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追放された雑魚剣士、実は最強ゲーム覇者でした。~記憶を取り戻した俺はチート知識で世界をぶっ壊す~  作者: 中瀬
第一章 ワールド覇者編

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第30話 ナオの成長

 転送の光が晴れると、またしても石畳の冷たい空気が二人を包み込んだ。

 目の前に並ぶのは、錆びついた鎧を纏う王宮兵士の亡霊たち。


「うわぁ……やっぱりいっぱい出てくる……」

 ナオは大剣を構えながら弱気な声を漏らす。


「一体ずつ、確実に、だ」

 ヒカルが後方で腕を組み、静かに告げる。


「……うん!」

 ナオは気合を入れて踏み出した。


 最初の兵士が襲いかかる。

 以前ならまとめて薙ぎ払おうとしただろう。だが、ナオは大剣を振りかぶり、真っ直ぐに一体だけを狙った。


 ドゴォン!

 重い一撃が直撃し、兵士は霧散する。


「よし、次!」

 ナオはすぐに構え直し、次の敵へ。


 ヒカルは後ろから頷きながら見守る。

「いいぞ。焦らなくていい。自分のテンポを守れ」


「わ、分かってる!」

 汗を拭う間もなく、ナオは次々と兵士を撃破していった。

 ――確実に、一体ずつ。


 やがて雑魚をすべて倒すと、重々しい扉が軋みを上げて開く。

「……あっ、開いた! やったぁ!」


「な? 一人ずつ潰せば必ず進める」

 ヒカルが軽く笑う。


「へへっ、ちょっと自信ついてきたかも」

 ナオは胸を張ってみせるが、次の瞬間、謁見の間から不気味な咆哮が響いた。


 黒きオーラを纏った呪われた王が姿を現す。


「ひぃぃぃ……やっぱ怖いんですけど!」

「落ち着け。大振りを避けて、隙を突け。それだけだ」

「……っ、やってやる!」


 王の大剣が振り下ろされる。

 以前なら正面から受け止めて吹き飛ばされていただろう。

 しかし今のナオは軽く身をひねって回避する。


「よし、避けられた!」

 その隙に一撃を叩き込む。


 ギィィン!

 大剣の刃が王の甲冑を削る。


 何度も攻防を繰り返し――

 ついにナオの大剣が王の胸を貫いた。


 断末魔の叫びを残し、呪われた王は光の粒子となって消えていく。


 ナオは膝をつき、大剣を杖にして荒い息を吐いた。

「……はぁ、はぁ……やったぁ……! 本当に倒せたぁぁ!」


 ヒカルが近づき、肩に手を置く。

「見事だったな。言った通りにやれば、ちゃんと結果は出る」


 ナオは顔を上げ、照れ臭そうに笑った。

「……ちょっとだけ、自信ついたかも」


「それで十分だ。あとは本番まで繰り返して慣れればいい」


「うんっ!」

 ナオの瞳には、先ほどまでの怯えはもうなかった。


 呪われた王を倒した達成感で、ナオはまだ息を弾ませていた。

 その横で、ヒカルは落ち着いた声で告げる。


「よし、じゃあ……ここから本格的に指導していく」


「えっ、いままでのが軽くで、これから本番……?」

 ナオは口をあんぐりと開ける。


「そういうことだ」

 ヒカルは微笑んで、指を一本立てる。


「まず――さっきは『一体ずつ確実に雑魚を仕留めろ』と言ったな」

「うん、言った!」

「だが次からは、まとめて倒すんだ」

「……はあ!? なにそれ、言ってること逆じゃん!」


 ナオのツッコミに、ヒカルは小さく首を振る。


「違う。前は、まとめて倒そうとして空振りが多かった。空振りはロスタイムだ。

 でも、一体ずつ狙う練習をしたことで、雑魚の動きをよく見れるようになったはずだろ?

