第17話 三大ギルド
湖のほとり。木々に囲まれ、透明な水面が陽光を反射してきらめく場所に、俺たちの新しい拠点――ギルドハウスが完成した。
二階建て六LDK、湖を望む大きなテラスとバルコニー付き。地下倉庫には魔導書や素材を保管できる。
「……すごい、本当に建ったんだな」
ヒカルが感慨深そうに呟く。
「ふふっ。ちゃんとお風呂もあるんですね。長い遠征のあと、湯船に浸かれるなんて夢のようです」
レナが微笑む。
「礼拝堂が無いのは残念ですが……まぁ、しばらくは許容しましょう。ギルドハウスの維持費もかかりますから」
「ごめんな、レナ」ヒカルが頭を掻くと、レナは「お気になさらず」と柔らかく答えた。
周囲は自然豊かで、近隣に民家は無い。広い敷地は実戦練習にもうってつけだ。外の一角には、王立顧問魔導士が設置してくれた巨大な魔法陣が輝いている。ここがダンジョンキングオーダー挑戦への入り口になる。ただし、使えるのは三日後からだ。
「じゃ、部屋割りはどうする?」
ナオが目を輝かせる。
「二階にそれぞれの部屋があるんだよね。私は一番窓が大きい部屋がいいな!」
「ちょっと、私が先に目を付けてたんですけど!」とミナが割り込む。
「えー!?ミナまで!?」
「……じゃあ、決闘で決めたらどうでしょうか」
ユウキが真顔で提案し、場が一瞬静まる。
「いやいや、部屋取り合戦で決闘はやめて!」とヒカルが即座に却下。
「ふふっ、じゃあジャンケンで決めましょう」
結局、勝ったナオが大窓のある部屋を手に入れ、ミナは隣室を選んだ。
その日の夕暮れ、キッチンではソウタが張り切っていた。
「俺に任せてくれ! 今日のメニューは豪快肉の香草焼きと湖魚のスープだ!」
「おおー! やっぱり男の料理って感じだな!」とナオ。
「ソウタさん……本当に料理、できるんですか?」ミナが眉をひそめる。
「任せろ、ミナ! 俺は応援だけじゃない、料理でもチームを支える!」
……その直後、焦げた匂いが漂い、皆が一斉に窓を開けたのは言うまでもない。
最終的にレナがさりげなく手を加え、見事な晩餐となった。
リビングから続くテラスに食卓を並べ、湖を望みながら全員で食事をとる。
「こうして皆で食べると、味が一層美味しく感じるな」ヒカルが言うと、
「そうですね。こういう時間こそ、旅の醍醐味だと思います」ユウキが丁寧に頷く。
「私、もっと強くなりたいんです。ヒカルさんやみんなと並んで戦えるくらいに」
ナオが真っ直ぐな眼差しで語る。
「僕は……大陸中の魔導書を集めて研究することが夢です」ユウキ。
「私は拘束士として、誰よりも仲間を守れる存在になりたい」ミナ。
「俺はただひとつ! 仲間を勝たせる応援団長であり続ける!」ソウタは胸を叩く。
レナは少し照れながら、「わたしは、癒しと支えを与える者でありたい。皆さんの未来を祈りながら」と告げた。
最後に、ヒカルが真剣な表情で言った。
「ダンジョンキングオーダー……今回は一人じゃない。仲間と共に、必ず上を目指す」
「「「おーっ!」」」
皆の声が湖畔に響いた。
数日後、街はオーダーの話題で持ちきりだった。
「やっぱり上位三つは、トラベラント、デビルズ、白姫か」
「三大ギルド、だな。王宮依頼まで受けてる連中だ」
噂に沸き立つ人々を横目に、俺たちは足を速める。
「デビルズと白姫がどんなギルドなのか、詳しく知る必要がある」ヒカルが呟く。
「じゃあ、まずは知り合いのいるトラベラントから情報を聞いてみましょう」レナが提案する。
そして俺たちは、トラベラント所属の冒険者、ダインに会いに行くのだった――。
