第132話 王の葛藤
翌朝――。
一行は再び、デザート王国の王宮を訪れていた。
玉座の間に通されると、王は昨夜とは違い、険しい表情で待っていた。
「諸君、報告があると聞いた。セリーナの件か?」
ヒカルが一歩前へ進み、はっきりと告げる。
「はい。セリーナが悪魔と通じていた、いや、悪魔そのものだった可能性があります」
玉座の周りにいた大臣たちがざわつく。
「ば、馬鹿な! セリーナ殿は十年以上も王宮に仕えてきたのだぞ!」
「王家の護衛にまで任じられたほどの忠臣だ!」
だが、シドが杖を突き、低い声で言う。
「悪魔の潜入は珍しいことではない。奴らは長い年月をかけ、人間界に紛れ込む。王宮に深く入り込むのも、むしろ自然な流れじゃろう」
ナオが地図を広げ、昨日の調査結果を補足する。
「行方不明者の一部は、王宮に近い地区から出ています。偶然ではないはずです」
王は玉座に深く腰掛け、苦渋の表情を浮かべた。
「……実は、セリーナの素性については、かねてより一部で疑念があった」
「!」一同が息を呑む。
王は続けた。
「彼女は十数年前、突然この国に現れた。砂漠で行き倒れていたところを保護し、忠誠を誓った。知恵と才覚に優れ、国のために尽くしてきたことから、私は重用してきたのだ」
ヒカルが低く問いかける。
「……では、疑いを抱きながらも、王は彼女を重用し続けたのですか?」
王は苦い顔で頷いた。
「この国は砂漠に囲まれ、隣国との争いも絶えぬ。彼女の力と助言がなければ、我らはここまで持ちこたえられなかった。……だが、もし彼女が悪魔であったなら……私は大きな過ちを犯したことになる」
「王よ」バレンが一歩前に進む。
「セリーナはどの部署に出入りしていた?」
王の側近が答える。
「……彼女は王宮の地下へとしばしば赴いておりました。そこには古代の遺跡が眠っており、我らの代々の記録にも『魔の門』と呼ばれるものが存在すると……」
「魔の門、か」シドの目が光る。
「悪魔が自由に往来できる通路を開こうとしていた可能性が高いの」
ナオが眉をひそめる。
「つまり、この国そのものが、悪魔の侵略拠点にされようとしているってこと?」
王は苦渋の面持ちでうなずいた。
「……その通りだろう。私は知らず知らずのうちに、敵を国内に招き入れてしまったのだ」
ヒカルが鋭い眼差しで仲間を見回す。
「となれば、俺たちのやることは決まってるな。地下の遺跡を調べ、悪魔の計画を止める」
「危険は大きいじゃろうが……」シドが頷く。
「ここを放置すれば、この国どころか大陸全土が侵略の足掛かりにされる」
クロエはぎゅっと両手を握りしめ、まだ微かに残る黄金の光を見下ろした。
「……わたしも、守る。みんなを」
その姿に、仲間たちの心も固まる。
一行は、王宮地下――セリーナが出入りしていた「魔の門」の調査へと動き出そうとしていた。
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