぶん振りながら、顔を真っ赤にして叫んだ。
「えへへ、ありがとうーーーっ!」
◆ルミナスブレイブの仲間たち
ギルドハウスで中継を見ていたヒカルとユウキも、思わず立ち上がった。
「……やったな、ナオ」
ヒカルの口元には、普段の冷静さを崩す笑みが浮かんでいた。
ユウキは両手を大きく叩きながら、爽やかな笑顔で叫ぶ。
「ナオさん、最高です! もう僕も元気もらいました!」
ナオは大剣を肩に担ぎながら、涙ぐんだ笑みで広場のスクリーンを見上げる。
「わたし……比べなくてもいいんだ。父さんや母さんとじゃなくて……わたし自身で!」
◆修行中の仲間たち
ソウタ(古巣ギルドにて)
「……は?」
中継水晶を覗き込んでいたソウタは、思わず椅子から転げ落ちた。
「ナオが2位ぃ!? あの龍と光秀の間に!? いやいや……マジかよ!」
古巣の仲間たちが爆笑しながら背中を叩く。
「お前んとこの新しい仲間、すげえな!」
「お前も負けてらんねえぞ!」
ソウタは苦笑しつつも、胸の奥で熱いものが湧き上がっていた。
「……チクショウ、やるじゃねえか。応援スキル? ぜってぇ覚えて持ち帰るからな」
ミナとレナ(デビルズにて)
デビルズのアジトでも、魔法水晶の前がざわついていた。
「おい……ナオって子、2位に入ったぞ」
「デビルズの龍と光秀の間だぜ。ルミナスブレイブって、やべぇんじゃないか?」
若き拘束士シバが、顎を撫でながらニヤリと笑った。
「……引き抜いてもいいんじゃねえか? あの剣士」
その言葉に、レナがピシャリと声を上げる。
「ナオは、うちの仲間です。デビルズに渡すわけありません」
周囲が「おお?」とざわついた。
「おっと、怖ぇな。じゃあ遠慮しとくか」
「まあ、俺たちの方がまだ上だしな」
ミナは拳を握りしめながら、きらきらした目で水晶を見つめていた。
「ナオさん……すごいです! わたしも、がんばらなきゃ!」
ユウキ(広場にて)
王都の広場で観客に混ざっていたユウキも、全力で拍手を送っていた。
「ナオさん……ほんとにやり遂げましたね。来週は僕の番か……!」
不安よりも、仲間への誇りが胸を満たす。
ユウキは爽やかに笑い、次の挑戦への決意を固めた。
◆他ギルドの反応
デビルズの龍
スクリーンを見て、肩をすくめる。
「……五秒差か。たいしたもんだな、あの娘。まあ、俺が一番であることに変わりはねぇけどな」
光秀
くすりと笑みを浮かべる。
「ふふ、また面白い子が現れましたね。楽しみです」
白姫の舞
「ナオちゃん……かっこいい!」
自分と同じ女剣士として、瞳を輝かせていた。
トラベラントのダイン
「おいおい……新人の剣士がここまでやるかよ。やべぇな」
◆王宮の反応
王の居室にも、広場の様子は映し出されていた。
「……あの少女、面白い。民衆の心を一瞬で掴むとは」
玉座に座るランド王が口元に笑みを浮かべる。
側近の大臣が頭を下げる。
「ルミナスブレイブ……今後、王国にとっても要の存在となるでしょうな」
王は深くうなずき、静かに言葉を放った。
「彼らを見守れ。そして必要とあらば、支えよ。我らの未来を担う若き勇者たちだ」
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