グランリオの大通り。屋台の香ばしい匂いと人々のざわめきが広がる中、ひときわ大きな笑い声が響き渡った。
その中心にいたのは、肩幅の広い大男――トラベラントのギルドマスター、ダインだった。
「おーっ! ヒカルじゃねぇか! お前ら、こんな街中で遊んでやがったか!」
ダインは豪快に手を振り、手に持った串焼きを振り回す。周りの人々が驚いて避けるほどだ。
「ダインさん。ちょうどお話を伺いたくて」ヒカルが歩み寄る。
「なんだ? 俺に弟子入りでもすんのか? 悪ぃが、俺のギルドは千人で手一杯だ!」
「ち、違いますって!」ナオが慌ててツッコミを入れる。「三大ギルドについて教えてほしいんです」
「なぁんだ! そういうことか! よっしゃ、任せとけ!」
ダインは豪快に笑い飛ばし、屋台のベンチを勝手に陣取った。ヒカルたちも渋々腰を下ろす。
----ギルド「トラベラント」について----
「まずは俺のギルド――トラベラントだな!」
ダインは胸を張り、親指で自分を指した。
「ワールドで最大勢力、千人規模の大所帯だ。ダンジョンキングオーダーじゃ二位か三位が常連。トップはまだ獲れてねぇが、豊富な知識と戦略の幅ならどこにも負けねぇ!」
「千人……!」ユウキが目を丸くする。
「ええ、通常は三十人前後ですからね。規模が違います」レナが淡々と頷いた。
「代表に出る六人は、その時の調子がいい奴を選ぶ。もちろん、ギルマスの俺は毎回確定だがな!」
ダインはガハハと笑い、ドヤ顔で串をかじる。
「……ただ自慢したいだけじゃないですか」ミナが小声で呟いた。
----「白姫」について----
「次は、白姫だな」
ダインが指を二本立てる。
「ここはギルマスの舞って女がカリスマなんだよ。とにかく人を惹きつける。ダンジョンキングオーダーに出場する六人はいつも固定。舞と、彼女を支える五人のトップメンバーで固められてる」
「へぇ……固定なんだ」ナオが感心する。
「ええ、規模は百人程度ですけど、それでも通常より大きい部類です。舞さんの存在が絶対的なんですね」レナが分析する。
「ランキングは二位か三位の常連。ウチと競り合ってる感じだな。舞がいる限り、あそこは落ちやしねぇ」
ダインは少しだけ悔しそうに笑った。
----「デビルズ」について----
「最後は……デビルズだ」
ダインの表情がぐっと引き締まる。
「こいつらは少数精鋭。若手だけで結成されたギルドで、人数は十五人くらいだが……レギュラー六人はマジで怪物ぞろいだ」
「……怪物……」ユウキがごくりと息を呑む。
「ここ数年、デビルズが一位を独占してる。奴らの勢いは止まらねぇ」
ダインは真剣な顔で言い切った。
「少数で最強……漫画みたいですね」ナオが苦笑する。
「……油断すれば、ほんとに喰われるわよ」レナが低い声で釘を刺す。
「ってわけで、この三大ギルドがトップ争いの常連だ。お前らが挑むってんなら、腹ァくくっとけよ!」
ダインは最後に豪快に肩を叩き、笑顔を見せた。
「もちろんです!」ヒカルが真っ直ぐ答える。
「私たちも、負けません!」ナオが剣士らしく力強く言葉を重ねる。
「僕も、魔法で全力を尽くしますよ」ユウキが静かに頷く。
「ふん、私がいなければ倒れるでしょうけど」レナがツンと横を向く。
「わ、わたしも! 拘束で絶対役に立ちます!」ミナが元気よく両手を挙げた。
「ガハハ! いいな! その熱意だ! お前ら、楽しみにしてるぜ!」
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