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追放された雑魚剣士、実は最強ゲーム覇者でした。~記憶を取り戻した俺はチート知識で世界をぶっ壊す~  作者: 中瀬
第二章 悪魔討伐編

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第153話 グラス王国の状況

 「……ごめんなさい、怖がらせちゃって」

 クロエは、息を整えながらしゃがみこんだ。

 目の前の小さなエルフの少女は、まだ木の陰に半分隠れている。

 けれど、少しずつ顔をのぞかせていた。


 「悪魔、じゃ……ないの?」

 「違うよ。ね、リディア?」

 「もちろん。見ての通り、角も尻尾もないでしょ?」


 クロエとリディアは同時にくるりと回ってみせた。

 リディアの髪がふわりと風に舞い、クロエのスカートがひらりと揺れる。


 「ほんとだ……角、ない……」

 「でしょ? あったら私たちの帽子がもっとピンって浮いてるよ」

 「それはそれで面白いけどな」

 後ろからヒカルの声。


 少女がびくりと振り向く。

 ヒカル、ナオ、バレン、そしてシドも静かに近づいてきていた。

 だが、バレンが穏やかな声で言う。


 「安心して。私たちは旅の者だ。君に危害を加えるつもりはない」


 その落ち着いた口調に、少女の肩がふっとゆるむ。

 彼の静かな気配は、砂漠の夜風のように柔らかく心を包んだ。


 「……わたし、エリナ。森の見張りをしてるの」

 「エリナちゃん、かわいい名前だね!」クロエがにっこり笑う。

 「ねぇ、その紙……どうして、わたしたちが“悪魔”なの?」


 エリナはおずおずと地面を見つめた。

 「グラス王国で……通達が出たの。

  “異界の悪魔たちが人の姿をして、国を混乱させている”って。

  その中の七人が――あなたたちに似てるって」


 「……“七人”」

 ナオが静かに繰り返す。

 「私たちの人数と、ぴったり一致ね」


 「その通達を出したのは、誰?」

 リディアが問うと、エリナは少し唇を噛んだ。

 「グラス王国保安局の、セリーナ司令官。

  “勇者の名をかたる偽者”って……。

  セリーナ様は、昔から勇者様を敬っていた人なのに……

  どうして、あんなこと言うのか……みんな混乱してるの」


 クロエがぽかんとした顔になる。

 「なにそれ……わたし達が知っている悪魔のセリーナと同一人物なのかな?」


 ヒカルは考えながら言った。

 「……その保安局のセリーナに会ってみるしかないな。」


 バレンが目を細めた。

 「だな。」


 森に一瞬、沈黙が落ちた。

 木々の葉が風に揺れ、淡い光が漏れる。

 クロエはエリナの小さな手をそっと握った。


 「ねぇ、エリナちゃん。私たち、本当に悪魔じゃないよ。

  むしろ、悪いことしてる“本物の悪魔”を探してるの」


 「……本当?」


 「うん。本当。ヒカルがね、昔からそういうの、ぜったい放っておけないタイプなの」

 クロエが無邪気に言うと、ヒカルは苦笑した。


 「俺、そんな立派なもんじゃないけど……」

 「そういうとこ、立派なのよ」

 ナオが小さく笑った。


 エリナは少しだけ笑みを見せた。

 「……なんか、悪魔っぽくないね」


 「だろ?」

 ヒカルがにっと笑う。

 「こんなに騒がしい悪魔、いないだろ」


 クロエが「ひどーい!」と叫び、

 リディアが「否定はできないけど」と肩をすくめた。


 その笑いに、エリナの警戒心はようやく溶けきったようだった。


 日が暮れ、彼らは森の泉のほとりで火を焚いた。

 エリナは、草で編んだ小さなカゴを差し出した。

 中には、月草の実――夜光を帯びた果実がいくつも入っていた。


 「これ、森の旅人にしか渡さないの。でも……あなたたちに、あげる」


 「ありがとう。……助かるわ」

 ナオが微笑んで受け取る。


 その光が、七人の顔をやわらかく照らした。


 エリナは少し迷った後、声を落とした。

 「……気をつけてね。王国の中では、“魔族”の噂が流れてる。

  でも、それは悪魔じゃない……“人間の中の誰か”だって」


 風が、焚き火を揺らす。

 ヒカルは、その火の向こうに見えない影を感じた。


 「……ありがとう、エリナ。助かった」


 その後、クロエとリディア、チャイと仲良くなったエリナは

 しばらく会話をして、最後は、にこっと笑い、森の奥へと戻っていった。


 彼女の小さな背中を見送りながら、クロエがぽつりと呟いた。


 「エリナを守りたいね、悪魔たちから。」


 その言葉に、誰もすぐには答えなかった。

 ただ、夜の風がやさしく、火の粉をさらっていった。

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