第128話 デザート国王との謁見
市場での賑わいを後にし、一行は案内人セリーナに導かれて王宮へと足を運んだ。
地下都市の中央にそびえる王宮は、砂岩と白い石で造られ、天井には光る鉱石が散りばめられて夜空のように輝いていた。
「わあ……きらきらしてる……!」クロエは見上げて感嘆の声を漏らす。
「地下とは思えんのう。人の工夫、あなどれんわ」シドがうなずく。
やがて大広間へ通されると、そこには金色の衣をまとった初老の王が玉座に腰掛けていた。
その周囲には武装した近衛兵たちが控え、張り詰めた空気が漂っていた。
「よくぞ参られた。遠き旅路、ご苦労であった」
デザート王は落ち着いた声で語りかけてくる。
ヒカルが一歩前へ出て頭を下げる。
「ヒカルと申します。我らは各地を巡り、悪魔の動きを探っております」
王は鋭い目を細め、じっと一行を見渡した。
「……悪魔、か。おぬしらも噂を耳にしたのだな」
「やはり、ここでも何か起きているのですか?」ナオが問いかける。
王は深くうなずき、声を低めた。
「近ごろ、行方不明者が急増しておるのだ。表向きは盗賊の仕業とされておるが、真実は違う」
その言葉に、シドが目を細める。
「……やはりのう。悪魔の影が動いておるな」
王は続けた。
「民の中には、黒衣の集団を見たと申す者もいる。闇夜に紛れ、人を攫っては消えるのだ。地下に潜む我らにとって、これは脅威だ」
「黒衣……」リディアが低くつぶやき、表情を険しくする。
「怪しいわね。何かの儀式にでも使っているのかしら」
「王よ、もしよければ、その件……我々に調査を任せていただけませんか?」ヒカルが申し出る。
しばしの沈黙のあと、王は静かに頷いた。
「よかろう。勇気ある者たちよ、どうか民を救ってほしい。ただし――気をつけよ。この砂漠の地下には、何かが巣食っておる」
広間に重苦しい沈黙が落ちる。
クロエは不安げにチャイの手をぎゅっと握った。
チャイはにかっと笑って、「大丈夫、守るから!」と小声で囁く。
――こうして、一行はデザート王国に渦巻く“悪魔の影”へと迫ることになった。
王との謁見を終えた一行は、案内役セリーナに導かれて、王宮近くの客人用宿舎へと向かった。
宿舎は砂岩造りの立派な建物で、中は涼しく快適だ。吹き抜けの広いリビングには、大きな円卓が据えられており、そこに皆で腰を下ろした。
「さて……」ヒカルが真剣な表情で口を開いた。
「行方不明者が増えている件、やっぱり悪魔絡みで間違いないと思う。俺たちが動くなら、まずは情報集めだな」
「それは賛成ね」ナオが頷きながら、机に地図を広げる。
「王様の話だと、黒衣の集団を見た人がいるって言ってた。聞き込みするなら市場とか酒場がよさそうよ」
クロエが勢いよく手を挙げる。
「わたしもお手伝いしたい! 聞き込みとか、できると思う!」
すかさずナオがクロエの肩を抱く。
「クロエちゃんは基本的に隠れててね。危ないことは大人に任せなさい」
「うぅ……わかった……」クロエは唇を尖らせながらも、チャイに視線を向けた。
チャイはにこっと笑って胸を叩く。
「クロエは私が守るから大丈夫!」
すると、リディアが机をバンッと叩いた。
「ちょっと!なんでこの子に任せるのよ!私も大人として調査するわ…バレン様と!」
「いやいや、リディアちゃんはまだ子どもでしょ……」ナオが冷静にツッコミを入れる。
「こどもじゃないっ!れっきとしたバレンの弟子、将来の奥さん候補よ!」リディアは顔を赤くしながら言い切った。
「……奥さん候補は否定しておこう」バレンが淡々と返す。
その冷静な一言に場が一瞬凍りつき、次の瞬間、みんなが笑い出した。リディアだけは真っ赤になって机に突っ伏してしまったが。
「ふむ、じゃが情報集めに分担は必要じゃな」シドが長い白髭を撫でながら言う。
「ヒカル、ナオは街の調査を。わしとバレンは魔法的な痕跡を探ろう。リディアとクロエは……チャイと留守番じゃ」
「えぇぇーーっ!」リディアとクロエが同時に声をあげた。
「わしらが外で動く間、宿を守るのも大事な役割じゃよ」シドはにやりと笑う。
「……わかったわよ。じゃあクロエ、二人でお菓子食べながら見張りしましょう」
「えへへ、それなら楽しそう!」クロエは嬉しそうに笑った。
こうしてそれぞれの役割が決まり、一行は翌朝から動くことを決意したのだった。
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