第16話 ギルドハウスの設立
轟音と共にゴーレムが崩れ落ち、赤々と輝く巨大な結晶――火力玉が姿を現した。
「……これが、火力玉」
ヒカルは剣を納め、慎重に両手でそれを拾い上げた。
結晶は心臓の鼓動のように脈動し、圧倒的な熱と力を放っている。
「とんでもない魔力……!」
ユウキが驚きの声を漏らす。
「これを核に取り込めば、火力値が大幅に上昇します」
「やってみる」
ヒカルは仲間と共に頷き合い、火力玉をそれぞれの武器に触れさせた。
瞬間――。
炎が奔流のように流れ込み、ヒカルの剣、ナオの刃、ユウキの魔導書が赤熱する。
胸の奥に、確かな力が刻み込まれるのを全員が感じた。
「……来たな」
ヒカルの唇が自然に笑みを浮かべる。
火力玉の値は900。
そして、ヒカル、ナオ、ユウキがそれぞれ持つ基本火力は100。
合計で――1000。
ステータスの数値としては、これ以上伸ばせない「カンスト」に到達した。
瞬間火力だけなら、このワールドのトップチームと並んだのだ。
「……すごい。これで、私たちもようやくスタートラインね」
ナオが息を整えながら剣を見つめる。
「ええ。ですが、火力はあくまで基礎値です」
ユウキが冷静に言葉を続ける。
「この先は――個々の腕前、特殊能力、そしてチームワークが、勝敗を決める要素になります」
「つまり、ここからが本当の勝負ってわけだな」
ヒカルは剣を握り直し、仲間を見渡した。
目指すは、ワールドで最も注目される競技――ダンジョンキングオーダー。
ルールは単純明快だ。
七日間の開催期間中、最速クリアタイムを叩き出したチームが優勝する。
だが、実際はもっと複雑だった。
「本番の七日間の前に、プレオーダー期間が七日間あるのよね」
レナが腕を組んで説明する。
「そう。練習期間みたいなものだ」
ヒカルが頷く。
このプレオーダーで各チームは挑戦を重ね、戦術を練り、相手の力量を探る。
もちろん、いきなり全力を見せれば他チームに研究される。
そのため、実力を隠す駆け引きや、あえて記録を遅らせる作戦も存在する。
「結局、本番で一番速いタイムを出せた奴が勝つんだ」
ソウタがにやりと笑った。
「分かりやすいけど、奥が深いルールだな」
「練習期間があるのはありがたいわ」
ナオが剣を軽く振りながら言った。
「私たち、まだ連携は完璧じゃない。ここで磨ける」
だが、その前にやるべきことがあった。
「まずは――ギルドハウスを設立する必要がある」
ユウキが厳かな口調で言う。
「ギルドハウス?」
ミナが首をかしげる。
「ええ。王立顧問魔導士が挑戦用の仮想ダンジョンを作ります」
ユウキが指先で魔法陣の図を描く。
「その入り口となる魔法陣を設置する場所が――各チームが保有するギルドハウスの敷地なのです」
「なるほど。拠点を持たなければ、挑戦権すら得られないわけね」
レナが納得したように呟く。
「そういうことだ。炎晶洞を突破した俺たちは、ようやく火力の資格を得た」
ヒカルが真剣な眼差しを向ける。
「次は、ギルドハウスを作り、チームとして名を刻む」
「ふふ……いよいよ、本格的に始まるのね」
ナオの瞳も高揚に輝いた。
こうして、炎晶洞を攻略し、火力玉を手にしたヒカルたち。
火力はカンストに到達し、ようやくトップチームと肩を並べた。
だが――。
これはまだ、始まりにすぎない。
ギルドを設立し、練習期間を戦い抜き、そして本番の七日間で最速を叩き出す。
ダンジョンキングオーダーという頂点を目指す戦いが、ここから本格的に幕を開けるのだった。
翌朝。冒険者ギルドの本部にて、ヒカルたちはギルドハウス設立の手続きを進めていた。大理石の柱が並ぶ荘厳な建物。受付嬢が淡々と書類を取り出し、眼鏡を押し上げて説明する。
「はい、新規ギルド『ルミナスブレイブ』ですね。ギルドハウスの設立には、いくつか候補地から選んでいただきます。街の外れの屋敷跡、市街の中の大きな商館跡、それと湖畔の古い別荘跡です」
ナオが身を乗り出した。 「訓練場が作れる広さがあれば、どこでもいいんじゃない? 私、広い場所が欲しいわ」
レナは胸の前で手を組み、小さく祈るように言った。 「私は……できれば静かな場所がいいです。礼拝堂を設けて、祈れる場所を作りたいので」
ユウキは顎に手をあてて考え込む。 「僕は魔法書庫が欲しいですね。研究や魔導書の保管に適した湿度と静けさがあるところ……」
ソウタは腕を組んで大きくうなずいた。 「俺はどこでも構わん! 応援の声はどんな場所でも響くからな!」
その能天気さに、一同は少し笑った。
ヒカルは腕を組み、皆の意見を整理する。 「……なら、三か所すべて見に行って決めるか。実際に立ってみないと、雰囲気も分からないだろうし」
まず訪れたのは、街の外れの屋敷跡だった。かつて貴族が住んでいたという屋敷は、今は荒れ果てて蔦に覆われている。
ミナが縄を揺らしながら言った。 「ここ、ちょっと薄暗いですね……拘束の訓練はしやすそうですけど」
