第157話 逮捕
鋭い剣先がヒカルたちを取り囲んでいた。
保安局の兵士たちは警戒を解かず、逃げ道を封じるように構える。
ヒカルはゆっくりと剣を鞘に戻した。
「……もういい。降参する」
「ヒカル!?」
ナオが驚きの声を上げる。
「戦っても、無駄に血が流れるだけだ。俺たちは……人を殺すために来たんじゃない」
その静かな言葉に、バレンも頷いた。
「……ああ。俺も同感だ」
シドは一瞬目を閉じ、静かに杖を地面に突く。
「理に適う判断じゃな。いずれ、別の道が開ける」
保安局の兵たちは戸惑いながらも、彼らを拘束する。
こうして、ヒカルたちは戦いを放棄し――逮捕された。
鎖の冷たい音が響く。
夜明け前、彼らは街の外れにある鉄格子の門をくぐった。
地下へと続く階段は、湿った空気と鉄錆の匂いで満ちていた。
◆地下収容所へ
「おい、急げ。セリーナ様が直々に視察に来られるそうだ」
「さすがだな……。昔からこの国の秩序を守ってくださってるお方だ」
「グラス王国はセリーナ様がいなければ滅んでいたかもしれん」
そんな衛兵たちの会話が、ヒカルたちの耳に届く。
バレンは視線を落としながら、小さく息を吐いた。
(秩序を守る、か……人の心を奪ってまで、か?)
そのときだった。
――カサリ、と風を切るような気配。
シドの目が鋭く動く。ヒカルも反射的にそちらを見たが、すぐ目を逸らした。
バレンも同じく、何も気づかないふりをする。
(誰かが……つけてる)
数秒後。
「ん?」
兵士の一人が周囲を振り向く。
だが、すぐに――。
「ドンッ!」
眩い光とともに、煙幕が炸裂した。
白煙が通路いっぱいに広がり、視界が真っ白になる。
「な、なんだ!? 敵襲か!?」
「ぐっ……煙が!」
混乱の中、誰かがヒカルの鎖を一瞬で切り落とした。
「こっちだ! 早くついてきて!」
若い男の声だった。
ヒカルはためらわず、仲間に合図を送る。
「行くぞ!」
煙に紛れて走り出す。
狭い通路を抜け、石壁の裏を潜り抜け、次々と地下の抜け道を駆け抜けた。
やがて、湿った空気が薄れ、微かな夜風が頬を撫でた。
古い井戸のような抜け道から地上へ出ると、そこは街の外れの廃教会だった。
ヒカルたちは息を整え、ようやく目の前の“救出者”の姿を確認する。
「おまえ……誰だ?」
ランプの灯に照らされたのは、15歳ほどの青年だった。
浅黒い肌に、真っ直ぐな瞳。旅装束を着ているが、どこか王都育ちの雰囲気を持っていた。
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