 だから次は、まとめて倒しても空振りは減る」


「……あ、なるほど」

 ナオは目を丸くして頷いた。


「たとえば、雑魚が50体いるとする。

 一回の剣の振りで5体ずつ倒せれば、10回――つまり5秒で片付く。

 でも、一体ずつ倒してたら50回振ることになる。50秒だ」


「……そんなに違うんだ」

「一回の攻撃モーションで、できるだけ多くの敵を巻き込む。それがタイムを縮める基本だ」


「次に攻撃の時間。

 横薙ぎは強いが、体力を使うし、モーションに3秒かかる。

 だから3体以上まとめられる時だけ使え。

 逆に、1体なら軽く突けばいい。突きは1秒で終わる」


「うわ……そんな細かいとこまで考えてんの?」

 ナオは口をぱくぱくさせる。


「状況に合わせてモーションを変えろ。それだけで効率が違う」


「あと、ボス部屋までの最短経路を走れ。余計な道を歩くな。

 雑魚を倒すときも、最短ルートから外れないように戦うんだ。

 あっちこっち走って追いかけてたら、それだけで数十秒は無駄になる」


「……なるほど……」

 ナオは真剣な顔で聞き込んでいた。


「最後にボス戦だ」

 ヒカルの声色が少しだけ厳しくなる。


「ナオ、ボスから離れすぎだ。あれじゃ剣の間合いも合ってない。

 ボスとは――フォークダンスを踊る気持ちで、ぴったり近づいて戦え」


「フォークダンス!?」

 ナオは思わず吹き出すが、ヒカルは真面目な顔のままだ。


「攻撃を受けたらどうする? もちろん、全部避ける。

 そのために、ボスのモーションをすべて覚えろ。動きはシンプルだ。

 振り上げ、横薙ぎ、縦切り、突き連打、そして必殺技――5パターンしかない」


「えっ、そんな単純だったの!?」

「しかも順番も決まってる。必殺技だけは1分に1回の頻度だが、それ以外は完全にパターン通りだ」


 ナオは呆然としながらも、目を輝かせる。

「……相手の動きが分かってれば……避けられるってこと?」


「そうだ。次の攻撃が分かってるんだから、余裕で避けられる」

 ヒカルはさらりと答える。


 ナオはその観察力と分析力に舌を巻いた。

(……こんなの、どうやって見抜いたの……?)


 ヒカルは背を向け、ダンジョンの転送陣を指さした。

「さあ、次は3回目だ。今度こそ、実戦に近い動きを見せてもらう」


 ナオは大剣を握り直し、息を呑む。

「……よしっ、やってやる!」


 光が彼女を包み、再び仮想ダンジョンへと転送されていった。


 光に包まれた先は、見慣れた石造りの通路。

 仮想とはいえ、ダンジョンの冷気は肌を刺すように鋭い。


「さ、始めるぞ。俺は一切手を出さない。ただ見てるだけだ」

 ヒカルが淡々と告げる。


「うんっ、任せて!」

 ナオは大剣を肩に担ぎ、前へ踏み出した。


◆雑魚戦


 最初に飛び出してきたのは、骨の兵士三体。

 前回までなら一体ずつ斬っていたが――ナオは深呼吸し、大剣を大きく薙いだ。


「えいっ!」


 刃が半円を描き、三体まとめて粉砕。

 石畳に骨が散らばるのを見て、ヒカルは小さく頷いた。


(よし、空振りが減ったな。ちゃんと範囲を見極めてる)


 続けざまに、群れをなして飛びかかってくる小鬼。

 ナオは走りながら最短経路を外さず、集まった三体をまとめて薙ぎ、残った一体を素早く突きで仕留めた。


「……できた! 突き、速い!」

 ナオが自分で気づいて嬉しそうに振り返る。


「その調子だ。状況を見て技を変えろ」

 ヒカルの声が後押しする。


 その後も、ナオは雑魚を集めながら走り、10体単位で刈り取っていく。

 以前なら30秒以上かかっていた部屋も、10秒足らずで殲滅できるようになっていた。


◆ボス部屋前


 やがて巨大な扉が立ちはだかる。

 呪われた王が待ち受ける部屋だ。


 ナオは大剣を握り直し、ぐっと唇を結ぶ。

「ヒカル、行ってくるね!」


「おう。フォークダンスを忘れるなよ」

「もう、その例えやめてよ!」


 笑いながらも、ナオは扉を押し開けた。


◆ボス戦 ― 呪われた王


 暗闇の中、鎧の巨体が立ち上がる。

 大剣を振り上げる動作――その瞬間、ナオはヒカルの言葉を思い出した。


(パターンは5つ。振り上げの次は横薙ぎ!)


 予想通り、剣が横に走る。

 ナオは最小限のステップで避け、すぐさま大剣を振り下ろした。


「はああああっ!」


 鋼と肉を断つ手応え。

 王の反撃が縦切りに移る。

 それも分かっていたナオは、軽く下がってかわすと、すぐに突きで反撃。


「……っしゃ! 本当に避けられる!」

 ナオが興奮気味に叫ぶ。


 その様子を見て、ヒカルは腕を組んで静かに頷いた。

(やっと、自分の力を信じられるようになったな)


 だが、やがて王が大剣を高々と掲げる。

 必殺技――切り上げ。

 その一撃は、地面ごと斬り裂く威力を持つ。


「来る……!」


 ナオは全力で横へ跳んだ。

 直後、地面が爆ぜるように割れ、衝撃波が後方へ走る。


「ひぃっ……! ……よけ、られた……」


 息を荒げながらも、目は輝いていた。


◆決着


 最後の突き連打を受け流し、隙を突いて大剣を振り下ろす。

 巨体がぐらりと傾き、やがて崩れ落ちた。


 石の床に響く轟音――ボス撃破の証。


「……倒せた!」

 ナオは大剣を支えにしながら、振り返って叫んだ。


 ヒカルは少しだけ口角を上げた。

「よくやった。動きの無駄がほとんど消えたな。これなら本番でも戦える」


「えへへ……! ヒカルのおかげだよ!」

 ナオは汗だくのまま、胸を張った。


「いや、やったのはお前だ。きっとなんとかなる、って本当に証明したな」


 ナオは嬉しそうに笑い、二人はダンジョンからの転送光に包まれていった。

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