ナオが剣を抜き、庭の広さを確かめるように振る。 「ふむ、ここなら大勢で剣を振るえるし、模擬戦もできそうね。私としては悪くないわ」
だが、レナは表情を曇らせる。 「祈るには……少し空気が重い気がします」
ユウキも首を横に振った。 「魔導書を置くには、湿気が強すぎますね。カビがすぐに出てしまうかも」
候補からは外すことにした。
二か所目は市街の商館跡。石造りの堂々とした建物で、広いホールもある。
「おお、立派な場所だな!」ソウタが声を上げた。「ここなら仲間を大勢集めても大丈夫だ!」
ナオも頷く。「訓練場に改装すれば、強さを磨けそうね」
しかし、ユウキが渋い顔をした。 「ここは……街の喧騒が近すぎます。研究には向きませんね」
レナも首を横に振る。「静かに祈るのは難しそうです」
結局、この場所も候補から外した。
三か所目は、湖畔の古い別荘跡。白い石造りで、湖を一望できるバルコニーがある。木々に囲まれ、鳥の声が響く静かな場所だった。
レナの顔がぱっと明るくなる。 「ここなら……静かで、水も清らかです。礼拝堂もきっと設けられます」
ユウキもうなずいた。「湿度も安定していそうですし、魔導書の保管に理想的です」
ナオは湖畔を見渡し、剣を振る動作を試す。 「広さも十分ね。私の剣も思い切り振れるわ」
ソウタが拳を突き上げる。「景色も最高だし、応援の声も湖に響き渡るぞ!」
ミナもにっこり笑った。「ここなら拘束の訓練も集中できそうです」
ヒカルは皆の意見を聞き終え、決断する。 「……よし、ここを拠点にしよう。湖畔のギルドハウスだ」
冒険者ギルドに戻り、正式に書類へ署名する。
受付嬢が満足げにうなずいた。 「これでギルド『ルミナスブレイブ』の拠点は湖畔の別荘跡に決定です。魔法陣の設置工事を開始しますので、一週間ほどで使用可能になります」
ヒカルたちは互いに顔を見合わせた。
ナオが剣を肩に担ぎながら笑う。「やっと私たちの拠点ができるのね。ここからが本当のスタートだわ」
ユウキが眼鏡を押し上げる。「プレオーダーまでに、準備を整えなければなりませんね」
レナが祈るように微笑む。「この場所で、皆を癒し、支えたいです」
ミナがきゅっと縄を握る。「私も役に立てるよう、がんばります」
ソウタが胸を叩き、豪快に笑った。「任せとけ! 応援は俺に全部まかせろ!」
ヒカルは湖畔の光景を思い浮かべながら、小さく頷いた。 「……前世では、一人で塔に挑み、孤独に勝ち続けた。でも今は違う。仲間がいる。ここから、本当の冒険が始まる」
彼の胸に、新たな手ごたえが確かに芽生えていた。
~キャラクターステータス~
■ヒカル(人間)※主人公
現世が前世で自分が覇者になったゲームの世界だと気づく。
唯一ギルドパーティでの優勝のみ達成できず、現世での優勝を目指す
ジョブ:剣士
レベル:中級 →上級
火力:100 →1000
スキル:剣技 ※前世のゲームで覇者となるぐらいの腕前。
突っ込み癖がたまにキズ。
アタッカーで司令塔。
■ユウキ(人間)
観察魔、魔道オタク。魔法の深淵を追究したい。
子供で相手にされなかったが、ヒカルに拾われる。
ジョブ:魔法使い
レベル:中級 →上級
火力:100 →1000
スキル:炎系の攻撃魔法が得意。器用で支援魔法も使えるが、回復魔法は使えない。
アタッカーであり、サポーターでもある。
■ナオ(人間)
両親が伝説の冒険者。親に負けたくないが、頭を使うのが苦手。
ただし、両親譲りの能力の高さ、そして素直で物覚えはよい。
ジョブ:剣士
レベル:中級 →上級
火力:100 →1000
スキル:剣技。短剣、長剣、大剣など何でも使える器用さとパワーがある。
アタッカーであり、物理攻撃を防ぐ、受けの役割も持つ。
■ミナ(人間)
漫画オタク。拘束士として自分がどこまでやれるか試したい。
旅立ちの機会を待っていたところ、ヒカルに誘われる。
ジョブ:拘束士
レベル:中級
火力:10
スキル:拘束。相手を静止させる。また、隠しフロアの裏アイテムである、
竜拘束の指輪にて拘束中にデバフ効果、防御力半減が使える。
攻撃力はないが、超強力なサポーターである。
■レナ(人間)
プロ意識の強い僧侶。ヒカルと同じく、この世界の高みを目指したい。
前世を思い出した後のヒカルに出会い、何か変化を感じ取っている。
そして、異性として気になりつつある。
ジョブ:僧侶
レベル:上級
火力:0 ※回復力1000
スキル:回復魔法を持つ。支援系魔法も使える。
■ソウタ(人間)
幼少より、ミナを守りたい一心で、強くなろうと決意し、三大ギルドで修行する日々。
ミナが所属するヒカルたちのギルドに迷わず、移籍することにした。
ジョブ:チアマン
レベル:上級
火力:0 ※応援力1000
スキル:応援。状態異常の無効化、大幅な瞬間火力アップなど
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