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追放された雑魚剣士、実は最強ゲーム覇者でした。~記憶を取り戻した俺はチート知識で世界をぶっ壊す~  作者: 中瀬
第二章 悪魔討伐編

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第191話 悪魔リーサル現る

朝日のやわらかな縞が、宿舎のリビングの床を斜めに走る頃──

クロエは目を覚ました。体がまだ砂の夢に埋もれているような感覚を引きずりながら、隣のベッドの空っぽさに気づく。


「リディアちゃん…?」と、寝ぼけ声で呟くと、遠くから人の声が飛び込んできた。


──「悪魔が三体も!?」

ヒカルの声だ。思わずクロエは大きく反応して、布団を蹴飛ばして立ち上がる。


リビングへ入ると、皆の顔がいつもより引き締まっていた。ナオがふわりとした声でこちらを向く。

「起きたのね。調子はどう? リディアが疲れていそうだから、ゆっくり寝かせておこうって言ってたのよ」


クロエはお礼を言いつつ、視線を探す。リディアはカウンターの向こうで、こちらをちらっと見てウィンクしてくれた。

「相変わらず、ズルイ顔だな、キュンと安心する」と胸の中で思う。安心感が、すっと体の中に戻る。


「何が起きているの?」クロエが訊くと、バレンが静かに説明を始めた。

彼の声はいつもどおり落ち着いていて、言葉に無駄がない。


「今朝、グラス王国の王宮から伝令があった。大国のマウントグリーン王国に悪魔が三体現れたらしい。名はリーサル、ネフィロス、セラフィナ。最悪クラスらしい。状況が『暗躍』では済まず、直接的な暴力による支配に入っている。」


その瞬間、部屋の温度がキュッと下がった気がした。シドが重たい口調で付け加える。

「マウントグリーンのような大国が、王宮ごと一日で制圧されるとは……」


ナオが心配そうに懸念の声を漏らす。

「魔の門も作られているかもしれないわね……」


「リーサル……七大悪魔の最強格だって話だ」ヒカルが続ける。肩に載った剣の鞘が光る。

「それに二体の”双子”が加わる。正面戦力での殴り合いは危険だ」


リディアの顔が青ざめる。普段の軽口はどこへやら、真剣な目がそこにある。

「さ、さすがに、危険よね……」


ヒカルはふと視線を下げ、チャイの背にちょこんと座る“あの子”――セリーナ(ハムスター)を見つめた。

「情報だ。ここは情報だな」


場の空気が一瞬、ほころぶ。セリーナは小さな前足でモフモフと顔を隠し、ぷるぷる震えている。


ヒカルはクロエに向き直る。

「クロエ、成長した黄金の力、実験してみるか? ちょっとした挙動確認だ」


セリーナが小さな声で睨む。

「ちょっっっっっっと、汚いわよっ! ヒカル! やめてよっ!話すわ、三体の悪魔のこと。」


「悪魔に”汚い”とか言われたくないな」ヒカルはニヤリと返す。全員が苦笑する中、セリーナは観念した顔で小さく話し始めた。


「リーサルの能力は……正確には分からない。だけど、悪魔を“復活”させる力を持つのは確かよ。悪魔を生み出すこともできるらしい。ネフィロスとセラフィナは、リーサルが同時に創り出した双子の悪魔。外見は人間そっくり、角も翼もない。耐久は、人間並みって聞いてる。それが唯一の希望かも」


リディアは胸をなでおろしたように見えた。

「じゃあ、リーサルは大人に任せて、ネフィロスとセラフィナはクロエと私が……たたかう?」と、頬を赤らめつつも決意を見せる。


セリーナが一言、重ねる。

「ただし、二人は“呪い”を使うらしいわ。私も戦ったことはないから詳細は知らないけど……」


「の、呪い?」リディアが再び顔色を失う。だが、すぐにあの屈託のない笑顔を戻して、困った相手をなだめるように付け加えた。

「私は後方支援でいいわ。オホホホ(震え声)」


クロエは拳をぎゅっと固めた。胸が熱くなる。

(パパとママを守るためにも、私が行く!)──内なる決意だった。


ヒカルは首を振る。怒っているわけではない。大人としての確かな配慮だ。

「いや、お前たちはここに残す。これは俺たちの戦いだ」


だが──その言葉の後、ヒカルは言葉を継いだ。表情は硬いが、どこか諦めにも似た現実的な緩みがある。

「と言いたいところだが……どうせお前らは勝手に突っ走るんだろう? リディアはバレンの弟子だ、まずは相談しろ。クロエ。お前はただ、シドが、お前の兄貴から預かっているだけだ。これ以上危険にさらすわけにはいかん」


リディアが小声で言う。

「わたしも、危険にはさらしちゃいけないような……」


だけど、クロエは負けない。両拳を天に掲げるほどの勢いで叫んだ。

「わたしは絶対にいくーーーーーーー!」


その声に、部屋の気配が一瞬止まった。みんなはクロエの顔を見る。そこには幼さと大人びた覚悟が混ざった表情があった。瞳は真っ直ぐで、決して揺らがない。


ヒカルの表情が柔らかくなるように見えた。むしろ、胸がぎゅっとするのがわかった。それは保護者を超えた気持ちだった。

「分かった。だが条件がある。無茶はするな。危ない時は逃げろ。命があっての戦いだ。お前の命は――」


言葉を切って、ヒカルはクロエの額に軽く触れた。短い接触に、温もりが伝わる。クロエは静かに頷く。


リディアが腕を組んでにっと笑う。

「私も行く。バレン様、了承を求む。旦那様の傍で勉強するの(かわいい顔で)」


バレンは淡々と頷く。

「分かった。私は近接で補助する。チャイは援護とクロエとリディアの撤退時のフォローを担当。ナオは解呪と精神防御。シドは結界と監視。ヒカルは指揮。全員で動く」


セリーナは果たしてうまくいくかなと言わんばかりの態度で、腕を頭の後ろで組み、短い脚で、足を組んでいた。


その朝――七人は短い準備を済ませ、窓の外に伸びる朝の光を背にして立ち上がった。行き先はマウントグリーン王国。悪魔たちの巣窟へと向かう道だ。


エルナリアとエリナ、セリーヌとエルネスが、彼らを見送った。


クロエは胸の中で、未来の記憶のかけらを思い出す。父の背に抱かれて眠った温かい記憶。母の手のぬくもり。全部を守るために、今、自分は翼を広げるべきだと、固く自分に誓った。


――物語はまた一歩、激しさを増して進んでいく。

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