第14話 敵ギルドとの遭遇
赤熱する洞窟の中、ヒカルたちは新たな一団と対峙した。
十名近い冒険者。統制の取れた立ち振る舞いと装備の質から、相当な実力を持つギルドだとすぐに分かる。
「おい、あんたら」
先頭に立つ男が口を開いた。二十代半ば、鋭い眼差しと黒髪を後ろで束ねた剣士。
「ここは俺たち《紅蓮の牙》の狩り場だ。火力玉を狙ってんなら――悪いが引き返してもらうぜ」
「……《紅蓮の牙》?」
レナが小声で呟く。
「聞いたことある。シャトーでも有名な実力派ギルドよ。手段を選ばないことで悪名高い……」
「なるほどな」
ヒカルは一歩前に出た。
「だが俺たちも火力玉を必要としてる。譲る気はない」
「ほう……言うじゃねぇか」
紅蓮の牙のリーダーはにやりと笑った。
「人数差を見ても勝てると思うのか? それとも――命知らずか?」
「人数がどうしたっていうの?」
ナオが剣を構え、堂々と答える。
「私たちは仲間と一緒なら負けないわ!」
「ははっ、剣士のお嬢ちゃんが威勢だけはいいな」
敵の一人がせせら笑う。
「ちょっと! ナオを馬鹿にしないでくれる?」
レナが詰め寄る。
「彼女は誰よりも仲間を信じてるの。
だから威勢じゃないわ。」
「レナ……」
ナオは一瞬驚き、それから微笑んだ。
「ありがと。私、負けないから」
「ふむ、状況は厳しいですが――」
ユウキが落ち着いた声で続ける。
「僕たちには役割があります。各々が果たせば、十分に勝算はあります」
「おお、ユウキが言うなら安心だな!」
ソウタが豪快に笑った。
「よーし、俺の応援で全員まとめて強化してやる! 勝負は数じゃねえ、気合いだ!」
「……数を無力化するのは私の仕事よ」
ミナが構える。
「相手が何人いようと、縛れない数じゃないわ」
その言葉に、敵ギルドの面々がわずかに表情を曇らせた。
「行くぞ!」
リーダーの号令と同時に、紅蓮の牙が一斉に突撃してきた。
「応援だああッ!」
ソウタの雄叫びが洞窟に響き、仲間たちの体に力が満ちる。
「くっ、数が多い……!」
ナオが正面から剣を受け止める。
「でも、私が守る!」
「ナオさん、こちらを!」
ユウキが即座に強化魔法を施す。
「反射神経を向上させました。今なら速さで勝てます!」
「ありがとう、ユウキ! 見てなさい、私の剣を!」
彼女は敵の剣を弾き、鮮やかな反撃を繰り出した。
「縛り上げる!」
ミナの鞭が走り、二人の敵を一瞬で絡め取る。
「……動けないでしょ」
「な、なんだこの鎖!? くそっ、抜けられねえ!」
「ぐっ……ミナの奴、やっぱり怖ぇ!」
ソウタが冷や汗をかきつつも笑った。
「でも頼もしすぎるぜ!」
レナの声が飛ぶ。
「ナオ、前に出すぎよ!」
「分かってる! でも私が止めなきゃ!」
ナオは必死に剣を振るい、敵の猛攻を受け止め続ける。
「……ちっ、女だからって甘く見てたらやべえな」
敵の戦士が舌打ちする。
その混戦の中で、ヒカルと紅蓮の牙のリーダーが激しく刃を交えていた。
「やるな……! ただの新参じゃねえようだな」
「そっちこそ……伊達にリーダーやってないな」
金属が火花を散らし、二人は互いに一歩も譲らない。
その瞬間、ヒカルの脳裏に前世の記憶がよぎった。
(……炎晶洞。前世でも、ここはギルド間で競合する狩場の一つだった。モンスターも高難度であり、そしてプレイヤー同士の衝突の舞台……)
高報酬と同時に、高リスク。
時に仲間との絆が試され、時に他のプレイヤーとの争奪戦となる場所。
(今も同じだな……だけど、今回は前より心の通じ合えた仲間がいる)
ヒカルの目に力が宿る。
「そろそろ決めるぞ!」
ヒカルが渾身の斬撃を繰り出した。
「ちっ……!」
リーダーは受け止めきれず、後方に大きく跳ぶ。
その隙を突いて、ミナの鎖がリーダーの腕を絡め取った。
「……逃さない」
「ぐっ……!?」
「ナイス、ミナ!」
ナオが叫び、間髪入れず斬り込む。
「はああっ!」
リーダーは剣を弾き飛ばされ、膝をついた。
「……くそ……覚えてろ……!」
紅蓮の牙の一団はリーダーに合図され、次々と後退していく。
やがて炎晶洞の奥にその姿が消えると、洞窟に静寂が戻った。
「ふぅ……勝った、のよね?」
レナがへたり込み、額の汗を拭う。
「ええ。追撃する必要はないでしょう」
ユウキが冷静に周囲を確認する。
「こちらの消耗も大きい。今は休息を優先すべきです」
「だな……」
ソウタが大きく伸びをする。
「それにしても、やっぱ俺たち強くなってるよな!」
ナオが微笑んで剣を収めた。
「……ふふ、縛った甲斐があったわ」
ミナは涼しい顔のまま鞭を腰に収める。
「お、お前……今さらだけど、本気で怖えよ……」
ソウタが引きつった笑みを浮かべ、皆が笑い声を上げた。
ヒカルはふと炎晶洞の奥を見つめる。
まだ火力玉は見つかっていない。だが仲間たちと力を合わせれば、必ず辿り着けるはずだ。
(前世ではソロで挑み、敗れた場所……。でも今は違う。俺には仲間がいる。だから、必ず越えられる)
そう心に誓い、ヒカルは一歩、灼熱の奥へと踏み出した。
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