第18話 プレオーダー開戦
プレオーダー が始まった。
俺達は、自分たちのギルドハウスに戻り、敷地内にある魔法陣からプレオーダーのダンジョンに挑んだ。
ダンジョン名は亡霊の城――。
重苦しい空気の漂う回廊を駆け抜け、王宮兵士の亡霊たちを打ち倒し、ついに謁見の間へと到達したヒカルたち。
玉座に鎮座していたのは、呪われた王。
鎧の隙間から紫色の瘴気を漏らし、咆哮とともに剣を振り下ろしてくる。
「こ、これ調整あっているの!? ボス、強すぎでしょ!硬すぎてHP全然削れない!!」
ナオが叫び、ボスに跳ね飛ばされて後方に転がる。
「落ち着け、動きはパターン化されてる。今のは力任せの振り下ろし――隙を狙え!」
ヒカルが即座に指示を飛ばす。
「了解しました。《氷槍》!」
ユウキが放った氷の槍が、王の足を絡め取る。
「今だ!」
ナオが跳ね起き、渾身の斬撃を王の胸甲に叩き込む。
続けて、ミナの鎖がしなる。
「拘束っ……決まれぇぇ!」
鎖が王の両腕を絡め取り、動きを封じた。
「トドメだ!」
ヒカルの剣が閃き、呪われた王の兜を割り砕いた。
轟音とともに、王は瘴気に包まれ崩れ落ちた。
広場に転送された瞬間、掲示板が光を放った。
観客が押し寄せ、次々と記録が浮かび上がっていく。
「ルミナスブレイブ――初回クリアタイム、一時間三十分!」
「やったぁぁ! 初クリア成功!」
ミナが跳ねながら喜ぶ。
「ふぅ……正直、きつかったな」ナオが大の字で座り込み、汗だくの顔を上げる。
「でも……一時間半って、悪くない記録なんじゃ?」ユウキが言った、その直後。
「トラベラント――三十分!」
「白姫――二十八分!」
「デビルズ――二十分!」
次々と表示された記録に、広場がどよめきで揺れた。
「に、二十分……!? わ、私たちの四分の一以下……?」
ナオの顔が真っ青になる。
「そんな……デビルズ、初回からこの速さなの……?」
ミナが震える声で呟く。
群衆の間からも声が上がる。
「やっぱり三大ギルドは格が違うな」
「デビルズの記録、もうプレオーダー最終日のレベルじゃねえか?」
「……まぁ、こうなるだろうな」
ヒカルは淡々と呟いた。
「えっ!? 驚かないの?」
ナオが詰め寄る。
「……俺の予想だと、デビルズはここからさらに詰めてくる。おそらく十数分……いや、最終的には十分前後まで縮めるはずだ」
「じ、十分!? そんな短時間でクリアなんて、本当に可能なの?」
ミナが目を丸くする。
「可能だよ。奴らの練度ならな」
ヒカルの声は静かだったが、確信に満ちていた。
「……まるで、見てきたみたいに言うのね」
レナがじっとヒカルを見つめる。
「勘、だよ。……けど、勘はよく当たる方なんだ」
ヒカルは視線を逸らし、掲示板に浮かぶ数字を見つめた。
「なによ、それ……でも、だったら私たちも負けてられないってことよね!」
ナオが拳を握りしめる。
「そうだな。練習期間でどこまで詰められるか……それが勝負だ」
ヒカルの言葉に、全員が頷いた。
湖畔のギルドハウスへ戻る仲間たちの目には、先ほどまでの動揺はなく、ただ静かな闘志だけが宿っていた――。
再び亡霊の城。
「今回は俺の応援をもっと前に出すぜ! ナオちゃん、開幕からいくぞ!」
「まっかせて!」
ソウタの強化を受けて、ナオが門をぶち破るように大剣を振り下ろす。兵士たちが一気に粉砕される。
「ちょ、ちょっと強すぎません!? 僕の出番が……!」
ユウキが焦るが、レナが笑ってツッコむ。
「ユウキ、出番はいくらでもあるわよ。ほら、右から来てる」
「は、はいっ!」
ミナの鎖が複数の兵士を縛り、ユウキの炎が炸裂する。
「よーし、連携完璧!」
ヒカルが頷き、皆を先へと導いた。
◆ボス戦(2回目)
「またアンタか、呪われ王!」
ミナが挑発するように叫び、鎖を繰り出す。
「ナオ、受けろ!」
「おっけー!」
ソウタの応援が響き渡り、ユウキの雷撃、レナの聖なる光が重なり、ヒカルの剣が最後を断つ。
――二回目クリア、タイム50分。
◆掲示板前
トラベラント 25分
白姫 24分
デビルズ 15分
ルミナスブレイブ 50分
「おお! めっちゃ縮んだじゃん!」ナオが飛び跳ねる。
「すごい進歩です!」ユウキも興奮気味。
「でも、まだ半分以下ね。しかもデビルズは……」
レナが苦々しく掲示板を見上げる。
「きっとなんとかなる。次はもっと詰められる」
ヒカルが静かに断言した。
仲間たちの目に、少しずつ確信の色が灯りはじめていた。
その後も、プレオーダー期間、ヒカル達は練習を積んだ。
プレオーダー最終日のクリアタイムは以下の通りだ。
トラベラント 20分
白姫 22分
デビルズ 12分
ルミナスブレイブ 40分
明日からはいよいよ、ダンジョンキングオーダー本番だ。
各ギルドのプライドをかけた7日間が始まる。
前世のゲーム時代、ヒカルのギルドは3位までに入ることができなかった。
だが、ここでは、いつか必ず、1位を取って見せる。
ヒカルは希望を胸に、明日を待つ。
読んでくださり、ありがとうございます。
良ければブックマークと評価をお願いします。励みになります。




