第187話 ステータス補完
それから数日が経った。
クロエの動きは、見違えるほど鋭くなっていた。
リディアの助言、ヒカルの指導、そして毎日の修行が確実に彼女を強くしていたのだ。
黄金の力の制御も安定し、体術や剣術の型に無理なく組み込めるようになっている。
さらに一か月が経ったころ――。
ヒカルとの模擬戦でも、一方的に押されることはなくなっていた。
剣を交えるたび、金属音が響き、クロエの目の動きが鋭くなる。
ヒカルもまた、成長を肌で感じ取っていた。
「ほう……。もう、受け流すだけじゃなく、反撃も入れてくるか。」
「……ふふっ、まだまだですけどね。」
そのとき、観戦していたリディアがぱっと立ち上がった。
「クロエ! 黄金の力の制御を、体術と剣術に応用するのよ!」
クロエは静かにうなずいた。
毎日の訓練で磨いた「制御」を、今こそ実戦に繋げるときだ。
ヒカルが構えをとる。
風が止み、異空間の空気が張りつめた。
ヒカルの剣が、会心の一撃で振り下ろされる。
――その瞬間。
クロエは息を吸い、黄金の力を一点に集中。
無駄のない流れで、ヒカルの剣筋を読み切った。
「……はっ!」
閃光が走る。
クロエの剣が、ヒカルの剣を弾き返した。
鋼が舞い、ヒカルの剣は天高く跳ね上がる。
ヒカルが息を呑む。
「クロエ……そこまで、黄金の力を制御できるようになったのか……」
静かな感嘆が漏れる。
そして、笑みを浮かべた。
「すごいな。お前は筋力も体力も、普通の女の子と変わらない。
だがその黄金の力は、筋力もHPもMPも、すべてを補完してくれる。
それなら、十分に悪魔と渡り合えるぞ。」
クロエの顔がぱっと明るくなった。
「ほんとに!? やった……!」
リディアが腰に手を当てて胸を張る。
「ふふん、当然よ。リディア様の指導の賜物だもの!」
その様子を見て、シドはぽかんと口を開けた。
「……なにこの姉妹みたいな息の合い方……」
チャイが元気にクロエへ手を振る。
「クロエちゃん、かっこよかったー!!」
バレンは、そんな浮かれ気味のリディアに釘を刺す。
「お前も修行を怠るな。教えるだけじゃなく、実力も上げろ。」
「ふふっ、私と二人きりで修行したいのね?」
「……修行のためだ。」
バレンがクールに返すと、リディアはにやりと笑った。
そんなやり取りを見て、ヒカルがクロエに告げる。
「よし。じゃあ、次は実戦訓練だな。
俺とナオ、二人で同時にお前に打ち込む。」
「ふっ……ナオとペアが組みたいのね?」
クロエの唇がにやりと上がる。
その一言で、ヒカルもナオも一瞬で顔を赤らめた。
「ちょっ……違う、そういう意味じゃ……!」
「わ、わたしも……そ、そんなつもりじゃ……!」
クロエは内心でくすりと笑う。
(えへへ……わたし、もしかして“縁結び”の才能あるのかも。)
ヒカルは頭をかきながら呟いた。
「……よし。罰として、この次の訓練、ちょっと厳しくいくからな。」
「えっ、それはちょっと――って、ちょ、まってヒカルー!」
ヒカルが構えを取る。
再び、空気が張りつめた。
クロエの成長は確かに本物。
しかし、これから先――その黄金の力が真に“翼”となるまでは、もう少し時間が必要だった。
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